第49話 夜5 貧乏少女の貧乏力
支柱から踵を離して落下し、眼鏡を掛けたメイド服を着た女――メルは、音もなく静かに床に着地した。
眼鏡を掛けたメイド服のメルは立ち上がり姿勢を正し、丈の長い茶色いスカートを履いたショートソードを構える少女――リア・グレイシアと向き合う。
眼鏡を掛けたメイド服のメルは、再び両手に持った短剣を構える。
そして足を踏み込み、一瞬にして丈の長い茶色いスカートを履いたリアと間合いをつめ、短剣でリアに切りかかった。
丈の長い茶色いスカートを履いたリアは、ショートソードを横に振り、眼鏡を掛けたメイド服のメルの短剣を弾いた。
眼鏡を掛けたメイド服のメルは攻撃を止めず、クリーム色の薄手の上着を着たリアの顔面目掛けて、左手に持った黒い短剣を突き出した。
黒く刀身の見えにくいその突きを、クリーム色の薄い上着を着たリアは瞬きもせず目を離さずに捉え続け、体捌きで顔を傾けて躱す。
クリーム色の上着を着たリアの顔を掠め躱した黒い短剣の刀身が、リアの髪を僅かに切り裂いた。
眼鏡を掛けたメイド服のメルが、右手の白い短剣を逆手に持ち替え、丈の長い茶色いスカートを履いたリアの首にむかって斬り返した。
丈の長い茶色いスカートを履いたリアは、軽くステップを踏み、僅かに後方に飛んで眼鏡を掛けたメイド服のメルの、右手に逆手で握った白い短剣を躱す。
クリーム色の薄手の上着を着たリアが、隙を見て眼鏡を掛けたメイド服のメルの足元から胸を狙い、ショートソードを下から上に斬り上げた。
とっさに眼鏡を掛けたメイド服のメルが、両手の短剣を交差させて、リアの斬り上げた剣を防ぐ。
眼鏡を掛けたメイド服のメルは、ガードごと弾かれて上半身が反り返った。
その反動を利用し、眼鏡を掛けたメイド服のメルは、背後の床に手を突いてバク転し、丈の長い茶色いスカートを履いたリアと距離をとって離れる。
丈の長い茶色いスカートを履いてクリーム色の薄手の上着を着たリアから距離を離し、眼鏡を掛けたメイド服のメルが、白い刀身と黒い刀身の短剣を構え、リアに向かって口を開く。
「流石の馬鹿力ね。まだ受けた手が痺れてるわ……」
「さっきから馬鹿は余計じゃない?」
きりっと、顔を決めてクリーム色の薄手の上着を着たリアが、続けて言った。
「これは馬鹿力ではなく、
「……」
眼鏡を掛けたメイド服のメルが目を瞑り、集中力がそがれないように一息吐いた。
丈の長い茶色いスカートを履いたリアが、続ける。
「日々の貧乏生活を耐え抜き磨き上げた強靭な心、そして空腹を紛らわす為に身体を鍛え続けてきた修練の賜物……」
「……」
眼鏡を掛けたメイド服のメルは目を瞑り、惑わされないように呼吸を整える。
丈の長い茶色いスカートを履いたリアが、力強く言った。
「この力こそ貧乏力よ」
眼鏡を掛けたメイド服のメルが、再び短剣を構えなおし、拳を握りドヤ顔するリアと対峙する。
眼鏡を掛けたメイド服のメルが口を開いた。
「馬鹿の発想力に恐怖を感じたわ」
訝しげな眼差しをメルに向け、丈の長い茶色いスカートを履いたリアが、剣を強く握り、構えてぼそっと言った。
「陰キャクソ眼鏡……」
「聞こえてるわ貧乏少女……」
眼鏡を掛けたメイド服のメルが、不意に右手の親指を弾いた。
顔に風を感じたリアが、剣の刀身を顔の前に置くと、キーンと金属音が響き、剣が飛んできた何かを弾いた衝撃で、大きく上に弾かれた。
眼鏡を掛けたメイド服のメルが、親指を弾く構えをして、言った。
「勘もいいよね。じゃあこれは躱せるかしら?」
と、眼鏡を掛けたメイド服のメルは動き出した。
「
眼鏡を掛けたメイド服のメルの姿が消え、空気を引き裂くような音を立てて飛ぶ金属の弾が、クリーム色の薄手の上着を着たリアに向かって、躱し切れないほどの無数の数となって襲い掛かる。
バチンと、リアのこめかみに金属の弾が当たり、衝撃でクリーム色の薄手の上着を着たリアが、こめかみを押さえてよろめいた。
丈の長い茶色いスカートを履いたリアのこめかみから、血が一筋滴り流れる。
宙を無数に飛び交う金属の弾が、クリーム色の薄手の上着を羽織り丈の長い茶色いスカートを履いたリアの、肩、頭、胸、腹、足、に激しくぶち当たり、リアは小さな悲鳴を上げながら、衝撃で身体を振り子のように揺さぶられ続ける。
何とか顔だけを守るリアは、剣を盾にして正面だけ防ぐが、このまま攻撃を受け続ければ身体がミンチにされてしまう、と危機を感じ、次の手に出る。
クリーム色の薄手の上着を羽織り丈の長い茶色いスカートを履いたリアは、僅かに呼吸を整え集中した後、腕を顔の前で交差し、腹に力を込め、体中の筋肉に力を入れて声を上げた。
「
僅かに薄手の上着を着たリアの身体が膨れ上がり、中に着た白いシャツと茶色いスカートの腰周りがギチギチと音を立てた。
陰に潜み姿の見えない眼鏡を掛けたメイド服のメルの声が響く。
「いくら頑丈なあなたでも、これを喰らい続ければただのミンチになって確実に死ぬ。今度こそお別れね。短い間だったけどこの一週間、楽しかったわ貧乏少女」
腕を攻させたまま仁王立ちするリアに向かって四方から飛び出してくる金属の弾が、リアの身体に命中し続ける。
しかし、リアの身体に命中する弾の衝撃が、なぜが吸収されたかのようにそのまま床へとポロポロ落ちていく。
腕を交差して顔を庇い続けたまま仁王立ちするリアに、金属の弾の雨が四方から襲い掛かるが、まるでリアの身体には効いていないかのように、ゴム板にぶつかるような鈍い音を立てた後、床の上へと落ちて転がっていく。
金属の弾が四方から雨のように、腕を交差して仁王立ちするリアに向かって撃ち込まれ続ける。
百個は軽く超えて金属の弾が仁王立ちするリアに撃ち込まれた後、ピタリとその金属の弾の雨の攻撃が止んだ。
攻撃が止み、クリーム色の薄手の上着を羽織り丈の長い茶色いスカートを履いたリアが、顔の前で交差した腕をゆっくりと下げ、目を瞑り深く長い息を吐き続ける。
上着、シャツ、スカートは所々穴が空き、はじけてボロボロになっているが、リアは倒れるどころか、なんともない顔をして立っていた。
そんな倒れる気配のない服がボロボロになったリアの前に、眼鏡を掛けたメイド服のメルが、何処からともなく姿を現し、驚愕した。
「石ですら簡単に貫通するわたしの指弾を百発以上も、あれだけ喰らい続けてなお原型を保ったまま立っていられるなんて、信じられない……」
呼吸を整え元に戻したボロボロになった服を着たリアが、口をつぐみ、再び剣を構えて、眼鏡を掛けたメイド服のメルと対峙した。
眼鏡を掛けたメイド服のメルは、困惑した後、軽く首を振り、両手の短剣を構えて、ボロボロに鳴った薄手の上着を羽織りボロボロに鳴った丈の長いスカートを履いたリアと向き合った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます