第48話 夜4 神域スキル

 チャペルの大きなステンドグラスを背景に、二人の男が同じ武器を構えて対峙する。

 僅かに腰を屈み、両手に構える細身の短剣を逆手に持って構える片眼鏡をかけてタキシードを着た老紳士――ガルマンダが、口を開く。


「奇妙な技と道具を使うが、見たところ貴様も忍の者のようだな……」


 細身の短剣を右手で逆手に持ち、片眼鏡をかけた隻眼のガルマンダと対峙して構える、赤いマントを背負いクリーム色のタキシードを着てクリーム色のシルクハットとジョーカースマイルマスクを被った謎の男――怪盗オクターが、応える。


「スタイリッシュアサシンと呼んでくれたまえ御老人」


 片眼鏡をかけた隻眼のタキシードを着たガルマンダが、素早く腕を振り上げた。

 キラリと光る物が一直線に、シルクハットを被りクリーム色のタキシードを着た怪盗オクターに向かって飛び出す。

 ジョーカースマイルマスクを被る怪盗オクターは、飛んできたキラリと光るものを見えない側で振った短剣で弾く。

 キーン、と金属音が張り響き、上空に弾かれた細い棒状の手裏剣が床に転がって落ちた。


 片眼鏡をかけたタキシードのガルマンダが、右手の中指と人差し指を立てて印をつくり、言葉を発する。


「スキル 剣奏爛漫けんそうらんまん


 片眼鏡をかけた白髪のガルマンダが、結んだ印の前に黒い魔方陣が現れてクルクルと回転した。

 そしてタキシードを着たガルマンダの周りに、小さな黒い魔方陣が続々と発現し、魔方陣の中から渦を巻きながら、菱形の刀身をしたクナイが宙に浮いて現れた。

 片眼鏡をかけた隻眼のタキシードを着たガルマンダの周りを、黒い魔方陣から出現したクナイの群れが、宙を浮きふわふわと漂っている。


 今度はシルクハットを被りクリーム色のタキシードを着た怪盗オクターが、中指と人差し指を立てて印をつくり、言葉を発する。


「ウィンドエンチャント」


 しつくハットを被りジョーカースマイルマスクを着けた怪盗オクターの、顔の前で結んだ印の前に、緑色の魔方陣が浮かび上がる。

 続けてクリーム色のタキシードを着た怪盗オクターが、言葉を発した。


「サモン・サイスウィーザル」


 すると、シルクハットを被りクリーム色のタキシードを着た怪盗オクターの前に、三つの緑色の魔法人が現れ、それがクルクルと回転し、緑色の魔方陣の中から鋭い鎌を口に咥えた愛らしい白いイタチが三匹現れ、宙を浮遊しながら漂った。

 宙を浮く愛らしい三匹の白いイタチは、口に咥えた鎌の刀身をチラつかせつつ、つぶらな瞳で、片眼鏡をかけたタキシードのガルマンダに睨みをきかせる。


「頼むぞお前たち」


 シルクハットを被りクリーム色のタキシードを着た怪盗オクターがそう言うと、キューイィー、と可愛らしい声で、宙を漂いながら白いイタチたちが鳴いて応えた。


 片眼鏡をかけた隻眼のタキシードを着たガルマンダが、無数のクナイを宙に漂わせる短剣を構え、口を開く。


「それが神域スキルの忍術か。変わっておるな」


「スタイリッシュアサシンマジックと呼んでくれたまえ御老人」


 武器を構えて膠着する二人は、じりじりと間合いを詰める。

 片眼鏡を掛けた隻眼のタキシードを着たガルマンダが、怪盗オクターよりも先に動いた。

 タキシードを着たガルマンダの周囲を漂う宙に浮いた無数のクナイが、対峙する怪盗オークターに向かって飛び出した。

 片眼鏡をかけてタキシードを着た白髪のガルマンダが、それに合わせてクナイを盾に走り出す。


 シルクハットを被りクリーム色のタキシードを着た怪盗オクターの前を、ふわふわと気持ち良さそうに漂っていた三匹の鎌を咥えた白いイタチが、急に目にも止まらぬ速さで宙を動き回る。

 カキンカキンと、片眼鏡をかけた隻眼のガルマンダが放った無数のクナイを、鎌を咥えた白いイタチたちは目のも止まらぬ速さで動き回り、弾き落としていった。

 片眼鏡をかけたタキシードのガルマンダが放った無数のクナイが、一瞬にして全て鎌を加えたイタチたちによって床に叩き落された。


瞬進しゅんしん!」


 と、タキシードを着た白髪のガルマンダの姿が言葉と共に消えた。

 そしてすぐさま、タキシードを着たガルマンダが、シルクハットを被った怪盗オクターの頭上に現れた。

 空中にいるガルマンダが逆さの体勢で突き出した短剣を、シルクハットを被りジョーカースマイルマスクを着けた怪盗オクターが、右手に握った短剣で防いだ。


 逆さの体勢で空中にいる片眼鏡をかけた隻眼のタキシードを着たガルマンダに、鎌を咥えた三匹のイタチたちが飛び、斬りかかる。

 タキシードを着たガルマンダが空中で身を翻し、左手に持った短剣で三匹の白いイタチの目にも止まらぬ太刀筋を捌ききる。

 空中を蹴って更に飛び、片眼鏡をかけたタキシードのガルマンダが、シルクハットを被りジョーカースマイルマスクをつけた怪盗オクターから、距離をとって床に着地した。


「やはり簡単にはいかぬか……」


 そう呟き、片眼鏡で隻眼の白髪のガルマンダが、再び印を作り言葉を発し、自分の周囲にクナイを呼び出した。

 チャペルの大きなステンドグラスを背景に、再び二人は武器を構え、距離をとって対峙した。

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