第38話 昼5 地下を走る者たち
地下水路の天井から振動が響き、暗い地下の空気を振るわせる。
前に進むため障害となる動き回る骸骨や吸血蝙蝠などの地下水路のモンスターを、足を止めず走りながら瞬殺し続ける片眼鏡をかけた隻眼で白髪の老人――ガルマンダが、騒がしくなった地上の騒動を感じ取る。
「始まったようだな……」
後続を走る眼鏡を掛けた女――メルと、セミロングの口元にほくろのある女――エルが、互いが肩に抱える人質が落ちないように抑えつつ、天井を少し見上げた。
青い貴族服を着た青年――ジャックス・レイモンドを肩に担ぎ持つ、走る足を止めずにエルが口を開く。
「あんな木偶が時間稼ぎになるかねぇ……」
丈の長い茶色いスカートを履いた少女――リア・グレイシアを肩に担ぐ眼鏡を掛けたメルが、後ろを走るエルに言う。
「心配要らないわ。あの伝説の暗殺者、
自分の昔の名を聞き、ガルマンダが少し苛立つ。
「気が散る、いらぬ口は閉じていろ二人とも……」
「はいはいお爺ちゃん……」
最後尾を走るエルが、先頭を走りながら障害物となるモンスターを狩り続けるガルマンダに叱られて、めんどくさそうにそう返事をする。
黙ることが苦手なエルを見かねて、ため息を一つ吐き、ガルマンダが口を開く。
「一般市民に危害を加える必要はない。暴れて我々が逃げ切る時間さえ稼いでくれればよいのだ。ただ、障害となる者には牙を剥く……。年老いて十分ではないにしても、混乱させて足止めぐらいのことにはまだなるだろう……」
ガルマンダが前方で
そしてその群れをガルマンダが通過すると、スケルトンの群れは身体がバラバラになり地面に崩れ落ちる。
スケルトンの残骸の上を、リアを担いだメルと、ジャックスを担いだエルが躊躇なく走り抜ける。
走り続ける片眼鏡を掛けた隻眼のガルマンダが、前方を見続けてたまま口を開く。
「ソーモンの潜伏員たちと一緒に、地下水路の管理をしているあの二人も木偶にしたのは失敗だったな。お陰で湧いてくるモンスターが邪魔だ」
「ですがあの地下水路を管理する建物に住んでいるとなると、わたしが考案した『なんでもアクセサリー』計画の邪魔になるので……」
「まぁ、仕方なかったか……。気にせず進むぞ」
ガルマンダは速度を上げて二人から先行しつつ、モンスターを瞬殺し、狩り続け地下水路を駆け抜ける。
後続するメルとエルは担いだジャックスとリアを落とさないように気をかけながら、とてつもない速さと体力と強さを持った老人の背中に、必死になって着いていく。
地下水路の出口、街の壁外を流れる川に流れ着く出口に向かい、三人はモンスターが闊歩し、暗く迷宮のように入り組んだ地下水路を走り続けた。
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