第33話 狂った感情

柚杏が部屋を出て、颯杜さんを呼んでくれたのか直ぐに来てくれた。


「萌果!」


「颯杜さんっ」


「椿、今すぐそこを退け」


「桐生…萌果を離せ」


「無理だね。俺の物にするんだ。退かないなら萌果がどうなるか…わかるだろ?」


桐生さんは私の頭に銃を突きつけながら颯杜さんを脅している


「さぁどうする?」


「くっ…」


颯杜さんの顔を見ると、行かせたくない気持ちと私に危害が及ぶのが嫌なのとで、難しい顔をしていた。


「颯杜さんっ…」


「…わかった。お前ら、道を開けろ」


「颯杜さん!!」


「いいんですか!?このまま萌果ちゃんを渡しても!?」


「今は萌果の安全が第一だ。それに俺に考えがある」


「分かりました。」


綾人さんと瞬さんは颯杜さんにそう言われ、他の人達にも道を開けるよう指示をした。


「よく出来ました。最初からそうしてりゃいいんだよ。」


「萌果には絶対に手を出すな」


「こいつはもう僕の物だ。お前に指図される筋合いは無いね」


桐生さんはまた、私の嫌いな笑みを浮かべながら颯杜さんにそう言って自分が乗ってきた車へと向かった。


「さっさと乗れ」


「…」


私は桐生さんの車に押し込められ、不安に押しつぶされそうになった。


「あ、そうだ。着いてきたら…わかるよな?」


「わかってるさ」


そう言う会話をして、私は桐生さんが使っているという部屋へと連れ込まれた。


「何?ここ…?」


「僕と君の新居さ。ここでこれから一緒に暮らすんだよ!」


「…」


「そうそう。萌果にプレゼントがあるんだ」


そう言って、私を隣の部屋に連れていくとそこには衝撃の光景があった。


「これって…」


「萌果の為に用意したウェディングドレスだよ!」


「私…桐生さんとは結婚できません。」


「…何を言ってるんだい?」


「私は颯杜さんを愛してるんです。だから桐生さんとは結婚もできないし、お付き合いも出来ません」


「お前はもう僕のだ。椿なんて忘れろ。」


「…どうしてそんなに私に拘るんですか?」


「どうして?それは君が椿の婚約者だからだよ!」


「颯杜さんへの嫌がらせってことですか?」


「そうだね、椿が婚約者を紹介するって言った時は嫌がらせして破談にしてやろうと思ったんだけど、君を見た瞬間に"俺の物にしたい"と思ったんだよ」


「どういうことですか?」


「椿の婚約者である君に一目惚れしたんだ。こんな気持ちは初めてだったよ。いつもなら、あいつを苦しめたい思いでいっぱいだったのに。君だけは欲しくなったんだ」


桐生さんはそう言うと私の顎を掴んでキスをしてこようとしたけど、振り払って頬を叩いた。


「いっ…たいなぁ。」


「私は颯杜さんとしかしたくないんで。」


私がそう言うと桐生さんは悔しそうに睨んできて、私を掴もうとした瞬間。玄関の方が騒がしくなった。


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