第28話 手紙
翌日、私は柚杏と下校していた。
「昨日、颯杜さん大丈夫だった?」
「うん。でも、やっぱり事故なんて嘘だったの」
「あー…やっぱり?」
「柚杏知ってたの?」
「あの姿を見たらね。で、綾人さんに聞いたの」
「そっか…正直ね。あの姿で帰ってきたからすごく怖かったんだ…」
「怖かった?」
「うん…颯杜さんがパパ達みたいに居なくなっちゃうんじゃないかって…」
「そっか…でも、そういうのって颯杜さんたちみたいな人からしたら、隣り合わせの事なのかな?」
「わかんない…でも、昨日の怪我は私が原因みたいで…」
「どういうこと?」
私は昨日、颯杜さんから聞いたことを柚杏に話した。
柚杏は真剣に話を聞いてくれて、颯杜さんと同じように"それは萌果のせいじゃない。"と言ってくれたけど、なかなか私の心は晴れなかった
「萌果の"自分のせいで大切な人が怪我をした"って気持ちもわかるけど、颯杜さんは絶対萌果を置いて居なくなったりしないよ。」
「うん…」
そう柚杏はフォローしてくれた。
「あ、そうだ。萌果に相談があるんだけど」
「何?」
「実は昨日、綾人さんに颯杜さんの事聞いた時に、萌果にも私にも被害のないようにするって言ってくれて、その時の綾人さんの表情にドキドキしちゃって…」
「恋したって事??」
「まだわかんないけど…気になってるって感じかな」
「いいと思うよ!まぁ、綾人さんのことは私もまだわからないけど」
そんな話をしていると車が横付けされ、窓が開いた
「こんにちは。萌果さん」
「…桐生さん。何か御用ですか?」
「昨日、椿のやつ怪我して帰ってきたでしょ?」
「何をしたんですか?」
「ちょっと可愛がらせてもらったんだよ」
「桐生さん颯杜さんに頭が上がらないんじゃないんですか?」
「確かにあの時はそうだったけど、今の狛龍組には怖いものは無いんだよ。」
そう言う桐生さんは私の嫌いな笑みを浮かべていた
「そうだ、これ椿に渡しておいいてよ」
「何ですか、これ?」
「君には関係の無いものだよ。ちゃんと渡しておいてね?」
そう言って桐生さんは颯杜さん宛の手紙を私に預けるとさっさと行ってしまった。
「何だったんだろう?」
「とりあえず、その手紙、颯杜さんに渡さないとね」
「うん…」
そう言って私たちはそれぞれの帰路に着いた。
―牡丹組―
「ただいまー」
「萌果ちゃんお帰り!」
「瞬さん!ただいま!颯杜さんは部屋かな?」
「みんなと居間にいるよ!」
「ありがとう!」
瞬さんから居場所を聞いて居間に向かった
「颯杜さん、ただいま!」
「お帰り、萌果」
「あのね、実はこれ…」
「ん?何これ…手紙?」
「うん。桐生さんから」
「は?なんであいつからの手紙を萌果が持ってるんだ!?」
「さっき私たちのとこに車を横付けにしてきて、これを渡して欲しいって…」
「萌果、あいつに何もされてないか?大丈夫だったか!?」
「うん、私は大丈夫だよ。だから落ち着いて?」
「あぁ…よかった…」
颯杜さんは手紙よりも私に何も無かったか、無事だったのか、そこばかりを気にしていたから安心させるために"大丈夫"ということを伝えた。
「そうか…」
「それより、手紙読んでみた方が…」
「あぁ、そうだな」
そう言って手紙を読んでいる颯杜さんの顔が怖くなっていくのがわかった。
「…あいつ、ふざけやがって」
「颯杜さん…?」
「萌果、しばらく学校休んでくれないか?」
「え?どうして?」
「ちょっとした抗争が起きるかもしれん。」
「え…」
「だから、柚杏ちゃんもここに連れてきて欲しいんだ」
「そんなに大変なことになるの…?」
「もしものことがあるかもしれない。2人を守るためにもここにいて欲しいんだ。」
「わかった…」
颯杜さんの真剣な顔に"わかった"というしか無かった。
そのあと柚杏に連絡して明日、家に来てもらうことにした。
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