第27話 怪我の理由
みんなでご飯を食べたあと、綾人さんが柚杏を家まで送ってくれて、私は颯杜さんの部屋で様子を見ることにした。
「颯杜さん、痛い?大丈夫?」
「まぁ、少し痛いけどこれくらいかすり傷のようなもんだしな」
「本当に…心配したんだから…」
「そうだよな。こんな格好で帰ってきたらビックリするし心配になるよな」
「…ねぇ、本当に事故に合っただけなの?」
「なんでそう思うんだ?」
「なんとなく…」
「…萌果、ここにおいで?」
颯杜さんはベッドにあぐらをかいて自分の太ももをポンポンしている
「え?でも、傷に響いちゃうから…」
「大丈夫、そんなんで傷口開いたりしないから」
"大丈夫だから"と微笑みながら"早く座れ"と言われ観念して颯杜さんと向かい合うように座った
「重くない?」
「全然?どっちかと言うなら軽すぎるくらいだよ」
「そう?…颯杜さんのカッコイイ顔が。」
そう言いながら颯杜さんのほっぺを両手で包み込む。
「萌果の手、暖かくて気持ちいいな」
「冷たくない?」
「すごく暖かい」
「ねぇ颯杜さん」
「ん?」
「さっきの話なんだけどさ、"傷口が開く"ってどういうこと?」
「え?」
「だってそういう言い方ってなんか…」
「本当のこと言わないと納得しないんだろ?」
「もちろん。」
「まぁ…狛龍組とちょっとな」
「桐生さんのとこ?」
「あぁ。お前の事でな」
「私の事って…まだ諦めてくれてないってことなの?」
「みたいだな。」
どうしても颯杜さんの傷について腑に落ちなくて聞くと、私の事で狛龍組と喧嘩?したみたいだった。
私のせいで怪我したのだと思うとすごく申し訳なくて、颯杜さんの顔を見ることが出来なくなってしまった。
「萌果。お前がそんな顔しなくていいんだ。」
「でも…」
「俺が桐生より先に萌果に惚れたんだ。お前を守って幸せに出来るのは、桐生じゃなく俺だ。だから、自分を責めるな。」
颯杜さんはそう言ってギュッと抱きしめた状態で頭をポンポンしてくれた。
「私、颯杜さんが傷つくの見たくないよ…」
「萌果…」
「どうしたら颯杜さんを守れる…?」
「萌果は俺の傍に居てくれたらいい。」
「颯杜さん…」
「あ、でも。絶対に桐生のところに行こうとか馬鹿な事は考えない事!いいか?」
「…なんでわかったの?」
「俺の為とか言って萌果ならやりそうだったからな。そんな事しても俺の為にはならないからな」
「うん。じゃあ、せめて颯杜さんのお世話したい。」
「それはかなり嬉しいことだから頼むよ」
「うん!でも、正直…」
「ん?なんだ?」
「こんな近くで颯杜さんの体見た事ないから緊張する」
「そう言えばそうだよな。触ってみるか?」
「え!?」
「ほら、触っていいよ」
颯杜さんは私の手を自分の胸に当てた。
「え、あ、あのっ…」
「顔真っ赤になってるけど?」
「そ、そりゃそうでしょっ…男の人の体なんて触ったことないし…」
「じゃあ、これからお世話ついでにいっぱい触っていいぞ?」
颯杜さんはそう言ってニヤッとすると私をからかい始めた。
「もう!怪我人はさっさと寝てください!」
「ははっ。萌果は可愛いから、ついついからかいたくなるんだよ。」
「颯杜さん意地悪だっ」
「まぁ、いつかは見飽きるほど俺の体を見ることになるだろうけどな」
颯杜さんは意味深なことを言うと"コーヒーが飲みたいから入れてくれ"と言われ2人でキッチンに行き、コーヒーを飲んだ。
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