第21話 お互いの気持ち

柚杏が寝たあと、私は颯杜さんの部屋へと向かった。

部屋に着いてドアをノックすると、中にいる颯杜さんから返事が返ってきて中へと入る


「萌果、どうした?」


「少し…颯杜さんと話がしたくて」


「わかった。こっちへおいで」


「うん」


颯杜さんは優しく微笑んで"おいでおいで"としてくれたから、その隣に座った


「今日は疲れただろう?」


「疲れたというか…怖ったです」


「さっきの以外に何かされたのか?」


私は颯杜さんたちが来る前のことを話した


「そうか…怖かったな。でも、よく頑張ったよ。」


そう言って颯杜さんは頭を撫でてくれた


「颯杜さん、あの…」


「なんだ?」


「勝手に桐生さんに着いて行ってしまって本当にごめんなさい。」


「正直…すごく心配した」


「うん…」


「桐生に連れて行かれたって聞いた時は心臓が止まるかと思った。」


「…」


「でも、間に合ってよかったよ。萌果が無事で本当によかった。」


颯杜さんはそう言うと私を抱きしめて頭にスリスリと頬ずりしてきた。


「あ、え?あの…」


「萌果、大好きだ」


「颯杜さん…」


「ちゃんと言えてなかったけど…俺は萌果の事が大好きだ。ずっとそばにいて欲しい」


「いますよ。だって私は…」


「許嫁だからじゃなく、萌果に一目惚れしてたんだ」


「え…」


「萌果と初めて会ったのは、両親が亡くなる2年前のことだった。」


「え…いつ会ってたんですか?」


「会ったと言うよりは"見た"だな」


「見た?」


「あぁ、萌果の両親は俺にとって頭の上がらない人達なんだ」


「どういうこと?」


「実はお前が産まれる前から良くしてくれてな。」


「そうだったの?」


「俺、親から育児放棄されてたんだよ。それでたまたま近所に住んでいた、萌果の両親が俺の事気にかけてくれて、ご飯とか必要な文具とか買ってくれたんだ。さすがに教材は実の両親が買ってくれたけど。」


それから颯杜さんは自分の生い立ちを話してくれた。

私の両親が助けてくれてここまで大きくなったこと、颯杜さんは高校には行かず、今の道に進むことにしたそうだ。


この道に進んだ後も両親とは良好な関係を築いていたらしい。

そして、両親が亡くなる2年前に私の高校入学時の写真を見せてもらって一目惚れしたらしい


「そうだったんだ…そんなに前から…」


「そこで、許嫁の話が出たんだ。もし、萌果に他に好きな人がいたら、見守るだけにしようと思ったり」


「うん…」


「だから、許嫁とかじゃなく萌果の気持ちを聞かせて欲しい」


「私は…颯杜さんのことが好きです。颯杜さんと一緒に居たいです。」


「ありがとう。改めまして、萌果さん。私と結婚を前提にお付き合いしてください」


「はいっよろしくお願いします!」


私と颯杜さんはお互いの気持ちを話し合って、ちゃんと恋人同士としてお付き合いしていくことになった。


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