第16話 嫌がらせ

あれから一葵さんが送迎をしてくれてる。

颯杜さんから"萌果に何かあったら俺は何をするかわからない"と切ない顔をして言われた。


「颯杜さんに心配かけちゃったかな…」


「颯杜さんは萌果さんのこと大事に思ってるんですよ。それにその相手が狛龍組の桐生さんですからね…余計に心配なんでしょう」


「私に何かあったら…抗争になったりするんでしょうか…?」


「それは…なんとも言えませんが、颯杜さん的には話し合いでの解決が理想だと聞いています。」


「そうなんですね…」


「さぁ、着きましたよ」


「一葵さん、ありがとうございます!」


「放課後、またお迎えに来ますので連絡するまでは校内にいてくださいね?」


「わかりました、行ってきます!」


「いってらっしゃい」


一葵さんは私に微笑みながらそう言って見送ってくれた。


―教室―


「おはよー!」


私が挨拶をしながら教室に入ると皆が私を見て申し訳なさそうな顔をした


「どうしたの?」


「あ…萌果ちゃんの机が」


「机?」


私が自分の机を見るとそこには酷い言葉の落書きがされていた。


「なにこれ…」


「私たちが来た時にはもう…」


「子供かよ…」


そう呟いてから私は鞄を置いて、掃除用具入れから雑巾を出すと水で濡らして机を拭いてみた


「落ちないか…誰か除光液持ってない?」


そう聞いたが、誰も持っていないという。

そりゃ学校に除光液持ってきてる人なんてなかなか居ないだろう


「仕方ない、今日はこのままでいいや」


「え!?いいの…?」


「うん。いちいち反応してたら余計に面白がるでしょ?」


私はクラスメイトたちにニコッとしながらそう話した。


「あれ?葉月さんの机。ずいぶんとお洒落になったんじゃない?」


「佐古さん…」


「葉月さんにお似合いね。羨ましいわぁ」


佐古さんと取り巻きたちがクスクス笑いながら私の机の話をした


「じゃあ、交換する??」


「え?」


「そんなに羨ましいなら交換してもいいけど?」


「いや…」


「佐古さん…あんまりそういうこと言ってると、自分がやったって暴露してるようなものじゃないの?」


「…」


図星だったからなのか佐古さんは悔しそうに私を睨んできた


「こんなくだらない事しないで。言いたいことがあれば直接言えばいいじゃない。」


「…」


「ま、この落書きは誰が書いたかなんて知らないけど」


私が佐古さんにそう言うと何も言えなくなって、教室を出ていった。


「…言いすぎちゃったかな?」


「そんなことないと思う。」


「なんか葉月さんカッコよかった!」


その日、佐古さんは一日中静かで朝のこと以外は何もされなかった。


でも、ちょっと言いすぎた気がするから2人きりになったら謝ろうと思う。



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