第14話 波乱の幕開け

学校での生活もだいぶ良くなって、両親が亡くなる前の生活が戻ってきた。


今日も柚杏と一緒に帰るはずだったんだけど、なにやら急用で早退したらしく、私は一人で帰ることにした。


久しぶりに一人で帰っていると私の横に黒い車が停まって、窓が開いた


「萌果さん…でしたよね?」


「え?あ、えっと。桐生さん…ですよね?」


「嬉しいな。覚えていてくれたんですか?」


「あ、はい。人の名前と顔を覚えるのは得意なので」


「そうですか。…もしよかったら牡丹組までお送りしましょうか?」


「え!?いや…そのお気持ちだけで。」


その車に乗っていたのは桐生さんだった。

一応敵対組織なのに、なんで送るなんて言ってきたのか。


あんまり良い感じがしなくて断りながら身構えてしまった。


でも断った時、一瞬だけど桐生さんから怒りのオーラを感じた気がした。


「…どうしても車に乗って貰えないのですか?」


「今日は…歩いて帰りたい気分なので」


「今日は…?いつも歩いて帰ってるじゃないですか?お友達と一緒に。」


「え…なんで知って…」


「さぁ?なんででしょうね?」


桐生さんは不敵な笑みを浮かべて私を見てきた。


「お友達に何かあったら…嫌ですよね?」


「何が言いたいんですか?」


「私は貴女を牡丹組まで送りたいだけですよ。」


「どうしてなんですか?」


「貴女に興味があるからです。乗ってくれますよね?」


「…わかりました。」


桐生さんの圧と柚杏に何かされたらと思うと、車に乗ることに従うしか無かった。


「ありがとうございます。さぁ、どうぞ」


車に乗り込み牡丹組まで向かう車内では桐生さんから色々と質問された。


もちろん組のことは私は全く分からないから、聞かれても答えられないし、自分のことも最低限のことしか答えなかった。


―牡丹組前―


「颯杜さん、こんなにアクセサリーとか買ってどうするんすか?」


「萌果に似合いそうだったから」


「へ!?そ、それでこんなに買ったんすか!?」


「悪いか?」


「いや、良いっすけど…」


そんな話をしている颯杜さんと瞬さんの前に桐生さんは車を停めた。


きっとわざとだ。さっき車内での会話からなんとなくそうだと思った。


「萌果!?」


「萌果ちゃん!?」


「それじゃあ、萌果ちゃん。またね?」


「…」


颯杜さんたちの前でわざわざドアを開けてエスコートしてそう言ったあと、私の手を取りキスをした


「!!」


私はいきなりの事に驚いてすぐに手を引っ込めた。


そんな私に桐生さんは"ふっ"と笑ったあと颯杜さんたちの方を見て不敵な笑みを見せて帰って行った。


そこに残された私たちは気まずい雰囲気の中、家の中へと入っていった。

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