第11話 偏見

―月詠(つきよみ)高校―


「葉月さん」


「…何?佐古(さこ)さん」


「葉月さんさぁ。よく学校に来れるよね?」


「どういうこと?」


「だって…ヤクザでしょ?」


「…お世話になっている家がそうなだけで、私はヤクザじゃないけど?」


「どっちでもいいけどさぁ…もう学校来んなよ」


「どうして?」


「あんたみたいなのがいるとクラスの空気が悪くなるのよ」


「…」


そう言われて教室の中を見渡すと皆が私から目を逸らした


「でも、私は今までと何も変わらない。それでも、嫌なら私に関わらなければいい話じゃない?」


「は?あんた生意気なんだけど?」


「私は間違ったことは言ってないけど?」


私がそう言い返すと、佐古さんは面白くなさそうな顔で取り巻きたちと教室を出ていった。


「…皆も、私と関わらなくてもいいからね」


私は苦笑いをしながらクラスメイトたちにそう言って次の授業の準備を始めた……


その後、佐古さんたちが何かしてくる感じはなく放課後までは平和に過ごせた。


「萌果ー?」


「柚杏?」


「いたいた!一緒に帰ろう!」


私に気さくに話しかけてくる柚杏にクラスの子たちはかなりビックリしていた。


「帰りにさー…」


「ねぇ!」


「何?」


「その子ヤクザなんだよ?関わらない方がいいんじゃない?」


柚杏が私に話しかけてこようとした時に、佐古さんが割り込んできて、ニヤニヤしながらそう言ってきた。


「だから?」


「だからって…」


「萌果は私の幼なじみで親友。今の家の人達だって萌果の両親が亡くなった時に支えになってくれたの。何も知らないのに悪く言わないでよ」


柚杏は私と颯杜さんたちのことを悪く言われて、私以上に怒っていた


「で、でも!ヤクザはヤク…」


「それ以上言うなら許さないよ。萌果の今の家族は確かにヤクザだし、皆が怖がるのもわかるよ。でもね、みんなが思っているような人達じゃないよ。」


「柚杏…」


「萌果の事だって今まで仲良くしてたのに、家族がそういう人たちになったからって、萌果自身は変わらないよ。」


その後も柚杏は淡々と言いたいことを佐古さんやクラスメイトたちに話して"萌果は萌果、今も昔も変わらない"と言ってくれた。


私はそれだけですごく嬉しかった。

例えこの先、クラスの子たちが私から離れたとしても、私には柚杏や颯杜さん達がいてくれたらいいと思った。

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