第9話 狛龍組

私は颯杜さんに着付けてもらった着物を着て玄関に向かうと、綾人さんたちが驚いた顔をした。


「え!?颯杜さん…萌果ちゃん連れていくんすか!?」


「あぁ。本当はその予定はなかったんだが、良い機会だしいずれは知られる事だからな」


「でも、さすがにまだ早かったのではないですか?」


「綾人は本当に心配症だな。」


「そりゃそうですよ。颯杜さんと萌果ちゃんに何かあったらどうするんですか!?」


「萌果は俺が守るから大丈夫だ。」


そう綾人さんに言った颯杜さんはすごくカッコよくて、颯杜さんに惹かれている自分に改めて気づいた。


「綾人さん。足でまといにならない様にしますので、一緒に連れていってください!」


私は綾人さんを見ながら話した後にペコリと頭を下げた。


「ふー…。仕方ないですね。でも、颯杜さんの傍を離れないでくださいね?」


「はい!約束します!」


私がそう言うと綾人さんはニッコリ微笑んでくれて、颯杜さんと一緒に車に乗り込んだ。


しばらく走るといかにも高級料亭のような場所に着いた。


「あの、颯杜さん…?ここって…」


「ここは牡丹組と狛龍(はくりゅう)組が会合でいつも使っている料亭だ」


「そうなんですね…」


「さぁ萌果さん。颯杜さんの隣へ」


私が呆気に取られていると、綾人さんに颯杜さんの隣へと促された。


「萌果さん絶対に離れないでくださいね」


「はい。でも、綾人さんいつも私を"ちゃん付け"なのに今日は"さん付け"なんですね?」


「こういう場面ではさん付けがいいんですよ。萌果さんは颯杜さんの婚約者で未来の姐御なんですから」


「なるほど」


確かにと言う感じで納得した私は颯杜さんから1歩下がって歩いた。


―梅の間―


「桐生さんお待たせしました。」


「あぁ、椿さん。全然待ってませんよ。私もさっき着いたところですから」


「そうでしたか。会合の前に紹介したい人がいるんですが、よろしいですか?」


「紹介したい人…ですか?」


「はい。私の婚約者の葉月萌果です」


「…初めまして。葉月萌果と申します」


颯杜さんに促され畳に正座をして挨拶をした。


「…!」


「急に連れてきてしまい、申し訳ありません。ですが、せっかくの機会かと思いまして。」


「…かなりお若いんですね」


「はい。今、高校3年生です。」


「高校生!?椿さん正気ですか!?」


「まぁ、色々な事情がありまして。」


「そうですか…あ、すみません。まだ挨拶していませんでしたね。狛龍組の組長、桐生匡弥(きりゅう まさや)と申します。以後お見知りおきを。」


「こ、こちらこそ」


桐生さんは颯杜さんと違い男の人にしてはすごく美しいというか…でも、すごくオーラのある人だなという印象だった。


挨拶もそこそこに颯杜さんと桐生さんはさっそく会合を始めた。


私はと言うと、綾人さんに"隣の部屋を用意した"と言われ、駿さんと一葵さんと隣の部屋で終わるのを待つことになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る