第8話 嵐の前の静けさ

柚杏が家に遊びに来た日からまた数日。

今日も牡丹組は平和です!


と、思っていたのですが…


「ふぁー…おはようございます」


「あ、萌果ちゃんおはよう!ごめん!ちょっとみんなバタバタしてるから適当に朝ごはん食べてくれる?」


「はーい!」


朝からみんなどうしたんだろう?あの駿さんでさえバタバタしてる…


「ここに来て初めてだなー…。1人でご飯食べるの。」


自分で朝ご飯を作って1人で食べてたけど…ちょっと寂しいいな…。


「萌果」


「颯杜さん!おはようございます!」


「おはよう。1人にしてごめんな?」


「いえ!みんな忙しそうだし。なにかあるんですか?」


「あぁ…。実は急に会合が入ってな」


「会合…?」


「あぁ。狛龍組(はくりゅうぐみ)が何やら話があるとかで今朝急に連絡があったんだよ」


「そうなんだ…大丈夫なの?」


「大丈夫だよ。仲が良いとまではいかないが、情報交換するくらい普通の関係だな。」


「そうなんだ。じゃあ、今日はみんな家に居ないんですか?」


「そうだな。最低でも午前中は居ないな」


「そっかぁ…」


颯杜さんたちは会合があるらしく午前中は居ないとのこと。


寂しいけど私は何も分からないし着いていくことも出来ないし…何しよう??


「…萌果も来るか?」


「……え!?」


「いや一応、俺の未来の妻だし。狛龍組の組長にも紹介しとこうかと思ってな」


「それは嬉しいんですけど…。正装出来る服なんて持っていないですよ?」


「それなら大丈夫だ。萌果がここに来る前に着物を用意してあるから」


「そうなんですか!?でも、着付け出来ないです…」


私の為の着物を用意してあると聞いてビックリしたけど、すごく嬉しかった!


でも、着付け出来ないから着れない…


「それなら大丈夫だ。俺が出来るからな」


「………え!?」


「だから、俺が着付けてやる」


「え!?で、でもっは、恥ずかしいし…」


「出来るだけ見ないようにするよ」


颯杜さんからの突然の申し出に恥ずかしさと、でも着物を着たい気持ちとで揺れていた。


「んー…」


「萌果のために用意した着物を俺のために来てくれないか?」


「え!?あ。は、はい!」


颯杜さんの"着てくれないの?"みたいなここに来て初めて見る表情に"はい"と返事をしてしまった。


「よし、じゃあ早速着替えようか」


ニッコリ笑う颯杜さんにドキドキしながらも着物を着付けてもらうことにした。


「颯杜さんどうして着付けなんて出来るんですか?」


「母が"こういうのは知っておいた方が良い"って言ってて。自分で着物着る時とか、将来の嫁さんのためにもなるしって教えてくれたんだよ」


「そうだったんですね。そういえば颯杜さんのお母様は?」


「母は…5年前に亡くなったんだ。交通事故で親父と一緒に」


「あ…ごめんなさい…」


「謝る必要なんてないよ。俺には綾人たち家族がいる、もちろん萌果。お前も俺の大事な家族だ」


「はいっ」


そんな話をしているといつの間にか着付けが終わっていた。


その着物は桜色の可愛らしい物だった


「可愛い…颯杜さん!ありがとうござます!」


「すごく似合ってますよ。私の可愛いフィアンセさん」


「っ!!」


フィアンセ…その言葉が嬉しくて照れ笑いをする事しか出来なかったけど、颯杜さんも嬉しそうに笑ってくれた。


ただ、この会合に私が出席したことで狛龍組と牡丹組があんな事になるとは、この時は誰も思わなかった。

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