もうどうでもいいのですよ、にいさま③
「――というオチなんだけど、これで終わりだよ」
僕は最後からひとつ前の話……つまり、九十九話目の話を語り終えた。
しかし、百話も語るというのはやっぱり大変だ。
結局、中盤で父さんがネタ切れになってギブアップしたり、妹が何話も続けて語ったりと、最初に決めた順番もグダグダになってしまった。
「なかなか怖くてよかったですね。さすがにいさまです」
「そうか? これくらい、別に誰でも話せるんじゃないか?」
「何をおっしゃいますか。こういうのはどう感じたかが大事なのです」
「それはそうかもだけれど」
「ダメですよ、にいさま。ちゃんと怖いものは怖いものだと認めないと、逆によくないものを呼び込んでしまいます」
妹はまるで学校の先生のような口調で僕に諭した。
怖いものを怖いものと認める?
よく分からない理屈だ。
「はいはい。それじゃあ、そろそろ終わりにましょうか」
母さんが立ち上がって、並べていた蝋燭をまとめて片づけようとする。父さんも大きく欠伸をしながら母さんを手伝い始める。
残る蝋燭はあと一本。語り残した話もあと一話というところになっていたが、夜ももう遅く、両親はさっさとお開きにしたいらしかった。
僕もそれに倣おうとしたが――ぶっちゃけいくつ話したかなんて途中でどうでもよくなっていた――、つっと妹に袖を引かれた。
「にいさま――最後の蝋燭を消す前に、少しだけ余興をしませんか?」
「余興?」
僕は妹がまた妙なことを言い出したなと思った。
「はい。せっかくこの数の蝋燭を用意したのです。ですから、あえて最後の一本の蝋燭の火だけを消さずに、そのまま話を続けていく……というのはどうでしょうか?」
「なんだお前、こんだけ怖い話をしておいてまだ話し足りないってのか?」
「まあ、そういう感じです」
「うーん、そうだなあ。ちょっとくらいならいいかな?」
そう言って僕が両親のほうを窺うと、二人とも苦笑しつつもうなずいている。
そして――妹が再び語り始めた。
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