私はにいさまの妹ですよ⑤



 ―― ―― ―― ―― ――

 ―― ―― ―― ――


 これから語られる物語の中に、わずかにでも真実が含まれているとは思わないでほしい。


                            ―― ―― ―― ――

                         ―― ―― ―― ―― ――



 小説はそのような一文から始まっていた。

 十万字程度のテキストファイルだった。僕は画面を少しスクロールして、冒頭の何ページかをざっと眺めてみる。

 適当にいくつかの台詞や説明っぽい部分を拾って読んでみると、幽霊の話や登場人物が恐怖に怯える描写が目について――なんとその小説のジャンルはホラーのようだった。

 つまり、怖い話。

 何という好都合だ。好都合すぎて、むしろこの段階ですでに怖いくらいだ。

 僕はページを先頭に戻して、いちから文章を読むことにした。



『実妹怪談』



 その小説は、そう題されていた。

 実妹怪談。

 なるほど、「実話怪談」と「実妹」を引っかけたタイトルというわけだ。

 実話。

 実妹。

 そして、怪談。

 ……ダジャレじゃないか。

 何と言うことはない言葉遊び。誰でも思いつくような戯れ言のたぐい。

 人を怖がらせることが目的の小説でこのタイトルはどうなんだろうと思わなくもなかったが、いまは執筆の参考になれば何でもいい。

 僕はその物語を読み進めた。








 物語は、タイトルの通り、血のつながった実の妹のいる、兄の話だった。

 その兄はわけあって妹と二人暮らしをしているが、次第に生活の中で不気味な現象が頻発するようになる。その現象の正体が幽霊なのか何なのかは、序盤では判明しない。

 表面的には、あくまで兄と妹の日常が淡々と綴られていく。


 しかしあるとき、決定的な事件が起こる。

 そして、妹が兄に言うのだ。


 ――待っていましたよ、にいさ縺ゥ縺?°縺薙l縺九i隱槭i繧後k迚ゥ隱槭?荳ュ 

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「うわっ」


 僕は思わず声を上げた。

 文章を読んでいたと思ったら、突然表示がバグったようになり、たちまち画面が黒く染まっていったのだ。


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