先輩、楽しい話をしましょう②
「先輩? せーんぱーい! おーい、大丈夫ですかー?」
「うわっ」
声がして目覚めた。
起き上がろうとして、途端に肩から足首にかけてぐっと地面に引っ張られるような重みを感じた。どうにか上半身だけ起こすと、全身にぐっしょりと汗をかいていた。
体を半分横たえたまま、僕はぐるりと視線を走らせた。
空が青い。遥か上空を何かの鳥がツイーッと飛んでいく。
隣では制服の女子生徒が一人、困ったような様子で立っている。
ここは……そうだ、高校の中庭だ。
放課後。中庭のベンチで、僕は眠りこけてしまっていたのだ。
周囲を確認した後、僕は頭の奥に軽い痛痒を覚えて、片手でこめかみを押さえる。
「うーん、悪夢だった……」
ひどい夢を見ていた……ような気がする。
悪夢だったことは間違いない。しかし、非現実な内容だったはずなのに奇妙なリアルさがあった感覚も残っている。何度も誰かに呼ばれていたような――いや、あれは現実にあったことだったか? どこまでが夢でどこまでが現実だ?
そんなことを痛む頭で考えている間にも、夢の景色はどんどんぼやけていく。直前まで覚えていたビジョンがみるみるうちにどこかへ霧散していくのを、僕はもはや止めることができなかった。
「悪夢? 何のことですか?」
「いや、何でもない。こっちの話だ」
訝しげに僕を見る彼女は、同じ高校の一年の女子――僕の後輩だ。
短い髪に短いスカート。少し甲高くて舌足らず気味の、いわゆるアニメ声が寝起きの頭に響く。
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