にいさまは何も心配する必要はありませんよ⑤


 身近にいる人から体験談を聞いていく――しかしその方法にも不安はあった。

 妹は数を集めろと言ったが、見知った人に聞くだけではすぐに限界が来るのではないか。進んで怖い話をしたがる人など簡単に見つからないのではないか。そんな噂話を嗅ぎまわるようなやり方で、条件に見合った話が集まってくれるものだろうか――。


 僕の近くにそういう巷の噂や伝説に詳しい人物がいればよかったのだが、生憎そんな都合のいい知り合いはいない。


 あれ?

 いないよな?

 いないはずだ。

 いなかったと思う。


 ともあれ、何事もやってみないことには始まらない。

 さっそく僕は近くの友人やクラスメイトを伝手つてに怪談の聞き込みを始めた。


「また妙なことを始めたな」


 一番親しい友人は僕の奇行に呆れていたが、一方で僕の活動に協力してくれたのも、またその友人だった。

 もっとも友人の言う通り「妙なこと」であるのは疑いがなかった。

 だってそうだ。

 たまにならともかく、


 話が集まる集まらない以前に、周囲からドン引きされて終わるのではないかとも懸念した。しかし、例の友人のフォローもあって、聞き込みは思いの外、スムーズに進めることが出来た。

 クラスメイトや同学年の生徒のみならず、上級生や後輩、時には教師からも話を聞くこともあった。僕は聞いた話をせっせとまとめ、記録していった。


 次の話も、そうした過程で集まってきた話のひとつになる――。


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