にいさまは何も心配する必要はありませんよ④
……というわけで、怪談だ。
怪談を書かなければならない。
ただ怪談小説を書くというだけなら、部屋で一人原稿に向かい執筆に励んでいればよいのだが、妹の「恐怖」を集めるというクエストも並行して進める必要がある。
そんなクエストは無視すればいいだろうって?
そうかもしれない。
妹の指示など無視して僕のやりたいようにやればいいのかもしれない。
とある後輩の一人も言っていた。
「怖い話ですか? それより先輩、どうせならもっと楽しい話をしましょう?」と。
しかしどちらにせよ、より魅力的な怪談を書こうと思ったら――ましてやあの妹が満足する出来のものを書こうとするなら――、現時点で僕個人の中にあるアイデアだけでは足りないことは明らかだった。
所詮、僕も一介の高校生。
一人でカバーできる知識と想像力には限界がある。経験が足りない。
怪談小説を書くに際して、事前に恐怖ネタを集めることは必須だった。
それなら最初から怪談など書かずに別の話を書けばいいのかもしれない。
が、いまさら他に相応しいネタも思いつかなかった。
「恐怖」を集めて、怪談を書く。
そのためには、奇妙で不思議、怪奇で不気味――そういった何かしら恐怖を感じさせるような体験談が必要だった。出来れば、生々しくて劇的な、小説の題材にしやすそうなものがいい。
そういう体験談を集めるには、どうすればいいのか。
真っ先に思いついたのは、インターネットでネタを探す方法だ。
適当な怪談・都市伝説系のサイトを読み漁る。
SNSや掲示板を使って不特定多数から話をつのる。
ネットにはいくらでもそれらしい話が転がっているのだから、その中から小説の題材に適したものを選んでいけばいいのだ。
しかし僕の裁量ではすぐ収拾がつかなくなりそうで、何より妹の理想とする恐怖蒐集とは何か方向性が違ってしまうような気がした。
そこで僕が次に考えたのは、学校の中で身近にいる人から体験談を聞いていくというものだった。このやり方なら収拾がつかなくなるということはないし、自分のペースでやっていけるのではないか。そう思ったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます