怖い話をしてるんだよ、と彼女は言った②
怖い話をしてるんだよ、と彼女は言った。
四月七日。転校初日のことだった。
その日の朝、僕は会ったばかりの担任教師――ひょろりとした見た目の眼鏡の若い男性教師だった――に連れられ教室へと向かっていた。
二年A組。そこが、僕がこの学校で所属することになるクラスとなるらしかった。
新しい学校。新しい教室。そして――新しいクラスメイト。
待ち受ける未知の世界。
僕は教師の背中を追って見慣れない校舎の、見慣れない廊下を歩きながら、今後の自身の身の振り方について考えていた。
右も左も分からないこの学校でどのようにやっていけばいいのか……と、そう言えば、あの妹の奴も学校のことで何か言っていたっけな。なんだっけ。
僕は今朝の妹とのやりとりを思い出す――。
――――――――――…………
――――――……
――――
朝の食卓での出来事だ。
以下、回想。
「――いいですかにいさま、新しい学校だからと言って何も不安に思うことはありません。にいさまはにいさまらしくいつも通り堂々としていればいいのです」
「まあ、それはそうなんだけど」
「どこにいてもにいさまがにいさまであることに変わりはありませんよ。まわりの目を気にする必要がどこにあるでしょうか」
「でもなあ……」
「それでもなお不安に思うというのでしたら、対処法はカンタンです」
「え、なんだ?」
「それはもちろん……怖い話です!」
「は?」
「クラスメイトの皆さんと怖い話をすればいいのです。それですべて解決です」
「いやさすがにないだろ。お前じゃないんだから」
「そうでしょうか?」
「そうだよ。誰もがみんな怖い話に飢えてるわけじゃない」
「しかしにいさま、怖い話はいくらしてもしたりないということはないのでは?」
「だからそれはお前だけだって!」
……以上、回想終わり。
――――――――…………
――――――……
……うん。とりあえず妹のアドバイスは忘れよう。
僕は思考を切り替えることにした。
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