待っていましたよ、にいさま⑦


「ああそうか。分かったぞ」

「……? 何が分かったのですかにいさま?」

「あれだ。これは田舎の旧家特有のサプライズパーティーか何かなんだろ?」

「はて? 何のことでしょうか?」

「だからその……、僕をビックリさせようとして……遠回しな歓迎会的な……?」

「あらにいさま。歓迎でしたら妹の私がいくらでもいたしますのに」

「そのにいさまって呼び方も、僕を驚かせるためにわざとやっているんだ。……そうなんだろ?」

「まあ、わざとだなんて。いくらにいさまとは言え心外ですね。私は至って真剣に妹をやっていますよ」

「真剣に妹をやるってなんだよ」

「真剣も真剣、命懸けです」

「妹って命張ってやるようなもんなのか……?」

「もちろんです。何しろ私はこの家に古来続く由緒正しき正統派妹ですから」

「だからなんだそれ」


 僕は目をつむって天を仰いだ。

 状況がまったく理解できない。

 どうしよう。どうすればいいんだ。

 棒立ちになった僕の袖を、再び少女が引っ張る。






「それはともかく、さあにいさま。お部屋までご案内しますよ。家の中もおいおい見ていただかないとなりませんね。すぐには慣れないかもしれませんけど、今日からここが私とにいさま二人のおウチなのですから。ほらほらさあさあさあさあさあ」

「ストップストップ!」

「あら何でしょうかにいさま」

「だーから、にいさまって言われても、僕はきみのことなんか知らないって! 僕は今日初めてこの家に来たんだから!」

「そうでしょうか」

「そうだよ」

「ですがにいさま」

「何がですがなんだよ」


 話が進まない。


「確認するけど、きみは前からこの家に住んでるってことでいいの?」

「はい。この家でにいさまをお迎えするために……私はここでずっと待っていたのです」

「ここで待っていたって……僕が来るのを? ずっと?」

「ええ、


 少女はうっとりした表情でうなずいた。

 恍惚としたそのまなざしは、ここでないどこか遠くを見ているかのようだった。


「それじゃあつまり、きみはこの家の子なんだね」

「はい。にいさまがそう言うのであれば、それでよろしいかと」

「いやあ。そこは僕がどう言うかはあんまり関係ないんじゃないかな……?」

「そんなことはありませんっ!」


 少女はきっぱりと断言した。






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