待っていましたよ、にいさま③
住宅も少なく、ろくな商業施設もない上に、道路には車もほとんど走っていない。
わずかな数のマンションを除いて高い建物が全然ないために、普通の歩道を歩いているだけでも遠くまで無駄によく見渡せる。
畑。川。山。草地。鉄塔。放置された資材置き場。
田んぼのただ中にこんもりと固まっている小島のような小さな森……。
せめて目印になるような建造物はないかと探すと、学校や役場を示す看板がちらほらと目に入る。こんな過疎の典型のような町でも中学や高校はあるのだ。
しかし肝心の学校そのものは、来る途中では見つけることはできなかった。どうやら学校等の公共施設のある地区は、僕が目指す方向とは正反対にあるらしい。
となると、新学期からは通学にはそこそこ時間がかかることになるかもしれない。朝はあまりゆっくりは出来ないと思っておいたほうがいいか……。そんなことをつらつら考えながら歩く。
歩いているうちに、平坦だった道は坂道へと変わっていた。
田園風景は少しずつ見通しの悪い雑木林に覆われていく。
木々の間から垣間見える町の景色に、やはり変化は見られない。
まさに殺風景を極めたような田舎町。
うんざりだった。
自分から望んでやって来ておきながら、僕はこの土地を訪れたことを早くも後悔し始めていた。
歩けば歩くほどに、本当に僕はこれからこんなところでやっていけるのかという想いが強くなっていった。
……などということをいつまでも往生際悪く、ぐちぐちと黙考していたのだが、
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