第二夜
待っていましたよ、にいさま①
夢を見ていた。
僕はひとりで夜の道を走っていた。
後ろからは黒い影が迫ってくる。
ぞぞ、ず、ぞわぞわ。ぞわわわっ。
ぞろぞろっ。ぞぞっ。ぞ、ずっ、ずぞろろろろっ。
黒い影はすごい勢いで僕を追いかけてくる。
「はあっ、はあっ、はあっ……」
息が上がる。汗が噴き出る。
次第にふらついてくる足を懸命に動かし、僕は暗い一本道をひたすら走り続けた。
それでも黒い影との距離は縮まらない。
黒い影から伸びた細い帯のような部分が僕の肩や足首にまとわりついてくる。
ぞわぞわわわわわっ。
ぞぞっ、ずずっ、ぞろぞろろろっ。
冷たい舌で舐められるような感触に全身がおぞ気だつ。
気持ちが悪い。
そのうち周囲の空気までもがねっとりと重くなってきて、走っても走っても前に進めないような状態になる。
ぞわぞわぞわぞわぞわぞわわわわわわわわ――――。
ずずずっ、ずず、ぞぞぞぞろぞろぞろぞろろろろろろろろ――――。
前も後ろも、上も下も、すべてが黒い影に染められていく。
いやだ。いやだいやだ。
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ。
何とかしてここから逃げなければ。
黒い沼の底から抜け出そうとするように、僕は必死にもがいた。
ぞわぞわぞわぞわぞわ。ぞろぞろぞわぞわ。
ぞぞぞ、ぞっ、ぞりゅっ、ぞろぞろぞろぞろろろろろろろろろろ。
もう駄目なのか。
僕はこのまま黒い影に囚われてしまうのか……。
諦めかけたそのとき。
どこからか白い光が入ってくる。
目の前に、誰かのすらりとした手が差し伸べられたようだった。
「――――待っていましたよ、にいさま」
そして、僕は――――……。
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