集合場所

支度を手伝ってもらった。花巻が来るのが怖いというと、そろそろ仲直りしろよ。と笑われた。集合場所には誰もいなかった。やはり、片付けるには早すぎたらしい。バッグを床に置くと、肩が軽くなった。日比と別れてからしばらくすると、また誰かが歩いてきた。宿題から顔を上げて時計をみるが、まだ集合まで30分以上ある。

「あ、土倉じゃんー。」

間延びした声に見ると、よっこらせとバックを下ろす嶽野の姿があった。

「最近日比にピッタリだったじゃん?今までいたの知らなかったっしょ。」

「悪い。」

口を尖らす嶽野に小さく手を合わせた。

「土倉っていいよな。今日の最終日テストだって余裕だったんだろ、俺は信じてるんだ。絶対、俺の苗字で貴重な時間を失ってるって。」

確かに、画数が多そうだ。少しでも早く書くコツは草書だ。先生は汚くかくなっていうんだけど、これも戦法の一つだ!と語り出す。

ーーなんだ。何だ、ぎごちないなりにいるじゃんかよ、「友達」。口の中で甘酸っぱいものが広がった気がして、一人で笑ってしまった。「友達」の定義はわからない。けれど、相手も俺も「友達」と思うことが定義なのだとしたら、怪しくても俺から「友達」と思わなければ始まらない。人生、得するかが鍵なんだ。と横で熱心に話す嶽野に相槌を打つ。集合時間が近づき、生徒も集まってきた。

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