なんなのお前ら

教科書や筆箱を抱え、窓際を歩く。日比と話さなくなって、何日か経過していた。今日は最終日だ。最初はそりゃあ、落胆したものの、最近はなんだかホッとしている。未だに日比に言ってしまった言葉にズキズキと心が痛むし、やけに喉がカラカラにかわくが、気づかないふりをした。あれが、仮面なし本音が仮面に跳ね返ったはじめての言葉だった。

 「一人でいるのが好き。」なのは、「一人でいるのが楽。」の間違えだった。気をつかう必要はないし、何も知ろうとしない一生と弛んでいい点なんて一つも見当たらない。相手の幸せのためには一生は一人でいる必要があった。

 窓の外に目をやると、生徒がぽつぽつと見えた。目で日比を探すと、相変わらず大声でグループ内で話していた。こちらにも会話の内容が途切れながらも聞こえてくる。

 気づかれないように立ち去ろうとしたその時、聞こえてしまった言葉

「      じゃん。」

血が上った。窓の桟に待っていたものを立てかけると走ってその場へ向かう。暑い空気を振り払うように声を発した。

「何笑ってんの、目障り。さっさとどっか行けよ。てか、何でそんな大声出す、大迷惑、勉強に集中できない。他の人の邪魔すんなよ。」

自分でも驚くくらい大声で捲し立てると、周囲の視線が集まった。最初は驚いていた花巻達は恐ろしく睨んでくる。

「言っておくけど、授業終わりで講師廊下に歩いてるから。大声出せば余裕で届くよ。」

逃げ出したい衝動をぐっと堪えて、渾身の力で威嚇する。沈黙の後、鼻を鳴らして、日比、行こうぜ、といって歩き出した。

 怒らせていた肩から力を抜く。花巻が来る前に自室に帰って、支度しよう。集合場所で宿題を早く終わらせる。八割は後悔や恥ずかしさ、一割は達成感、一割は自己嫌悪。何も考えずに回れ右すると、まだ日比がいた。周りの視線は散っている。

「俺の勝ち。」

ぼそっと呟くと通り過ぎた。仮面を外せばこうゆうことになる。これで、“正しい”ことを言っているのは俺だ、と証明されただらう。早歩きをし、通り過ぎた休憩広場には先程の花巻グループがいた。

(誇り高くあれ。)

何度も心のうちに唱えながら、毅然として通り過ぎる。その後、ダッシュした。

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