第12話
「オレがマリアを城に連れてくる許可は取れた。宰相が、めちゃくちゃ喜んでさっさと話を進めてくれたぜ。平民なのが残念だって言ってた。マリアを宰相の養子にするかって言われたが、宰相の養子になんてなったら兄貴の餌食だからな。断っておいた。兄貴もオレが妾を作ったと知っているが、セーラの読み通り平民だからと興味を持たねぇみたいだな」
「でしょ? 私の素性を聞く人も来ないし、しばらくは誤魔化せるよ。妾ってどのくらい自由あるの?」
「そこそこあるぞ。オレの部屋のひとつに住ませるって言やぁ気に入られてるのは分かるから、兄貴の宮と皇帝の宮以外は自由に動ける筈だ」
「それも気になってたんだけど、なんでイオスだけ部屋なの? 成人した王族なら普通は一棟全部イオスのものにならない?」
「前はあったけど、兄貴に取り上げられた」
「……もう呆れすぎて何も言えない」
「なんか、すまん。だがおかげでこの部屋が手に入ったからな。出入り口もひとつだし、オレが不在の時は部屋に入れねえように炎の幕を貼れるしな。こんだけ狭いと、使用人が潜む事もできねぇし、セーラも隠せたから結果的には良かったよ」
「そうね。私も最初は大人しくしておくわ。イオスの味方になりそうな方で地位が高いのは宰相様?」
「そうだな」
「宰相様は確かお嬢様が居たわよね? 私たちより3歳上の」
「もう結婚してるぞ。騎士団長の妻だ」
「良いわね。まとめて味方にできたら大きいわ」
「城に来る予定がないか調べておくよ」
「ありがとう! まずは何も知らない平民として近寄るから事前調査よろしくね。場合によっては私の正体をバラしても良い?」
「それはやめておけ、宰相はセーラの次くらいには信用出来るが、兄貴の目がどこにあるのか分からねえからな」
「分かったわ。もしかして……って思わせる程度にしておく」
「出来ればそれもやめて欲しいんだがな……」
「あと5ヶ月しかないからね。多少危険な橋は渡るわよ。イオスが城に残るには、これしかないんだから」
「最悪逃げれば良いんだぞ?」
「そしたらイオスはその後文官達がどうなったか心配するでしょう? フォス様は気まぐれな視察という名のお出かけには行くけど、王族として書類仕事をしているのはイオスだけなんだから」
イオスと過ごして、内部事情を知ったセーラは、怒りしかなかった。王族としての義務を果たしているのはイオスだけ。
フォスは、裏方の仕事は一切行っていない。皇帝も同様だ。
その分、イオスが王族として決裁が必要な全ての書類の処理を行なっていた。だから、イオスは文官には大人気。文官は平民出身者も多くフォスは仕事などイオスに任せれば良いと文官を相手にしない。唯一相手にするのは、地位の高い宰相だけ。宰相は、フォスに皇帝になるのが楽しみですね、などと言っているが、それはイオスが皇帝になりたがっていないから。イオスが皇帝になりたいと願えば宰相は味方になってくれるだろう。
フォスは、社交界での人気は高く、貴族のほとんどがフォスを支持すると言っているが、仕事をしない事を知っている者は知っている。フォスを積極的に支持しているのは2割程で、残りは切り崩しが可能だとイオスは踏んでいた。
「そうだな……セーラと再会するまでは、どうでも良いと思っていたが、兄貴が皇帝になれば、無意味に人が死ぬ。やりたくはないが、本気で皇帝を目指す。セーラ、苦労かけるがよろしく頼む」
「任せて! 絶対にイオスを皇帝にしてみせるわ」
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