第38話

 厨房でおやつを用意してもらい、部屋に戻れば、二人は大泣き。魔法で動けるようにしていたクマのぬいぐるみは二人をあやしているが、効果はあまりなかったようだ。

 部屋に入る時、クロノスがまだ何か仕掛けているのでは、と警戒しながら。

 ルセオはお腹がいて泣いていたようだ。食べ物を与えると泣き止み。ラシーヴィはつられて泣いていたようで、セレーネの姿を見ると駆け寄ってきた。

 その二人も満足したのか、泣き疲れたのか、ソファーで寝ている。一つのソファーにセレーネ、ラシーヴィ、ルセオ。対面のソファーでは、レネウィとセリアがお茶を飲みながら留守中の話をしてくれた。

 ユーフォルが深刻な表情でセリアを呼びに来て、なかなか帰ってこないことを心配したレネウィはクロノスとは知らず、一緒にレウィシアの元へ。そこではセリアが疑われて。

 それにしてもなぜ、レウィシアにばれたのか。

 アンスリウムのくれた紙包みには菓子が。おそらく、ここに来るまでに食べていたのを渡したのだろう。

「食べていい? 」とセリアに尋ねられ、頷いた。来てもらいたい者の家族に何か入れることはない。グラナティスにはないイルヤの菓子。レネウィとも分けて食べていた。

 セリアはレウィシアに疑われたことを根に持っており、夕食の席でも「父さま、嫌い」と。ラシーヴィまで真似して「きらーい」と言われ、レウィシアは落ち込んでいた。

「セリア、お父様を落ち込ませないで。仕事がとどこおれば、行ける所も行けなくなるわよ」

「聞いたのか」

「いいえ、私が行くとなれば、この二人は連れて行きます。セリアも行くと言ってきかないでしょう。レネウィだけお留守番は。そうなると」

 レウィシアもついて来る。

「二人は連れて行っても、誰かが見ていないと。女王陛下なら喜んで見てくれそうですけど」

「他人に迷惑をかけるな。しかも王に」

「孫のように可愛がってくれそうですけど」

 それに悩みの種が一つ除けるのなら。

「行けるの? 行っていいの。いいのなら許してあげる」

「都合のいい」

 レウィシアは苦笑。

「エホノとの取引が潰れるかもしれないからな。臣下の大半は行ってこい、と言っている」

「エホノとアンの国では売っているものが違います。リーフトと取引できるなら、両国大喜びしそうですね」

 エホノがどう言おうと、リーフトはグラナティスと手は切らない。

 イザークを介してなら陸を運ぶより早く、安くいける物も。イザークにしても商売相手が増えるのは。

「説得相手は大丈夫なのか」

 レウィシアは心配顔。

「激しい気性の持ち主ではないので、大丈夫でしょう。説得できるかは別ですけど」

「たおしちゃうの」

「それをやれば一生森に入れてくれません。なぜ、そういう思考に」

「それじゃあ、おどすの」

「ヴェルテぇ」

 低い声で教えたであろう者の名を。

「すべては行ってからです。今はご飯。セリア、嫌いなものを避けない。一口でもいいから食べる」

「むぅ、食べなくても大きくなれるでしょう」

「栄養がかたよる。全部とは言いません。一口でいいから。それにこれから外へ出るのなら」

 何を出されるか。嫌いなものを出されても、せめて顔に出さない。吐き出さず、一口でも食べれば。

 セリアは嫌々一口。レウィシアは偉いぞ、と嫌われたくないので甘い。


「捕らえた魔法使いは正直に話しました?」

 夕食も終わり、子供達もそれぞれ部屋へ。怪しい人物、エホノの姫や臣下は怒って帰ったようなので、もういないと思いたいが、念のため結界を張り、扉前には兵。

「いや、クロノスのことを聞き出そうと必死だ。使用人が正直に話した。金を払うから、王妃になれば相応の地位をくれてやるから、話を合わせろ、と」

 新しく入った使用人だろう。古参の者は持ちかけられた時点で使用人頭に話し、かしらからユーフォルなり、相応の臣下に。城勤めできるようになったのに、クビ。王族をめたのだ。エホノに雇ってもらえるかどうか。

「魔法を使われ、逃げ出し、子供達か私の所へ来そうですね」

 王族に関わっていると思い込んでいるのなら。レウィシアよりセレーネや子供達が狙いやすい。

「そうならないようにしている。それより、黙って出て行くな」

 レウィシアはセレーネの両頬を軽くつねる。

「突然来たのだから仕方ないでしょう。揉めたんですよ。私は解決するまで離れたくなかったんですけど、強制的に送られて」

 まさかセリアのせいにされていたとは。

「うっすら痕が」

 レウィシアは頬に残った傷痕を撫でている。

「セリアが治癒魔法をかけてくれたんですよ。明日もう一度やるから治してはだめ、と言われました。他は治しましたけど」

 実験台。セリアもセレーネと同じで治癒魔法は苦手。治癒より攻撃魔法が簡単だから。だが加減が。

「明日きれいに治せなければ、自分で治すか、治癒師に頼みます。薬も塗ります」

「なぜ顔。他の場所なら」

 なにがなんでも治さないといけない、とセリアも考えたのだろう。

「クロノスはレネウィが王になると言ったみたいですね」

「ああ。定めだと。剣を抜けるのもレネウィだけだと」

 クロノスがそう言うのなら、もし姫の企みが成功していても、その子は剣を抜けない。追い出されていたとしても、いずれ戻って来て、王に。グラナティスの王と言っていないのなら別の国の王、という可能性も。グラナティスを二つに分ける、などという事態だけは避けないと。ともかく。

「子供達が無事でよかったです」

「取引相手は減るかもしれないが」

 本気で言っていないのはわかる。

「若い女性がいいのなら、今からでも追いかければどうです」

 セレーネも冗談で返す。

「セリア、か」

 レウィシアは大きく息を吐いて、肩を落としている。

「セレーネなら追いかける。地の果てまでも。だから、馬鹿なことは言わず、考えるな」

 禁呪の件か。子供達に何かあれば。

 レウィシアもセリアと同じで根に持つ。

 こつん、と額に額を合わせてきた。



「……今日はせいぞろいしているわね。昨日言っていたセレーネの子?」

 翌日、再び訪ねて来たアンスリウムは目を丸くしている。

「ええ、第一王子、王女、第二王子、第三王子」

 レネウィ、セリア、ラシーヴィ、ルセオと紹介していく。

 ルセオはセレーネの腕だが、ラシーヴィはレネウィとセリアが手を繋いでいる。

「家族を自慢するのが大好きな夫なので」

「……そう」

 アンスリウムはどこか呆れたような目をレウィシアに。

「わかっているでしょうけれど、返事を聞きに来たの。結論は」

「四人の子供も一緒で」

「かまいません」

 レウィシアの言葉にアンスリウムは頷く。

「では、一家で」

 アンスリウムは「よし」と小さくガッツポーズ。傍にいる青年からは「アンスリウム様」と小さな注意。

「半月後になって、やめました、はやめてよ」

「体調を崩す、どこかから戦を仕掛けられない限りは。それは、そちらも同じでは」

「そうね。不測の事態になれば延期されるわ。そうなった場合は早く知らせます」

 エホノからは攻めてこられない。グラナティス近隣でエホノの顔の利く国はない。

「では、招待状を」

 アンスリウム直々にレウィシアへと招待状を渡す。

「部屋は用意しておきます。交渉は国に来てから」

「ええ」

 レウィシアとアンスリウムは頷きあう。

「それでは、失礼します。お忙しい中、お時間をいただき、ありがとうございました。ご一家で来られるのを楽しみにしております」

 王族らしい優雅な礼。

「セレーネだけ先に来てくれてもいいわよ」

「一緒でないとご機嫌斜めになるので」

 レウィシアとセリア。

「そう、大変ね。それじゃ、本当に楽しみに待っているわ」

 笑顔で去って行く。

「先に行かないでよ」「先に行くなよ」

 思った通り、セリアとレウィシアが。聞こえていたのか、部屋の外から笑い声が。控えていた臣下は頭を抱えていた。


 エホノの姫が去って十二日。子供達が危ない目に遭うこともなく、平穏、いつも通りの日々に。

 臣下の間ではエホノの者が王子達を害しようとしたのではないか、と囁かれている。魔法使いもエホノの者だと判明。どうするか話し合われていた。

「エホノの王から謝罪の手紙が来た。クラシー姫の祖父からは抗議の手紙が」

 執務室でレウィシアは二通の手紙を持ち、苦笑していた。

「王からは娘が勝手なことを言ってすまない。今まで通りの付き合いを。レネウィのことも調べると。祖父からは、よくも可愛い孫を侮辱してくれたな、取引を停止してやる、と」

「どちらに権力があるのでしょう」

 セレーネは小さく首を傾げた。

「さあ。イザークから何か」

「何も。手紙でも書いておきましょうか。イルヤと取引できるかもしれないことも加えて」

 バンクル商会の名で城にもたまに手紙が届く。イザークやカーバンクルは一つの所に長々といないので、手紙を出す場合は精霊に頼むか、本拠地があるので、そこへ。本拠地にいる従業員はイザークの居場所、予定を知っているので、寄港する港に行って、手紙を渡している。こちらは時間がかかり、タイミングがずれればさらに次の寄港先。何ヶ月先になるか。

「そうだな。イルヤへ行く日も近づいている」

「セリアは指折り数えていますよ」

 早くから用意している。カーバンクルに手紙を送るから、何か送るか尋ねるのも。

「エホノは変わらず様子見だ。どれだけの圧力をかけてこられるか」

「言っていることが違うのなら、国王と祖父で揉めそうですね」

「権力はあるのだろうが、国王が商人に負けては」

 国力も知れたもの。アンスリウムも言っていた。国王の権力が弱いと臣下、貴族が力を持つと。

「……シーミは、来るのでしょうか」

「来たとしても、近づけさせない。それに国王にはビタール、ローズとは別の者がいたと聞いている」

「私は大丈夫ですけど、次が狙われる可能性が」

「セリア、か」

「他国で騒ぎにならなければいいんですけど。幼くても魔法は使えます。危なくなれば使え、とも言っています。相手がどうなるか」

「相手の心配か」

 レウィシアは小さく笑っている。

「それなら建物。修理代が出せるくらいなら」

 セレーネは頬に手をあて、ほう、と息を吐く。レウィシア、同じく聞いていたユーフォルも微妙な顔。



 エホノはこの一年作物が育たず、不作。近隣はそうでもないのにエホノだけ。グラナティスの王を怒らせた、と噂されていたが本当は王妃様を怒らせたんじゃないのか。というセドナからの手紙が届いたのは一年後。

 レウィシアもセレーネが何かしたんじゃないかと疑っていたが。

「クロノスがセリアを気に入ったんでしょう。すべてセリアのせいにしようとした。その仕返しに、エホノの精霊に飢えない程度不作になるよう頼んだか、脅した」

 精霊もクロノスに頼まれては。

 面倒なのに気に入られて。



 馬車に揺られ、イルヤへ。

 レネウィ、セリアはリーフトへ行く道中と同じ、馬車の窓に張り付き、外を見ていた。ラシーヴィも二人の真似まねをして、外を見ている。わかっていないのだろうが言葉も真似して。

「イルヤにも精霊はいるの?」

「いますよ。リーフトよりそこら辺を歩いているわ」

「また連れ去られるなよ」

 一緒にさらわれかけたレネウィが釘を刺す。

「う」

「セリアくらいの年齢だと助けを呼べるし、慌てず精霊と話せば帰してくれるけど、問題は」

「話せないルセオ、か」

「たぶん、精霊は魔力の有無で選んでいるから、ルセオは大丈夫。ラシーヴィにも誰かついていれば、慌てず、家に帰してくださいって頼めば」

「帰してくれるの?」

「何日後になるか」

「くれないのぉ」

 セリアは顔を歪めている。

「あれがいれば大丈夫でしょうけど」

「あれ?」

 セリア、レネウィは首を傾げている。

「連れていかれても大丈夫なようにしているから」

 セレーネは笑って二人を見た。

「あ、そうそう、カーバンクルの話は内緒」

 右人差し指を口元にあてる。

「どうして?」

「カーバンクルの額に赤い宝石があったでしょう」

 セリアは大きく頷いている。

「あれを手にした者は巨万の富と幸福を得られる、と言われていてね。狙われているの」

「え」

「だから契約者に強い人を選ぶ。宝石を気にせず、護ってくれる人を。カーバンクルの宝石を手に入れようと船にもぐり込んだ人もいるけど、返り討ち。でも国単位でこられたら」

 勝てるかどうか。

「そうなれば、カーバンクルとは二度と会えない。イザークの船もどうなるか。商売しませんって断られるかもしれない。そして、色んな国から入ってきているものが」

「入らなくなるのですね」

 レネウィの言葉に頷く。

「精霊同士の伝達網もあるから、誰が話したのかも」

「言わない。話さない。会えなくなるのは、嫌われたくない」

 セリアは首を大きく左右に振っている。

「ぼくやセリアは大丈夫ですけど」

 レネウィはラシーヴィを見ている。

「ああ、ラシーヴィは誤魔化せるから」

「ごまかせる?」

「私が教えた精霊の名前を適当に口にしている。知っているのはカーバンクルだけじゃないでしょう」

「ウンディーネやシルフ達のこと」

「そう。だから名前だけ知っていると誤魔化せる。カーバンクルに会ったのか、どこにいるってラシーヴィに詰め寄っても泣くだけ。でも、あなた達だとしっかりしているから、居場所を知っているかもしれないと」

 詰め寄る。懐柔かいじゅうしようと。

「カーバンクルは物語にもなっているから」

「あ、読みました。額に赤い宝石をつけた不思議な動物のお話ですよね」

「そんな本あるの」

「図書室にあったよ」

「どんな話か教えて。あ、クロノスは」

「別に隠さなくても、もう話しているし。カーバンクルよりらえるのは難しい。本来の姿は知らないしね。つかまえても、スカビオサやウンディーネ達が捕らえた人を叩きのめす。運が悪ければその一帯が吹き飛ぶから」

「笑顔でさらりと言うな」

 レウィシアのつっこみが入る。

「アンも言っていたでしょう。滅多に人前に姿を見せない、レア中のレアって。だから大丈夫」

「精霊の話はそこまで。リーフトと違って遊びに行くんじゃない。行儀よく、大人しく。わかっているな」

 レウィシアの言葉に頷く三人。レネウィ、セリアはわかっているだろうが、ラシーヴィは二人の真似をして。

「お菓子や珍しい精霊に会わせてやる、と言われてもついて行くんじゃないぞ」

 行方不明が出ている、と話していた。人の仕業だと思うが。老若男女。万が一ということも。

「何度も聞きました」

 セリアは聞き飽きた、と言わんばかり。

「何度も言わないと浮かれて忘れるだろ」

 セリアはレネウィをぽかぽか。

「わたし達より、父さまが気をつけなくてはならないのでは」

 レウィシアは首を傾げている。

「若い女性にゆうわく」

「されない」

「シアの子。根に持っていますね」

「父様はセレーネがいないと生きていけない」

 そう言うと抱きついてきた。

「子供の前で何を言って、やっているんです」

 ラシーヴィは真似して、レネウィに抱きついていた。


 リーフトへ行く道中と同じ。騒ぎ疲れた子供達は眠っている。隅に置いていた上掛けを対面で眠っている四人へ。

「かあ、さま」

「起こした?」

 レネウィは寝ぼけ眼。

「ぼくの、いちばんも、かあさまです。とうさまのように、おおきく、りっぱになって、かあさまをまもります」

「ありがとう」

 上掛けをかけ、頭を撫でると、まぶたは落ち。

 レウィシアの幼い頃もこんな感じだったのか。小さく笑うと、後ろから引かれ、レウィシアの膝の上に。

「子供の寝言ですよ。しかも実の息子」

「油断も隙もない」

「ああ言ってくれるのも今だけですよ。いずれ自分だけの人を見つけます」

「ああ」

「一人ならいいですけど、二人、三人と見つければどうしましょう」

「……本人に任せる」

 冗談だったのだが。

「好きな人と結ばれてくれれば、一番いいんですけど」

 国内外から嫁に、とくる。国内ではもう火花を飛び散らせている。

「国が安定していれば大丈夫だろう。そうなるよう、努力はする」

 磐石ばんじゃくな状態でレネウィに王位を譲れるよう。

「そうですね」

「セレーネがいないと生きていけないのも本当だ」

 右肩へと額を押し付けてくる。腹に回っている両腕には力が入り。

「セレーネがいなければ、今どうなっていたか。こうしていられるのも、セレーネがいたから」

「何度も言いますが私だけの力ではありません」

 大勢の人に支えられ。

「わかっている。だが、セレーネがいたから、この子達がいる。この子達に俺と同じ思いをさせたくない。特にラシーヴィ、ルセオ」

 レウィシアはラシーヴィくらいの年に母を失っている。

「大丈夫ですよ」

 セレーネは安心させるように笑って、腹に回されている手に触れた。



「お久しぶり、セレーネ。そして、初めまして、グラナティスの王。わたくしはスティカ・ミスト・イルヤ」

 玉座には五十代後半の厳格そうな女王。背筋をぴん、と伸ばししている。その膝には白黒の毛長の猫。

 久しぶり、というが十年以上ぶり。記憶と違う部分も。それ以前に結婚してから色々あり、そちらが強すぎて。

「初めまして、レウィシア・オルディネ・グラナティスです。この度はお招きいただき」

 レウィシアは頭を下げる。

「妻は紹介せずとも。これは第一王子のレネウィ、第一王女セリア、第二王子ラシーヴィ、第三王子ルセオ」

 レネウィとセリアは緊張した面持おももちで頭を下げている。ラシーヴィは勝手に動かないようレウィシアが、ルセオはセレーネが抱えていた。

 女王の傍にはアンスリウム。その傍には婚約者。さらに体格のいい男、女王の息子であり、アンスリウムの兄が。臣下も控えている。

 女王は小さく息を吐く。

「本当だったのね」

「?」

「ごめんなさい。アンから四人の子供がいると聞いていたのだけど、信じ切れなくて。四人とも」

「私の子です」

 厳格さはどこへ。女王は再び、今度は長々と残念そうな息。控えている臣下の中には似たような者も。

「気にしないでください」

 気にならないわけはないだろうが、レウィシアを見た。

「アンもお母様も義務で子供一人生んで、あとは自由にあちこち行っていると考えていたんだ」

「お兄様は黙っていて」

 アンスリウムは兄を睨む。

「本当のことだろ。最近噂を聞かなくなっていたからな。何年前だったか、フェンリルの件に関わっていたとか。そんで精霊から情報を集めて、ヴィリロの姫だってわかって、グラナティスに嫁いだともわかって」

 兄は相変わらずのようだ。

「この数年、この辺りは平和、というか自分達でなんとかできていたからな」

「それをお兄様が壊してくれて」

「悪かったって。反省している」

 ばつが悪そうに。

「そう見えない」

「ここには旅の魔法使いとして来ていましたので」

「国で雇いたかったのですけど。ふられてしまって」

「お兄様との結婚が嫌だったのでしょう。お母様はあわよくばって考えていたみたいだったけど」

「おれもごめんだ」

 うんざり、んべっ、と舌まで出された。レウィシア達はぽかん。

「陛下」

 こほん、と臣下のわざとらしい咳払い。

「ああ。ごめんなさい」

「ラシーヴィ?」

 レウィシアの腕のラシーヴィは女王の傍にいる猫をじっと見て、手を伸ばしている。

「気になるのかしら、この子が」

 女王は膝の猫を撫でる。

「触る?」

 ラシーヴィは大きく頷いている。セリアはうらやましそうに。

「よろしいので」

「ええ、かまいませんよ。お嬢さんも」

 女王は膝から床へと猫を下ろした。猫は女王から離れた床で大人しく、澄ました顔。

「さすがセレーネの子、と言うべきかしらね」

 レウィシアとセリアはセレーネを見る。大丈夫か、という許可。セレーネは頷いた。

「セリア」

 レウィシアは任せた、と言わんばかりにラシーヴィを床に下ろし、セリアはラシーヴィと手をつないで猫の傍へ。

「ふわふわ」

 セリアはそっと触れ、ラシーヴィは耳をぎゅっ、手を離せば尾を。

「ラシーヴィ、もう少し優しく」

 セリアがラシーヴィに手を添え、こうするの、と撫でていたが、ヒゲを引っ張ると、猫はセレーネに一直線。

「どういう育て方をしているにゃ! 大人しくしていたら、あっちこっちと引っにゃって!」

「子供は手加減ができないから」

 セレーネはにこにこしながら、二本足で立ち、セレーネに向かって怒鳴る猫を見た。子供のような高い声。

「にゃ!」

「ラシーヴィ」

 セリアの声。見るとラシーヴィは猫を追いかけ、尾を摑んで笑っている。

「ぐぅぅぅ、セレーネの子。手加減を知らにゃいのにゃ」

「旦那の子でもあるけど」

 セレーネはレウィシアを指す。

「うにぃぃぃぃ」

 話している間もラシーヴィはあちこち触れていた。

「精霊なの?」

「そう。ケット・シー。尾を見て、二股になっているでしょう」

 セリアは猫、ケット・シーの近くへ。

「この国では猫の近くで内緒話するなって言われているの」

「なぜ」

「ケット・シーは猫の言葉もわかるから。秘密、内緒の話を猫の近くでしていたら、その猫がケット・シーに話して、ケット・シーが人に話せば。猫はどこにでもいるから」

「一般人の内緒話まで聞きたいとは思わないって。それに、気まぐれなのは知っているでしょう。いたり、いなかったり。まぁ、今回はセレーネの居場所を調べてって頼んだけど」

「それも仕方にゃい。今の状況では」

 行方不明に森の主。

「今回の件、ケット・シーでも調べられなかったのですか?」

「それをやるなら一般人のちょっとした話、噂、嘘なんかまで確かめなければいけないから、大変なんだって」

 アンスリウムは疲れたように。

「ああ」とセレーネは納得。そして噂に踊らされたのは。ちらりと兄を見た。ぱっと見、包帯は巻かれていない。顔にも傷はなく、顔色も良い。

「に、に、に」

 ケット・シーは爪を出さず、ラシーヴィをぺしぺしと。子供の扱いに慣れている。ラシーヴィも遊んでもらっていると思っているのだろう。笑っている。

「精霊は無理だけど、猫や犬、鳥なら飼っても」

 レウィシアを見た。

「自分で面倒見られるのなら」

「そうなりますよね。ご飯に排泄」

 生き物だから。犬なら散歩も。城内の、使用人、臣下の邪魔にならない所でなら放し飼いも。

「グラナティスに精霊はいないの?」

「特殊な地なので。城辺りはいません」

「あの地は四大精霊といかにゃいまでも、力の大きな精霊に護られているにゃ。そんじょそこらの精霊は近づかにゃい」

 ケット・シーは首を左右に振っている。

「城から離れた場所にはいますよ」

「力の及ばにゃい所にゃ」

「お嬢ちゃんはその護っている精霊、見たことないの?」

 アンスリウムはセリアに。

「ありません」

「正確には初代と契約していた精霊です。グラナティス建国の力になったようですよ。今は、初代と共に眠っています」

「精霊と契約していれば」

 アンスリウムは小さく肩をすくめている。

「契約していないの、ですか」

「わたしは魔法使いじゃないから。魔法使いでなくとも契約できるみたいだけど、していないわ」

「それじゃあ、この子は」

「ただ居るだけ。さっきも言ったけど、気まぐれで。居たり居なかったり。他の精霊もいるし。契約している魔法使いもいる。それより」

「それより?」

 セリアは首を傾げている。

「セレーネがなんの精霊とも契約していないのが不思議」

「なぜです」

「契約できる力を持っているのにしないから。セレーネなら、ウンディーネ、ノームあたりと契約できるんじゃない」

「精霊の頂点ですよ」

「できない、とは言わないのね」

「サラマンダーに喧嘩けんか売ったしにゃ」

「売っていない」

 ケット・シーを睨んだ。

「サラマンダーって、炎系の頂点の。一番気難しく、契約するのも難しいと言われているものに。うわぁ」

 セリア、レネウィは初めて聞く話に目をぱちくり。

「逃がした魚は大きかったようね。そして別の大きな魚に」

「女王陛下まで何を」

 セレーネは眉間を揉む。

「母さまはなぜ精霊とけいやくしなかったの」

「していたら、グラナティスを護っている精霊に嫌われていたかもしれないわね」

「にゃははは、それはいい」

「ラシーヴィ、潰していいですよ」

「にゃ!」

 ラシーヴィは手を上げ、ケット・シーに向けて振り下ろす。動きが大きいので読みやすく、ケット・シーは軽々避けた。

「精霊の力を借りず、自分の力でどこまでやれるか試したかった。自分の限界を知り、それを越えたかった」

 何にも頼らず、自らの力だけで。

「自分の力?」

「精霊と契約して力を借りれば楽なこともあるけれど、利用されないとも限らない。特に水や土は農作物なんかに多大な影響を与えるから」

「戦とかも、でしょ。力があるなら前線に出されてもおかしくないわ」

「アンの言う通り。私も、だけど、契約した精霊を利用されたくない。道具として見てほしくない。もし、セリアが精霊と契約して、その力を知っている人達に、ああしてくれ、こうしてくれって集まってこられたら。それが自分の望んでいない、人を傷つけることなら。自分ではなく精霊が手を下すのだとしても。そしてそれを指示するのは」

 契約者。

「さらに言えば、セリアでなく精霊しか見なかったら」

「利用されたくないから、母様は契約しなかったのですか。できるのに」

「そうね。一番は、面倒くさかったから」

「……」

「そう言えるのはセレーネだけよ。どれだけの魔法使いが精霊と契約したがっているか」

「そのためにまず精霊の出す試練にクリアしなければならないでしょう。クリアしても精霊が従ってくれるかは別。嫌になれば契約者の命を狙う。面倒でしょう。だったら、精霊どついて、仲良くなれば」

「どついて仲良くなれるかは疑問ね」

 アンスリウムは呆れている。呆れているのはアンスリウムだけではない。

「鍛えられもしますよ。これぞ一石二鳥」

「考え方は人それぞれ、てやつね。お嬢ちゃんはどうなるのかしら。魔力はあるのでしょう」

 アンスリウムはセリアを見ている。セリアは小さく頷く。

「クロノスにも会ったみたいだし、セレーネから色々教えられていれば。将来有望」

「クロノスに会ったのですか」

 女王の驚いた声。

「みたいよ。わたしとは入れ違いで。もう少し早く行っていれば」

「にゃんだ、また面倒ごと押し付けられたかにゃ」

 ケット・シーはラシーヴィの手から逃れようと動いている。

「クロノスを知っているのですか」

 セリアは恐る恐る。

「祖母の時代にクロノスがこの国の魔法使いの元に魔獣封印の協力をしてほしい、と現れたそうです。ですが現れたのは一度きり、と」

「一度きりとは羨ましい。私なんか度々たびたび

 スカビオサはさらに、だろう。

「こういうの贅沢ぜいたくって言うのかしら」

 アンスリウムの視線はセレーネに。

「それだけクロノスに腕を見込まれ、信用されているのでしょう」

 女王は再び息を吐く。逃した魚は、と再び考えているのだろう。

「でも」と小さく呟き、セリアを見ている。見られたセリアは小さく首を傾げていた。次の、今は小さな魚に狙いをつけたか。

「はいはい、この話は終わり。それで、セレーネ達はこの後どうするの」

 アンスリウムは、ぱん、と手を打った。

「夕食まで町を歩こうかと」

 半日だが。

「それは明日にしたら」

 アンスリウムは背後を指す。

「?」と首を傾げながら背後を見ると、部屋の入り口にこの国の魔法使いが目をぎらつかせて。

「……あれは」

「セレーネが来るって言ったら、あの状態。まだかまだかと待っていたの」

 つまり、魔法についての様々な質問。

「戴冠式と結婚式は五日後。余裕を持って来たのでしょう」

 アンスリウムの言う通り。こちらの価格、流行を調べたかった。

「シアはどうします」

「子供達の面倒でも」

「そっちはそっちで待ち構えているのがいるわよ」

「「え」」

 レウィシアと揃って

「若い女の人?」

「セリア」

 レウィシアは慌て。いつまで根に持ち続けるのか。

「うちの臣下達。グラナティスと取引、商売できるのなら。リーフトとも繋がりがあるのでしょう。上手くいけば、こちらも」

 アンスリウムはにやり。時期女王なのに商売人。

「それなら、明日一日町をじっくり回るとしましょう。アンのことだから森の主を戴冠式までになんとかしてくれ、とせっついてくるかと」

「そうしてくれるとありがたいわ。戴冠と同時に発表できるから。でも焦りすぎてもね。滞在中に解決してくれれば、それでいいわ」

「子供達はどうする」

「ケット・シーに任せましょう」

「うにゃぁぁんだと」

「天気もいいので庭に猫がいると思います。運が良ければ精霊も。そこで遊んでもらっていれば。ケット・シーがいるので、精霊のいたずらで連れ去られても猫に聞けばわかります」

「そんなことさせないって。外交問題になるじゃない。うちはそちらとの繋がりを潰したくないもの。ケット・シーに相手させるけど、離れた場所に兵も置くわ。念のため」

「アンまでぇぇ」

「あれ、とはケット・シーのことだったのか」

 尋ねてきたレウィシアに笑顔で頷き返す。

 セレーネはポケットに手を入れ、小さな紙袋を出し、その中のものを手の平に。

「にゃ! そ、それは」

 ケット・シーはセレーネの手にあるものをじっと。

「上等のマタタビ」

「くれるのにゃ、くれるのにゃ」

 セレーネの周りをぐるぐる。

「遊び相手、見ていてくれるのなら」

「くれるのにゃ」

「もう一つ」

 傍にある荷物の中から瓶を取り出す。

「マタタビ酒」

「にゃんと」

 ふたを開け、ケット・シーの鼻先に。

「にゃぁぁぁん」

 ふにゃんとした顔に。

「こっちは夕食時に。ケット・シーがいるのならお土産みやげに、と持ってきたものだから」

 蓋を閉める。

「今くれにゃいのか!」

「酔っ払った状態で子供の面倒見られないでしょう。レネウィ」

 マタタビを袋に戻す。

「ちゃんと庭まで案内したら、ケット・シーにあげて。案内せず、ほったらかしなら、セリアに言って燃やして」

「もったいにゃぃぃぃ」

 ケット・シーはセレーネの服の裾にしがみついてくる。

「使い方、わかっているわね」

 アンスリウムは呆れをにじませ。

 袋をレネウィに。

「それと、ラシーヴィは手加減ができないから注意してね。ケット・シーと違って普通の猫は話せないし、嫌なことされたら、かみついたり引っ掻いたりするから」

 レネウィとセリアを見た。

「わかりました」

 レネウィは頷き、セリアも大きく首を縦に振る。

「ルセオはどうする」

「私が見ています。泣き出せば中断か抜け出せます。シアの話し合いより早く終わりますよ」

 質問、疑問に答えるだけ。

「わかった」

「決まったみたいね。それじゃあ、それぞれの部屋へ」

 話し合いはここではないらしい。アンスリウムは子供達に兵をつけてくれるが、こちらからも。今回はユーフォルもついてきている。レウィシアはアルーラに子供達を任せ、ユーフォルをともない、アンスリウム、女王と一緒に。

「それと、これを」

 さすがに大きなクマのぬいぐるみを持っているのは不自然。しかし、小さなウサギのぬいぐるみなら。

 こちらはセリアが受け取る。

「お父様より私が早く終わると思うから」

「はい」

 レネウィ、セリアはラシーヴィの手を取り、ケット・シーの後を。その後ろにアルーラ。

 セレーネは待ち構えている魔法使いの元へ。


「お疲れですね」

 レウィシアはソファーでぐったり。気を張っていたのもあったのだろう。

 セレーネはあの後、魔法使い達に質問責め。新しい魔法を考えたが上手く発動しない、この魔法書の解釈、精霊について、等々。もちろん答えられないものもあった。

 グラナティス、ヴィリロ、リーフトでは魔法使い、だけではないが交換留学をおこなっている。この国もその中に。レウィシア、女王と相談になるだろう。セレーネの判断では決められない。女王は大賛成しそうな気が。

 話し終わり、庭に行くと、猫に囲まれたレネウィ達。猫まみれのセリアは嬉しそうに。レネウィはラシーヴィと一緒。近くにはケット・シーが。セレーネもルセオと一緒に少しの時間、猫に囲まれていた。

 レウィシアと会ったのは夕食の席。女王一家と夕食。そこでも女王、アンスリウム、レウィシアは話し合い。兄も一緒だったが、興味ないのか話についていけないのか黙って食事。ケット・シーはお土産に、と持ってきたマタタビ酒を渡すと、素早く開け、グラスに入れて飲んでいた。

 用意された部屋に案内されればレウィシアはソファーでぐったり。

「お茶でもれましょうか?」

 食後も出されたが。

 部屋は広く、一家で使えるようになっている。

「エホノの姫より上手だ」

「そうですか」

 クラシー姫とはどのような話をしていたのかさっぱり。思い返せばそれほど話していないような。それまでも令嬢達にお茶などに誘われ、自分がどれだけ優れているか、自慢話を聞かされていた。レネウィが生まれてからはそれもなくなり。クラシー姫とは夕食を何度か一緒に。レウィシアとばかり話していたような。レネウィ、セリアはいい顔をせず、セレーネはラシーヴィ、ルセオの食事に手を取られ。

「明日はどうします。話し合いが続くなら」

「行く」

 即答。

「それなら森に行くのは明後日にします」

「ああ。明後日も話し合い、だろう。半日、もなかったから。話もまとまらず。面倒はこちらで見ていよう。とはいえ、見るのはアルーラとこの国の者になるが」

「せっかくまとまった話を潰すことはないでしょう」

 子供達に何かあれば、取引は。

「臣下、貴族の子供に会わせたいそうだ」

「嫁、婿候補、ですか。他国の子連れの方も参加しそうですね」

 セレーネは小さく笑う。レネウィは内心嫌だろう。ラシーヴィ、ルセオは早すぎる。セリアはヴェルテに入れ知恵でもされているのか、言い負かして。

「他国の王族の子供に抜け駆けされても。それなら一緒に会わせてしまえばいい、か」

 レウィシアも小さく笑う。

「戴冠式は五日後だったな」

「ええ、続けて結婚式。両方出るのでしょう」

「ああ」

 そのため国内外から人が集まる。もう来ている他国の王族もいる、と魔法使い達が話していた。物騒な事件も起こっているので、警備は厳重だとか。

「母さま、明日は町を歩くの」

 部屋の中を見て回っていたセリアが飛びついてきた。

「そうよ。人が多いから、気をつけてね」

「はあい」

 元気のいい返事。

「そうれはそうとセリア。父様ばかり言うが、母様が若い男に誘惑されたら」

 何を言い出すのか。

「そうなれば父さまが権力使って、母さまにないしょでまっさつするでしょ」

 ヴェルテ。吹き込んだ女の名を声を出さず、呼ぶ。

「母さまも、父さまが本気になれば相手の女の人を魔法でしまつしかねないって」

「ヴェルテ! 子供に何を吹き込んで!」

 今度会った時は。

「そうか」

 レウィシアは笑っている。

「でも、母さまは父さまが女の人と仲良くしていてなんとも思わないの」

「父様がかっこいいのはわかっているから、そんなことで怒っていたら今頃、城、お家はないわね」

「かっこいいと言ってくれるのはセレーネだけだ。これのせいでセレーネ以外には逃げられていたからな」

 レウィシアは髪をかきあげ、火傷痕を見せる。子供達は何も言わない、怖がりもしない。

「さて、明日にそなえて休むか。半日が一日になったからな。あちこち行きたいだろう」

 自由に歩けるのは明日一日だけになるだろう。レウィシアは話し合い。セレーネも森の主の説得。終われば子供達を見なければ。魔法使い達の質問もあれで終わりではない。楽しめる時間は限られている。

「「もちろん」」

 セリアと声を揃えて返した。


 十年以上ぶりの町は変わった所もあれば、ない所も。猫は相変わらずそこらに。

 グラナティスともヴィリロとも違う町並みにレネウィとセリアはきょろきょろ。あれは、これは、とあちこちへ。セレーネは住人の会話にも耳を澄ませていた。

 めでたい、という声が多いが、やはり不安の声も。十日前に誰がいなくなった。親戚の家へ行っているだけ。何日前にいなくなったと思われた者が帰ってきた。人騒がせな。近隣の王族がくる。目に留まれば、とはしゃいでいる年頃の娘も。

 リーフト同様、一日楽しみ、戻ってくればはしゃいだ子供達は夕食時にうつらうつら。



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