第31話
邸に入れるな、と言ったにもかかわらず、毎日来る領主と女。二人を援護する領主、貴族も。彼らが連れて邸へと入って来る。
仕事は進まず苛立つ一方。
邸に入れば女は我が物顔で茶や食事の用意。一切手はつけず、本人や領主、貴族に片付けさせた。最初は女に同情的、側室にでも、と
セレーネとは会えていない。仕上がった書類は机に。セレーネに渡そうと、自ら持って行こうと分けていたものもいつの間にか机から消えて。部屋にも戻っていない。なぜ戻っていない。同じ屋根の下にいるのになぜ会えない。
今日も。領主と女、一緒に来た貴族のくだらない話。扉の叩かれる音に、
「入れ」
低く返す。
「陛下! 話はまだ終わっておりません。兵は何をしている。入れるな!」
「失礼します。戻りました。あと、お客様ですよ」
聞こえていたのだろう。アルーラは小さく顔を
「オーウェン老」
レウィシアは立ち上がる。
「久しぶりだな。レウィ坊や」
「その呼び方はやめてください。何歳になったと」
力が抜け、がくりと肩を落とす。
「わしにしてみれば、いつまでも坊やだ。なぁ、ルーラ坊」
「おれもその呼び方やめてほしいです」
アルーラも肩を落とす。オーウェン老は八十歳。レウィシア、アルーラなど若造もいいところ。
「落ち着けば訪ねようと」
席を空けろ、と居座る領主、貴族に手を振る。二人は苦々しい顔を隠しもせず、ソファーから立ち上がった。
「わしも落ち着いてから来ようと考えて、な。今日来た」
まだ落ち着いていないが。オーウェン老はソファーへ。レウィシアも対面のソファーに座る。
「アルーラ、お茶の用意を」
「それならエルエットが向かいました」
領主は強調するように。
「アルーラ、行ってくれ」
「陛下? 」「レウィ坊?」
「信用できない者に任せられない」
「陛下、エルエットは陛下のために」
「押し付けられただけ。こちらは迷惑している」
「あ~、それでセレーネ様は勘違いして」
「セレーネ様?」
「会ったのか」
レウィシアはアルーラを見た。
「ええ。途中で。それでこの部屋の前で兵が来客中だとオーウェン様を帰そうとしていたところにばったり。セレーネ様に会わなければ」
追い返されていた。レウィシアは領主、貴族を睨む。貴族は「ひっ」と小さく声を上げ。
「レウィ坊、セレーネ様とは」
「妻です」
「そういえば結婚したのだったな。式には行けなかったが、確か、ヴィリロの者」
「人質だと聞いていますよ。そのため陛下のお世話はエルエットがすべて」
「黙れ、妻だ」
レウィシアは口を挟んだ領主を再び睨む。
「最近会っていないと言っていましたけど」
「ああ。会えていない」
「はぁ?」とガウラの小さな声。邸にいる者は会っていないなど思ってもいないだろう。
「そんな目で見ないでください」
「どんな目だ」
「
自分では見えないからわからない。
「ファイアーリヒの者が手伝いに来ていますが」
「ファイアーリヒ」
レウィシアは繰り返す。
「ええ。陛下の許可をとっていると」
ファイアーリヒはレウィシアが会いたい領主の一人。しかし、会った覚えは。
「……まさか、会っていない、許可していんないんじゃ」
困惑が顔に出ていたのだろう。アルーラは「ありゃー」と右手で顔を
「ファイアーリヒは息子が一人。その息子が手伝いに来ているのか?」
「息子」
オーウェン老の言葉にぴくりと反応。
「ああ、父親と違い、気が弱い息子だ。二十二歳、だったと思うが」
オーウェン老は名家。顔も広く、人望もある。叔父はよく思っていなかったが、オーウェン老は隠居していたため、何もしなかった。できなかった、が正しい。叔父の味方をしていた者もオーウェン老をよく思っていない。
女は用意した茶をオーウェン老、レウィシアの前へ。オーウェン老は礼を。
「陛下の目を盗んで男遊び、ですか。とても王妃に相応しいとは」
「黙れ! セレーネがそんなことするか!」
「仕事を手伝ってもらっているのでしょう。これを見れば」
アルーラの目は机の上や下に積み上がっている書類に。
男と二人。腰を浮かせかけ。
「落ち着け、レウィ坊」
「落ち着いています」
オーウェン老の静かな声に浮かせかけた腰を下ろす。今なら部屋にいる。今なら会える。
「どこが落ち着いている。ところで、仕事とは」
「書類の整理を手伝ってくれています。同じ意見だったり、全く違う意見だったり。はっきり言ってくれるので。なんでも俺が正しい。俺のやることに間違いはない、と言う者より余程」
「我々も言っています。陛下が聞いてくれないだけで」
「ああ。嘘の税を言い、さらに上げろ、と自分達の利益ばかり。民を考えもしない」
「それはいかんな。ただでさえ困窮している者もおるのに」
オーウェン老は領主、貴族をちらりと見た。
「ふむ。ヴィリロも一時揉めていたが、素早く混乱を収めた。それに現王は。知っているか、模擬戦を申し込んだこと」
「ええ。祖父の時代に模擬戦を申し込み、負けた。そして今回、叔父は攻め」
「負けた。腕は
満足そうに頷いている。
「挨拶に行くか。坊は気になって仕方がないようだしのう」
レウィシアは短く呻いた。
「オーウェン様がお会いになるような方では。それに向かうなど。呼べばよろしいでしょう」
「仕事中なのだろ。それにレウィ坊がこれほど気にしているとは」
そわそわしているのは気づかれている。
「男を殺さないでくださいよ」
アルーラを睨んだ。
「べた惚れなのだな。どんな者か、ますます会いたくなったわ」
オーウェン老は相好を崩している。領主と貴族は苦々しい顔。
部屋を出て、セレーネの部屋へぞろぞろ向かっていると。
「お二人の言う通りだったな」
「ああ」
レウィシアとセレーネの部屋の間には階段がある。その階段近くで話している男二人。
「陛下は部屋に
「血は争えない、か。女に金。治めているというが、臣下が上手く治め、城でも似たように過ごしているのでは」
足が止まる。
「会う貴族もルヴォノ様に媚を売っていた腰巾着ばかりと聞く。他の者は来客中と追い返され、陛下はそいつらの言いなり、だそうだ」
「グラナティスも終わりか」
「かもしれんな。かわいそうなのは陛下を信じている、いや
「怒鳴り込んだ貴族もいたとか」
「ああ、聞いた。黙って話を聞いて謝っていた、とも」
レウィシアは息を呑む。
「今は税を戻す、と言っているが、いつ気が変わり、増やされるか」
「そうなれば領主、貴族だけでなく、今度こそ民も黙っていない」
「そのための王妃様、か」
「どういうことだ」
「陛下は紹介された女に夢中。誰かに任せて、いつか城へ帰る。それなら王妃様に残ってもらい、治めてもらう」
「だが女の言いなりなら」
「一部の貴族だ。お二人が言いくるめるだろう。他の者もお二人につく。王妃様に治めさせろと署名すれば。そうでなければ、なぜ我々に教える。まともに対応してくれない王より、まともに対応してくれ、治めてくれる者。どちらにつく」
息を吐く音。
「それにいざという時はヴィリロと挟み撃ちできる。まともに治められない王。向こうも不満のある者はいるだろう。近隣の国も協力してくれる。領土はそれぞれ分けられるだろうが。腐っていくよりは」
「そうだな」
「陛下」
色々な意味が込められ、それぞれが呼ぶ。
「それに、あのクリサム殿」
「ああ、見違えたな。笑ってしまったが」
思い出しているのか笑っている。
「まだおどおどしていたが」
「あの方が見込みのない者に息子を預けるか」
「っ」
「あの方にすれば息子がああだから、しっかりした嫁が欲しいのだろう。その点王妃様は」
「しっかり、というのか? だが話は真剣に聞いてくれたな」
「この目で見るまでは疑っていたが、本当に聞いた通りだったな。陛下のことも」
「陛下は真面目に仕事をされています! 勝手なことを言わないでください!」
女が話している二人の前へ。そこで二人はレウィシア達に気づく。
「これは陛下。いらしたのですか」
馬鹿にした言い方。
「お前達! 陛下に向かって」
領主も叫ぶ。
「陛下、あの王妃、いえ、女こそ国を
「あの方は我々の話を真剣に聞いてくれましたよ。部屋に籠もりっぱなしで、その女の言いなりになり、ルヴォノ様のお気に入りの方しか会わない陛下より、分け
「無礼な! 陛下、このような者達など」
「これは失礼しました。陛下」
「陛下」
心配するように傍に来る女。
「なぜ、謝る」
これがレウィシアのしてきたこと。
「陛下?」
領主は怪訝そうに。
「なぜ謝る。謝るのは俺だ。お前達が来ていたことにも気づかず、先に来た者ばかり優先して話を聞いていた」
兵に誰が来たか記録しておけと、セレーネのように緊急ならいつでも入れろ、と伝えていなかった。レウィシアのミス。
「すまなかった」
レウィシアは二人に頭を下げる。
「陛下、陛下が頭を下げるなど、勝手を言っていたのはこの者達で」
領主の言葉に二人は呆れているだろう。レウィシアは頭を下げ続けているので二人の顔は見えない。しかし容易に想像はつく。
「すまん。今日はわしが来ていたから」
「オーウェン様」
「わしと話していたから、わしからも謝ろう。じゃから、許してやってくれんか」
オーウェン老まで頭を下げる。
「頭を下げるのは俺です。オーウェン老がそんなこと」
二人は困惑しながら顔を見合わせていた。
「わしも今からその王妃様に会いに行こうと。わしの話は終わった。今から坊と話すか? それと坊はちゃんと仕事しておる。紙に埋もれかけている姿は見たからの」
なごますための冗談だろう。オーウェン老はレウィシアの腰のあたりをぽんぽんと叩いている。
「いえ、結構です。お話はしました。王妃様からお話があるでしょう。あれば、ですが」
最後はぼそりと。
「失礼します、オーウェン様、陛下」
二人は頭を下げ、階段を下りていく。
「陛下」
女の心配そうな声。
「なんだ、あの無礼者は。貴族の位を剥奪してやりましょう。陛下に逆らえばどうなるか」
「知って、いたのですか」
「陛下?」
「俺が仕事もせず、女と部屋に籠もり、叔父のお気に入りの貴族としか会っていない、と。知っていたのですか」
「……噂で、な。坊がそんなことするはずない、と。予定を繰り上げ、来た」
「一部の貴族の間でそう噂されています。おれも否定はしました」
アルーラの耳にまで。
「あの、陛下がそのようなことをしていないのは知っています。ですから、お気になさらず」
女は笑顔で見上げてくる。
「そうです。我々は知っています。陛下がどれだけ忙しいかを。それにしてもあの女。陛下が見ていないのをいいことに、勝手を。そんな女、追い出すべきです」
その原因を作ったのは。これは八つ当たり。そう思わせたレウィシアのせい。あれもこれもと、やることが、やらなければと周りが見えていなかった。
「そんなに俺の傍にいたいのか」
レウィシアは女を見た。女は恥ずかしそうにレウィシアから視線を外す。その口が動く。
「死んでもいいなら好きにしろ。そして俺は一切責任を取らない。金も払わない。お前が勝手にいるのだからな」
「え?」
再びレウィシアへと視線を戻す。戸惑いを浮かべて。
「陛下、それはどういう」
「どういう。お前達は今、どういう状態かわかっているのか」
領主と貴族を見た。
「叔父の残党がまだ俺を狙っている。だから護衛がいる。残党だけではない。お前達との仲を疑い、さらに税を、横暴なことを言われるのでは、と新たに俺を排除する者も出てくるかもしれない」
ガウラ、ハロートは常にレウィシアの傍に。一人で大丈夫だと言っても、どこに行くにもついてくる。一人になれるのは部屋だけ。部屋の前にも護衛の兵を置いている。セレーネ以外入れるな、と強く言って。女がレウィシアの部屋にいたのは一度や二度ではない。
「知れ渡っているのなら、お前も狙われる、巻き込まれる。何かあっても、一切責任は取らない。金を出すことも。こんな傷を負っても責任は取らない」
レウィシアは髪をかきあげ、顔の火傷痕を見せた。女は固まり、領主、貴族は息を呑む。
隠していた。知っている者もいるが二年間、交流がなかった。そしてその間に貴族、領主は交代し。レウィシアが火傷を負っていることを知らない者も。ちらちら見えていたのだろうが、はっきり見せたのは初めて。
「それでいいなら、勝手にしろ。ああ、一筆書いてもらう。言葉だけでは言った、言わないになるからな。そして俺は妃としてお前を迎える気は一切ない」
きっぱりと言い切る。
「坊」
冷たい言い方が気の毒になったのか、オーウェン老が口を挟む。
「すいません。こんなことに巻き込んで」
「いや、それはかまわんが。この者は坊をかばった。わしが口を挟むべきではないが」
「何も感じない、思わないのですよ。名前すら覚えていない。触れたいとも」
「陛下、それは」
領主は声をあげ、女は息を呑む。
「だが王妃様は」
「セレーネだけです。心が動くのは。だから何人紹介されようと」
無駄。レウィシアは息を吐く。
「結婚は
想っていた、好意もあった。だが、それどころではなくなり。再会して、
レウィシア自身を想ってくれていても、レウィシアにはそれが本物かわからない。火傷を負い、戦で傷つき、化け物と言われ続けてきた。
セレーネに会っていなければ、再会していなければ、王族の義務だとすべて呑み込んだ。たとえ生まれた子がレウィシアの血を引いていなくても。その場合、この剣には触れないが。だが、会った。再会して、結婚できた。
「それに今は無駄に金を使えません。何一つ買ってやれない。
「王妃様は」
「文句一つ言いませんよ。それに自分に使うなら困っている者に使えと、買う前に言ってきます」
贈ったのは結婚指輪とペンダント。失敗もしたが。何も言わない。セレーネの場合、自分で稼いで買いそうだ。そんなことをする王族、貴族など。
「ヴィリロから何か請求されたことは」
「全く。むしろ助けてもらっています。今回も食料等を送ってもらい。兵は派遣されていませんが」
「送って、ヴィリロを攻められても。いや、攻められたか。ふむ、攻められることを読んでおったか。それはそれで」
近隣は目を光らせている。隙があればと。
「王妃様に護衛はつけているのか」
「いえ、一緒にいたので。ですが」
領主、貴族、女を見た。
「あの女、王妃様が勝手にいなくなったのです。我々は何も」
「わ、私などは今日来たばかりで、何も知りません」
「大丈夫なのか」
オーウェン老は眉を寄せている。
「王妃に何かあれば一部屋とっくに潰れている。最悪邸ごとなくなっている」
ガウラの言葉にハロートはなんともいえない顔。アルーラは頷いている。
「どんな嫁をもらった」
オーウェン老はレウィシアを見上げていた。レウィシアは苦笑。
「話し込んでしまったが、会わせてもらえるか、王妃様に」
「はい」
短い距離。鼓動が速く。久しぶりに会う。部屋を出るまでは男と仕事していると、気が気でなかった。それは今も。
扉を叩く。
「はい、どうぞ」
セレーネの声。扉を開けると、机で書類を見ているセレーネ。机の傍に立っている細い男。前髪を大きなリボンで結んでいる。
「陛下、何かありました」
椅子から立ち、近づいてくるセレーネ。
「その、者は」
男を見た。
「クリサムです。クリサム、この方が陛下です」
「は、初めまして」
深く頭を下げる。
「ファイアーリヒの者だと」
「は、はい。父から王妃様を手伝ってくるよう言われまして」
おどおどと。聞いた通り、気の弱そうな男。
「陛下から了解は取っている、と話していたので」
「手伝ってもらっていた」
硬い声。
「はい。とても助かっています」
セレーネは笑顔。
「い、いえ、僕なんて。むしろ足を引っ張って」
「助かっていますよ。少しは自信を持ちなさい」
クリサムにも笑顔を向けている。本来ならそこにはレウィシアがいて、向けられるのは。
「何か間違っていました? それとも別の」
「面白い頭になっとるのう、クリ坊。王妃様。お初にお目にかかります。オーウェンと申します。わしが会いたくて押しかけて来たのですよ」
「オーウェン様」
レウィシアに隠れていたオーウェン老が一歩前へ。男は驚きの声を上げている。
「初めまして、セレーネです。知っている方ですか」
尋ねているのは男。レウィシアより近い位置。
「はい。領主のお一人で、由緒ある貴族の」
「隠居じじい、ですよ」
「あ、すいません。すぐ片付けます。お茶も」
「エルエット、気の利かない王妃様に代わり、お茶の用意を」
気の利かない、と強調。
セレーネは男と応接テーブルやソファーにある書類を片付けている。
「いや、かまわんよ。先ほどももらった。これ以上は」
オーウェン老は片手を上げて止める。
「なぜ、お前達がここにいる」
レウィシアは領主、貴族、女を見た。
「なぜ、とは愚問でしょう。王妃様が勝手に政務をおこなっている。あまつさえ男を連れ込んでいる、と聞いたので、私も陛下が心配になり、来たのです」
セレーネはきょとん、男も。だが、反応は男が早かった。
「そ、そんなことありません。王妃様は真面目に。僕も朝来て、夕方には帰っています。訪れる方には丁寧に対応されて」
「どうだか」
領主は鼻で笑っている。
「セレーネ」
「はい?」
いつものセレーネ。隠し事、やましいことをしている者の態度ではない。
「白紙を一枚もらえるか。ペンも」
「はい」
セレーネは返事をして机に戻り、白紙とペンを持ってくる。レウィシアは応接テーブルで白紙にペンを走らせる。
「先ほど言ったことは覚えているな」
女を見た。
「どうなろうと一切責任を取らなくていいのなら、傍にいればいいと」
女の顔色は青く。
「陛下! エルエットは陛下のために」
領主は声を上げる。
「それほど傍にいたいのなら、これに署名しろ。すれば好きにすればいい。女として見ることも妃として迎えることも何かを与える、言うことを聞くこともないが」
「陛下!」
非難の声を上げたのはセレーネ。
「向こうでも同じものを書かせた。そして残った三人を覚えているだろう」
シーミのローズ。二人の令嬢。様々な思惑を抱えて。
「ここだけそれをなしにしろと。それなら向こう、俺が治めている地の者が黙っていないだろう。それに金欲しさ、責任取って欲しさに、自らを傷つけたら。何人もそんな者が出たら」
セレーネは口を閉ざす。
「この女はそうしないかもしれない。本当に俺を想ってくれているのかもしれない。だが他の者も押しかけてきて、叔父の残党との争いに巻き込まれれば。責任を取れ、金を払えと言われれば。国庫も無限ではない。特に今はやるべきことがある」
黙って話を聞いている。じっとレウィシアを見て。
「セレーネは自分を護れるだろう。そして自分より俺を護ろうとする。俺はセレーネしか護らない。他の者を護る余裕などない。セレーネもそうだろう。護れないのなら、迷わず一人を選ぶ」
巻き添えを食った者を気の毒に思うだろうが、いつまでも引きずらず、まっすぐ前を見て、次の対策を考える。
小さく息を吐き「そうですね」と。納得していないだろうが理解している。
「そういうわけだ。署名すれば好きにしろ。噂は広まっている。
見たのは領主。毎日来ていた。
「シア」
小さな声。悲しそうな顔をして腕部分の服を引っ張っている。
女と領主は真っ青。貴族は「私はこれで失礼します」と巻き添えを恐れ、部屋を出て行く。
「一日くらい考えさせてやれ」
オーウェン老の援護。
「戻る途中襲われても、先ほど言った通り、俺は助けに動かない」
固まっている女に紙を押し付けた。
「それと、その匂い」
「匂い?」
反応したのはセレーネ。
「気に入らないと、イラつくと思っていた。どこかで嗅いだ匂いだと」
傍にいないとわからない。
「媚薬の匂い。残念だったな、効かなくて」
知らずにつけていたのだとしても、そんなものをつけている時点でレウィシアには何か魂胆があると勘繰ってしまう。
「あの、陛下」
女の弱々しい声。
「お前は、俺の何を見ている」
なんの感情も込めず、まっすぐ女を見下ろす。女は見返すが、目が合うと、逸らす。セレーネ以外、まっすぐ見返してこない。
「書類と、貴族、領主と話している姿か。それだけで心を動かされたのか」
それならまだ戦場帰りのレウィシアの姿を見た令嬢が。
「この手が汚れているのは。戦場でも指示だけしていたと。お前達のように安全な場所から見ていただけだと思っていたか。誰も傷つけていないと」
一旦言葉を切る。
「出て行け。行って考えるんだな」
ガウラ、アルーラは領主と女を部屋から出す。
「見苦しいものを見せて、すいませんでした」
オーウェン老に向かい頭を下げる。
「いや、レウィ坊が決めたのなら」
セレーネの傍へ行き、
「改めて、俺の妻、セレーネです」
肩を抱く。牽制もこめて。
「陛下」
セレーネは困ったように。
「いつものように呼んでくれ」
セレーネを見る。上手く笑顔を作れているだろうか。セレーネの肩を抱いたまま、ソファーヘ。
セレーネの話し声。肩から手は離したが、手を握っていた。
カサついている。小さな傷も。書類整理だけでこのようになるのか。心地よい温かさに声。眠くなってくる。
客人と話しているのにレウィシアは頬や首筋にすり寄ってきていた。場所をわきまえろ、と口にはせず、空いている手で押し返していたが、それでもやめず。
やっと大人しくなったかと思えば、肩に重みが。見ると。
「……」
「落ちたか」
オーウェンと名乗った老人は笑っている。クリサムは「僕も出ています」とお茶を出して部屋を出て行った。いてもよかったのだが、レウィシアはいる、ガウラ、アルーラ、将軍も。落ち着かないのかもしれない。
「坊が人前で寝るとは」
「すいません」
「なぜ謝る?」
「客人の前で」
「ああ。気にするな。それほど疲れているのだろう。坊の部屋も書類が積み上がっておった」
「ちゃんと休めていると思っていたんですけど。無理しているようなら、たしなめてくれると」
傍には見ている人がいる。
「セレーネ様以外眼中にありませんよ。それにセレーネ様しか、怒る、たしなめられません。脅しも」
「それもそれで問題のような」
レウィシアの頭は肩から落ち、膝の上に。
「問題? 王妃様は坊が他の女性といて、妬くことは」
「全く」
セレーネは首を左右に振る。
「うちは一夫一婦でしたが、制度ではありません。他国を見れば」
二人、三人と。
「それに家族を欲しがっていましたから。五人六人といきなり迎えては大丈夫なのかと思いますけど、一人二人なら」
なぜかガウラ、アルーラ、将軍に大きく息を吐かれた。
「え、私なにか間違ったこと言いました」
「陛下はセレーネ様と家族を増やしたいのですよ。うう、今回もまた」
「また?」
アルーラの嘆きにオーウェン老人が繰り返す。
「以前もありまして。陛下は荒れて」
ほほ、と笑っている。
「先ほどのことといい、余程惚れているのだなぁ」
「先ほど?」
セレーネのいない所で何を話していたのか。
「王妃様以外なんとも、触れたいとも思わない」
何を言ってくれていやがる。
「落書きしましょうか。ほっぺに。キスマークでも。一人にして、起きてびっくり」
「やめてください」
セレーネは唇を尖らす。
「セレーネ様は知っていたんですか」
「何を、です」
「噂ですよ。陛下が紹介された女性と部屋に籠もりっぱなし」
「知っていましたよ。兵達の間で
「あいつら」
アルーラは呟き、将軍は苦々しい顔。
「賭けもおこなわれていましたよ」
「はあ! どんな賭けです」
驚いたアルーラの声にも起きない。余程疲れているのか。それほど忙しかったのか。
「紹介された女性に夢中で、妃に迎える。いやいや、私一筋。と賭けていましたよ。私も加わりたかったですけど、兵に何のことです、とはぐらかされて」
「当たり前です。参加しないでください」
アルーラはがくりと肩を落とす。
「ちなみに、どちらに賭ける気だったんです」
「おい!」
ガウラのつっこみ。
「第三の選択、新たな女性が現れる」
「……」
「ずいぶんな女性を迎えたな、坊は」
オーウェン老人は笑っている。
「え、でもセレーネ様も書類整理していたんでしょう。どうやって兵と話を」
「息抜きに庭の手入れをしていました。荒れ放題だったので、もったいないと。気分転換にもなります。そこで兵達に手伝ってもらっていたんです。本当は庭師に任せるのがいいのでしょうけど」
「ああ、管理人がいるはずです。その者が手入れしていたんですが」
レウィシアの叔父が住み始め、その管理人もどうなったか。
「待て。庭の手入れをしながら書類整理していたのか、一人で」
ガウラは右手で額を押さえている。
「はい。四日前からはクリサムが来てくれて。体力は私よりないですね。庭の手入れも手伝ってくれていたんですけど、兵に笑われていました」
「対する陛下は部屋に籠もりっぱなし」
ガウラは寝ているレウィシアを見る。
「何か、自分なりの気分転換をしているとばかり」
例えば、ガウラや将軍と手合わせ。
「書類整理して、庭の手入れ、来客の対応。……どう考えてもセレーネ様が多忙」
「シアも似たものでしょう。客はシアが多かったですし。見る
「それなのに会っていた、話していたのは」
アルーラは難しい顔。
「入れ替わられたか」
ガウラは息を吐く。
「だろうな」
将軍も同意。セレーネは?をとばしていた。
「うちの兵ではなく、どこかの貴族が手を回した者だ。都合の悪い貴族は帰し、特定の貴族にだけ会わせた。怪しまれないよう、時々、陛下の会いたがっている貴族とも会わせて」
「すぐに確認してくる。今後このようなことがないよう、徹底する」
将軍は部屋を出て行った。
「そういえば、時々、怒鳴り声が外まで響いて」
「王妃に会えなくて、日々の不満が溜まっていたのだろう。陛下の気分転換は体を動かすことと王妃との茶、だからな」
「こちらもできるだけ負担を減らそうと必死だったので。シアほど手際よくできません。シアが書類に埋もれる、過労で倒れてもよかったのなら」
それもそれで困りものなのだろう。それぞれ微妙な顔。
「話は変わりますが、アルーラ様とガウラ様、どちらが顔が利きます」
「その呼び方、いい加減にやめろ」
何度も言われている。せめて客の前だけでも、呼び捨てろと。
「セントレアが家は上です。ダイアンサス様とおれなら、ダイアンサス様ですが、ガウラとなると」
アルーラは自身を指す。
「そうなりますよね。口も上手そうですし」
「あの~、セレーネ様」
「実は、先ほど訪ねてきていた貴族の方から聞いたのですが、こちらの国境を治めている領主が隣国から、こちらにつかないか、と持ちかけられている。注意しておくにこしたことはないと」
「……」
「そこで牽制にアルーラ様かガウラ様に行ってもらおうと。私が行きたかったのですけど。王妃と言っても信じてもらえないでしょう。使者としてシアの書いた何かを持って行っても疑われそうですし。誰かに紹介してもらうにしても、こちらは詳しくありませんから。ほいほいついて行って、シアの叔父上の残党だったら」
ぶっとばすだけだが、セレーネを捕らえた時点で手紙でも送るだろう。仕事を増やすのも。
「行け」
「やっぱり、おれ」
「交渉事に向いていないのはわかるだろう。それに、そう言うとは」
「ああ」とアルーラも真剣な顔で頷いている。
「牽制でいいですよ。どうせ、しらばくれるでしょうから。それに取り戻しましたからね。一、二年様子見てからでもいいんじゃないか、いつでも隣国につける、と言っておけば。今日、明日つくわけではありませんから。今までの報告をして、休んでから行っても」
レウィシアの頬をつんつん。
「そうします。報告もせずに出ては」
「忘れ物を取りに行った、と誤魔化してやる。正直に話せば、自分のせいだと責め、自分が行くと言いかねない」
「だよな」
はは、と疲れた笑い。
「ふむ。坊は人に恵まれておるな」
オーウェン老人は目を細めてレウィシアを見ている。
「恵まれているのに、使い方が」
「人のこと言えます」
「私が王じゃないんですから、勝手に動かせないでしょう。動かしていいなら、こき使いますよ」
二人はなんともいえない顔。オーウェン老人は笑っている。
「そもそもエルエット様だって。決めるのはシアですよ。私がいるから、と意地になっているように見えます」
再び頬をつんつん。
「そこはセレーネ様一筋と」
「無理にそう思い込んで、自分を追い詰めなければいいんですけど」
そしてゆっくり壊れていく。そういう者を見た。
「王妃様は坊の両親についてご存知ですか」
「詳しくは。父親には力があったと」
あったために。
「よく似ておる。容姿も性格も。会った時など前陛下、レアト様と見間違えたほど」
ほほ、と軽く笑っている。
「坊の母親は格式のある家の者でした。が、あるのは家名だけで、貧しく、祖母と孫娘、
聞いてもいい話なのか。オーウェン老人は話を続ける。
「どうやって知り合ったのか、レアト様は坊の母親の邸を
このあたりは変わらないなぁ、と聞いていた。妃として迎えるにしても色々あったのだろう。
「しかし、レアト様は誰も迎えなかった。あまりにやかましい者には一喝。暴れればどうなるかわかっている。先ほどの坊の姿、一人だけを想っている姿はレアト様と重なりました」
力のある者に暴れられれば。力はないが、レウィシアも怒鳴っている。
「貴族、臣下は弟、ルヴォノ様にかけることにしたのでしょう。ルヴォノ様にしても兄がいなくなれば自分が治められる、と。しかし、結婚して二年。坊を懐妊した。当初、陛下の子かと疑われておりました。本当に子がいるのかも」
よく思わない者はそうだろう。一喝しても娘を薦める貴族はいたはず。今のように。
「王妃様、前王妃様は静かな方で、姿を見せるのは少し。視察などにはついて行かない。いや、行けなかった。それでも体調の良い日にはレアト様と庭を散歩しておりました」
「それほど体が弱かったのですか」
「ええ。皆、子は無理だと。ダイアンサスだけはわからないぞ、と笑っておりました」
オーウェン老人はガウラを見た。
「王妃様がはっきり意思表示したのはその時だけ。命に代えても生むと。ただ、自分に似て体が弱ければ、ごめんなさいと、何度も」
「それが、こんな元気に」
今は寝ているが。
「坊が生まれた時は夫婦揃って大喜びしておりました。しかし」
声は暗いものに。
「王妃様は寝たきりに。子供を生む時に命を落としてもおかしくなかった。それが」
なんとか持ちこたえた。だが限界がきた。
「坊と過ごしたのは二年。それでも幸せそうに笑って」
オーウェン老人は小さく息を吐き、お茶を一口。
「心配されていたが、父親に似て、丈夫に育った。レアト様も周りの者もほっとしただろう」
「図体だけは立派になっていますね」
「そうですな。姿だけでなく性格も。頑固と言うか」
「融通がきかない」
「もう少し楽に考えればよいものを」
「そうですね」
「坊は、両親はルヴォノ様に毒でも盛られ、と考えているだろうが、母親は違う。自分を生んだせいで、と思われても。父、レアト様はわからんが」
「叔父のせいでないのは確かです。理由も、知っています。母親は知らないので疑っているでしょう」
「そうか」
揃ってレウィシアの寝顔を見た。
紙のこすれる音。ここはどこで、何をしていた。ぼんやりとした頭で考える。
頭の下には柔らかい感触。いつの間に寝台に。寝転がろうとして「おっと」と声が聞こえ、寝返りを止められた。
なぜ止められる? そういえば足も寝台から落ちているのか。寝相は悪くない、はず。
「起きました? いい加減起きないと、夜眠れませんよ」
誰だ。誰でもいい。もう少し、こうしていたい。
「二度寝ですか。狸寝入りですか。本当に狸にしますよ」
再び声が。
「もう少し」
少しでいい。もう少しこのままでいさせてくれ、と枕にしがみつくように腕を回す。回した腕に力を入れ、顔を押し付ける。
「う、苦しい」
枕が苦しい?
自分は今どこにいる。再び、ぼんやりした頭で考える。
仕事をしていた。領主と女が来て、オーウェン老も。それから、それから? ゆっくりと思い出してくる。
「いつまでそうしているんです」
「いつまでも」
息を吐く音。呆れているのか。だが、こうしていたい。触れたのはいつぶりか。
「ふぐぅ」
さらに力を入れたからか、変な声が。
「子供ですか」
頭を優しく撫でる手。子供扱いしているのはどちらか。
「夫だ」
ふてくされたような声。腕の力を
「子供にこんなことできるか」
さらに顔を上げ、口付ける。
少し驚いた顔。不意をつけた、と小さな満足感。
顔を離し、身を起こす。
「子供でもやろうと思えば」
レウィシアはセレーネの頬を軽くつねる。自分の子供であろうと、他人であろうと妬くのはわかっている。
「いつの間にか眠っていたんだな」
「眠る前は」
離したくなくて、セレーネの右頬に触れ続けていた。
「思い出してきた。オーウェン老には悪いことをした」
息を吐く。久々に聞く声に、温かさに安心して眠気が。
「オーウェン様には泊まってもらうことにしました」
セレーネは外を指す。見ると空は赤く。
「夕食も。シアが起きたら一緒に。起きなければ。……私は動けませんね。限界もあるので叩き起こすか、狸に」
狸は冗談だろう。
「夫に対して」
「えらく夫を強調しますね」
「本当のことだ」
部屋を見回した。
「ああ、クリサムなら今日は帰りましたよ。国王が寝ている傍で、ばたばたできませんから」
「俺があの女と浮気していると思っていたのか」
「なぜそんな話に」
セレーネは呆れている。
「以前と同じ。セレーネは俺と距離を取ろうとしていた。浮気していると」
食事は別、寝るのも。
「浮気もなにも、シアが気に入れば」
「そんなこと一言も言っていない」
叫びたい、怒鳴りたいのを
セレーネはまっすぐにレウィシアを見る。
「私に口を出す資格はありません。すべてはシアが決めること。王だろうと個人だろうと、意地にならないでください。一つの考えに
「意地になっては」
「なっていますよ。今も」
小さく笑う。
「さすがに政務を
王であるレウィシア。
「私が口出しして、その通りに動けば、私が、ヴィリロが操っていると取られかねません」
セレーネの言う通り。
「シアが頑張っているのはわかっていますよ。そうでなければ書類は積み上がる一方。部屋は紙で埋もれています。ふふ」
想像しているのか、楽しそうに笑っている。
「俺は、気が気でなかった。セレーネが男と二人で仕事をしていると聞いて」
「シアには話していると」
「聞いていない」
むくれた声。
「なぜ嘘を吐いてまで手伝いをさせたかったのでしょう」
気に入ったか、試している。息子から話は聞いているだろう。それにはレウィシアも含まれていて。話半分だとしても、どちらが治めるに相応しいか。
「あの女は追い出した」
セレーネに両頬をつねられた。そんな言い方するな、と言いたいのだろう。
「署名して、明日くるかもしれませんよ」
傍にいてくれるのは一人でいい。その邪魔をするのなら。
「忙しいのなら、減らす」
「シアの負担が増えるだけでしょう」
離れようとするセレーネの両手をレウィシアの両手が引き止め、包む。
「男と二人で仕事してほしくない」
「手伝ってもらっているだけですよ」
「それでも」
レウィシアのように何を言われるか。それに知った今、それまでのように部屋で大人しく仕事するなど。
「それなら、シアの手伝いをしてもらいましょうか。気の弱い方ですけど、しっかりしていますよ」
それもそれでどうかと思うが。
「ここで追い出せば、せっかく紹介してくれたファイアーリヒ様との
セレーネなりに領主、貴族との繋がりを考えているのだろう。その中にはあの領主と女も。
レウィシアはむくれながらも頷くしかなかった。
それでも気は済まず、抱きつき、すり寄り、口付け、押し倒したところで、いい加減にしろと怒られ。そうしているうちに夕食の時間。セレーネの手をしっかり握り、用意されている部屋に。
書類を見ず、囲まれず、話しながら食べたのはいつぶりか。久々の楽しいと思える食事。
食事が終わると、茶を飲みながらアルーラの報告を聞いていた。
「調べ忘れがありましたので、明日また出ます。一ヶ所だけなので、すぐ戻ってきます。詳しくは帰ってきてから」
わかった、と頷き返したが、どこを調べ忘れたのか。レウィシアが言った地、その他の地まで調べてくれているのに。
茶も終わると解散。セレーネと揃い「おやすみなさい」とオーウェン老と別れた。
知る者しかいなくなったところで、逃げられないようセレーネを肩にかつぎ上げ、レウィシアも寝室へと引き上げた。
翌日、オーウェン老が帰ることもあり、セレーネは眠い目をこすり、なんとか起きて、朝食。共に門まで見送りに出た。
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