第70話 私が頑張らなくっちゃ!【ミカの視点】
【第67話〜第71話のミカの視点】
試験当日の朝、宿に頼んでおいたお弁当をアキくんに持たせる。
アキくんの顔はダンジョン攻略の時よりも緊張していた。
学力は問題無いし、魔法実技テストも蒼炎の魔法があるから余裕だと思うけど。
私はアキくんが受験に受かった時のために、王都で住む場所を探さないといけない。王国魔法学校から近いところで、剣術の鍛錬ができる広さの庭があるのが条件だ。できれば防犯にも注意を払いたい。
アクロとボムズでは冒険者ギルドに守ってもらえていた。しかしここ王都センタールでは冒険者ギルドは当てにならない。自分達で守らなきゃいけない。アキくんを守れるのは私だけだ。
宿の責任者から教えてもらった住宅仲介業者に早速会いにいく。
住宅仲介業者は小太りの30歳くらいの男性だ。清潔感のある格好をしている。
私の奴隷の証であるチョーカーに気づいたみたい。貴族の奴隷と思ったのだろう。男性は丁寧に話しかけてくる。
「どうも初めまして。王都の住宅の仲介を営んでいるドーガンです。この度はよろしくお願いします」
「アキ・ファイアールの奴隷のミカと申します。こちらこそよろしくお願いします」
「おぉ! ファイアール公爵家の方でしたか。これはやり甲斐のある仕事になりそうです。頑張らせていただきます。どのような条件の家を希望されていますか?」
私が希望の条件をドーガンさんに告げると、すぐにその条件に合う物件に連れて行ってくれた。
確かに王国魔法学校から近い。建物が新しいし、庭も鍛錬ができる広さが充分にある。また住宅街のため、不審者に気が付きやすい。
これ以上の物件は無いだろう。まだアキくんの受験結果は出ないが、これを逃す手はない。ただ、アキくんの受験結果が出るまで時間がかかる。
ドーガンとの話し合いの結果、割り増しになるがまずは1ヶ月の賃貸で話がついた。そしてアキくんが受験に受かったらそのまま購入する契約だ。
アキくんには受験が終わってから報告しよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アキくんは王国魔法学校に間違いなく受かるから、生活の準備をしないと駄目だ。
残念ながら私は料理がそれ程できない。また日中は従者としてアキくんに付いていくため、家事全般をできる人が必要か。
そんな時、宿の従業員の娘のユリさんが仕事を探していると聞く。
前職は貴族の屋敷で働いていたが、手籠めにされそうになって逃げてきたそうだ。
ユリさんと話してみたら私は一瞬でユリさんを気に入ってしまった。私はすぐにユリさんに仕事の打診をしてみる。
ユリさんはまた貴族の屋敷という事で警戒していたが、私が熱心に説得した。
私を信頼してユリさんは話を受けてくれる。これで大丈夫だ。あとは生活に必要な家具や雑貨を購入すれば良いか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アキくんが試験が終わってから宿に帰ってきた。
何となくスッキリしている顔をしている。これは手応えがあったのかな?
アキくんはすぐに今日の魔法実技テストの事を話し始めた。
「試験官が【黒龍の杖】の使用を認めてくれなくてさ。それに馬鹿にされてイラッとしたからそのまま蒼炎の魔法を使ってやったんだ」
「ダンジョン外で【黒龍の杖】を使わずに蒼炎の魔法を使ったの!」
「そうしたら直径が50メトルくらいの大きさになってね。みんな慌てて消そうとしたんだけど、
「直径が50メトルの魔法って……。規格外過ぎるわね」
「さすがにもうダンジョン外では蒼炎の魔法は撃たないよ。危な過ぎるからね」
「それなら私も見てみたかったなぁ」
「まぁ蒼炎の魔法のせいで大騒ぎになっちゃって今日の試験は中断。面接も明日以降だって。僕は今日の事があるから、不合格になるかもしれないや」
「そんなわけないでしょ。だいたいアキくんを落とすような学校は蒼炎の魔法で焼き払ってしまえば良いわ」
私の冗談に軽い笑顔を見せてくれるアキくん。あんまり気落ちはしてないみたい。取り敢えず良かったわ。
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次の日、アキくんが面接に行っている間に家具や雑貨を購入していった。
すぐに納入を頼み込んだために、なかなかハードな1日になってしまう。
それでも早く王都に拠点が欲しい。何とか住める状況になったかな。
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面接から帰ってきたアキくんは少し興奮していた。
話を聞くと面接で内々に受験の合格が伝えられたとのこと。
まぁ私のご主人様なら当たり前よね。
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新しく住む家を見たアキくんは気に入ってくれたみたい。私はちょっと胸を撫で下ろす。
新居に入ったその晩からユリさんは早速料理を作ってくれる。王都名物のパスタ料理だ。
またユリさんが引っ越し祝いと称してワインを買ってきていた。
私はここ数日の緊張していたのかな。調子に乗ってワインを結構飲んでしまった。
アキくんは早速明日、開封できない封筒を持って、王国魔法研究所の人を訪ねるって息巻いてる。
本当に開けたくてしようがないみたい。私はアルコールの回った頭で笑いながら「いってらっしゃい」とアキくんに告げた。
アキくんはぶつぶつと何かを言っていたが良く聞き取れなかった。ただ【白狼伝説】って言葉を言っていたような……。
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