第71話 サイド・ウォータージ
宿に帰りミカに、内密だけど僕の王国魔法学校に合格する事が決まったと言ったら喜んでくれた。
4月から僕は王国魔法学校の生徒になり、ミカは従者として僕と通うようになる。
家は買う事になった。王国魔法学校から近い一軒家だ。鍛錬できるスペースがある庭があるとのこと。
家事全般をしてくれる人の目処もついた。ここの宿の従業員の娘さんだ。住み込みで働いてくれるとの事。
新しい家はいつでも移れる準備ができているとのこと。
早速、明日3月3日に宿から新しい家に移る事にした。
新しい家は部屋が一階に3部屋、二階に2部屋あった。大きめなリビングでゆったりできそうだ。お風呂もしっかり完備されている。庭も鍛錬する為に充分な広さがあった。なかなか良い家だ。
家事全般をしてくれる人はユリさんと言う人だ。年齢はミカと同じ19歳。とても良く笑う明るい人である。こないだまで貴族の屋敷で働いていたが、そこの主人がユリさんに手を出そうとするのでイヤになって辞めたそうだ。
僕とミカが一階の部屋を使い、ユリさんは二階の部屋を使ってもらう事にした。
引っ越し当日の晩からユリさんは晩御飯を作ってくれる。王都料理名物のパスタだった。とても美味しくこれからも期待できると感じた。
住む家が決まったため、明日は早速ヴィア主任を訪ねる予定だ。ミカは封筒の開封に特に興味がないのか留守番しているとの事。
ミカには今度【白狼伝説】の小説を買ってやらないといけないな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
朝早くに目が覚めた。開封できない封筒が今日開くかもしれない。伝説の人物である【ウルフ・リンカイ】の事が何か分かるかもしれない。僕は興奮しているようだ。
少し早い時間だが庭に出て素振りを始める。だいぶ春めいて来ているがまだ朝はすこし肌寒い。素振りをしているとだいぶ身体が温まってきた。
今朝はまだミカが起きてこない。昨日、引っ越し祝いと言いながらユリさんとワインをいっぱい飲んでいたからなぁ。今日は遅い起床かな。
一通りの素振りの型を終えた。ミカもいないから今日は模擬戦ができない。朝の鍛錬を終了にしてリビングに戻る。
ユリさんがちょうど起きてきて朝ごはんを作ってくれた。
雑誌を見ながらリビングで時間を潰す。
そろそろ訪問しても失礼ではない時間になったので王国魔法研究所に歩いて向かう。王国魔法研究所は魔法学校の隣りにあり、その職員は皆んな魔法エリートだ。
研究所に入り受付でヴィア主任との面会をお願いした。ヴィア主任は自分の研究室にいつも篭っているとの事で直接行ってくださいと言われる。
僕はヴィア主任の研究室の場所を教わり2階に登った。
僕はヴィア主任が残念美人の可能性があると思っている。研究室は汚いのでは無いかと勝手に想像していた。
ヴィア主任の研究室は2階の1番奥だ。
ノックをしたが反応が無く、恐る恐るドアを開けて声をかけた。
「おはようございます。アキ・ファイアールです。ヴィア主任はおられますか?」
研究室はとても綺麗に片付いていた。少し意外に感じていると奥から若い青髪の男性が現れた。
「良く来てくれたね。僕はヴィア研究室の研究員のサイド・ウォータージだ。ヴィア主任は昨日遅くまで研究していてまだ寝てるところだ。起こしてくるからそちらのソファで待っていてくれ」
サイドさんは研究室の奥に引っ込んでいった。
僕は勧められたソファに座っている。
少し経つとサイドさんがお茶を入れて戻ってきた。
「ヴィア主任は寝起きが悪くてね。すぐには頭が働かない人なんだ。現在シャワーを浴びている。その間お茶でも飲んで、もう少し待ってもらえるかな」
「わかりました。特に用事も無いので問題ありません。そういえばヴィア主任は金属性の魔法について詳しいのですか?」
サイドさんが自慢気に話す。
「ヴィア主任は金属性だけじゃ無く、全ての魔法について詳しいよ。リンカイ王国一の魔法研究者だと思っていただければ良いかな」
僕はこれを聞いて安心した。これなら封筒が開封できるかもしれない。
「アキ・ファイアールくんはBランク冒険者なんだろ。面白いダンジョンの話なんか聞きたいなぁ」
サイドさんはとても気さくな雰囲気で聞いてきた。付き合いやすいタイプの男性だ。
「サイドさんはアクロ出身ですか?」
僕は髪色と家名から想像して尋ねた。
「まぁ髪色で分かるよね。そうだよ。アクロ出身だね」
「それでは沼の主人ダンジョンの話でもしましょうか」
そう言って僕はサイドさんと雑談を始める。サイドさんは聞き上手で会話はとても盛り上がった。
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