第69話 ヴィア・ウォレット

 その声は鋭く空気を震わせた。


「そのあたりは今後の研究が必要だな」


 僕はちょっとビックリしてしまった。


「これは失礼。自己紹介がまだだったな。私は王国魔法研究所の主任研究者のヴィア・ウォレットだ。君の蒼炎の魔法に興奮した1人だよ」


 そう自己紹介したヴィア・ウォレットはとても綺麗な人だった。

 歳は20代半ばに見える。髪は緑色。ただし長い髪をボサボサにしていた。透き通るほどの色白で目鼻立ちはとても整っている。街を歩けば振り返る男性が多いことだろう。

 よく見ると着ている白衣がよれよれだ。袖口は汚くなっている。残念美人さんなのかな?


 ヴィア・ウォレット? 何か聞いたことがある名前だなっと考えていたらギルド長が紹介してくれる手配になっていた人だと思い出す。


 校長先生が口を開いた。


「ヴィア・ウォレット主任から蒼炎の魔法を研究したいと強い要望があってね。それでアキくんには王国魔法学校に入学してからもヴィア・ウォレット主任に協力して欲しいんだ」


「僕も蒼炎の魔法についてしっかりと理解したいのでよろしくお願いします」


 僕のその言葉を聞いたヴィア主任は興奮したのか早口になって言った。


「それは嬉しい! それならばこれからダンジョンに行って君の蒼炎を見せてくれ! そのデータを取りたい。あと街の郊外に行って蒼炎の魔法を撃ってみよう! ダンジョン外でのデータを取りたいな。街の郊外に行くのなら馬車の手配が必要だな。その他に君は蒼炎の系統の魔法が使えるのか? 使えるならどんなものなんだ!」


 ヴィア主任に圧倒された僕に気が付いた校長先生が口を挟んだ。


「ヴィア主任。ちょっと落ち着いてください。アキくんもビックリしている。今日は一応入学試験の面接なんだよ。まずはそっちを優先しましょう」


「何を言ってるだポーツ! アキくんの合格は決まっていると先程言っていたではないか! こんなところでお茶を飲んでいる場合じゃないんだよ! 早速馬車の手配をしよう!」


 興奮がおさまらないヴィア主任を宥めるように校長先生は優しく話した。


「今日のところは研究は諦めてください。アキくんの都合もありますし、アキくんから聞きたいことが私にもあります。研究はアキくんが入学してからにしてください」


 校長先生の言葉に憮然としながらもヴィア主任は口を閉じた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 お茶を一口飲んで校長先生は話し始めた。


「アキくんはどうしてこの王国魔法学校に入ろうと思ったのかね。資料によると君はBランク冒険者だ。冒険者として超一流だ。今更学校でお勉強する必要があるのかな?」


「僕は魔法の知識があまり無いんです。それで一から勉強したいと思いました。それに蒼炎の魔法について知りたいのです。ここにくればもっと蒼炎の魔法について詳しく分かるかと思いました」


「なるほど君の考えは良く分かったよ。しかし蒼炎の魔法については誰も何も知らないんだ。そんな記録は今のところ無いのが現状でね。通常魔法は火魔法と金魔法と水魔法と風魔法の4属性だ。蒼炎は火魔法だとは思うのだが定かではないな。これから一緒に蒼炎の魔法について勉強してみようか。それで蒼炎の魔法の研究の責任者をヴィア主任にする。入学してからと思っていたが、今見た通りヴィア主任が待ちきれないようでね。君の都合が良ければ3月中から始めてもらっても良いかな?」


「それは構いません。しかしまだ住む場所が決まってませんので落ち着いてからでも良いですか」


「それで構わないよ。落ち着いたらヴィア主任に連絡を取ってあげて欲しい。ヴィア主任もそれで良いかな?」


 蒼炎の研究が前倒しになりそうなので嬉しそうな表情でヴィア主任が頷く。


 ついでに封筒の件についてお願いしてみよう。男のロマンは大切だ。


「あとヴィア主任に頼みごとがありまして。本当は冒険者ギルドのギルド長から紹介していただく予定でしたが今日ヴィア主任と知り合えましたので」


 ヴィア主任がこちらを見て口を開く。


「なんだ。私のできることならできる範囲でやらせてもらうぞ。そのかわり蒼炎の魔法の研究では頑張ってもらうけどな」


「後日見てもらいたいものがありまして。詳細はその時にお話しさせていただきます」


 僕はヴィア主任の協力が得られそうで喜んだ。


「分かった。君が住む場所が決まって時間ができたら研究所に来てくれ。私はほとんど研究所にいるからいつ来てもらっても大丈夫だ」


 その後は少しの雑談をして面接は終了となった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る