トウミ編 終章
「王命である!」
「はっ!」
陛下より使わされた王使を大広間の上座にお迎えし、私含めた臣下一同跪いて頭を下げた。
「トウミ領主、ライゼン・オウコよ。其方は此度のグンマ軍との戦において、手勢のみを率いてこれを迎え撃ち、五千対一万三千という三倍近い戦力差において、敵兵六千以上を屠るという大戦果を上げた。これは、古の名将、ハンニバル、韓信にも劣らぬ大功績である! そして許せぬは、トウミへ協力するどころか、領境を封鎖し、兵はもとより民さえも逃げ出すことを禁じ、さらには斬殺したジョウショウ管区長の所業である。よって、余はここに、ジョウショウ管区長であるヴィルヘルム・プルーセン二世を解任し、その爵位・領地・財産の没収及び、国外追放の処分にすると共に、ライゼン・オウコをトウミ領主、トウミ公からジョウショウ管区長、ジョウショウ公へ任じるものとし、プルーセン家から没収した財産と共に金二千を与えるものとする。ライゼン・オウコは一月以内にトウミ領の後任を決め、ジョウショウ区へと赴任するように――!」
「拝受致します――」
恭しく王使から王命が記された書簡を受け取った。
そして王使一行を領界までお見送りし、トウミ城の大広間にもどり城主の席へ座ると――
「主様っ!! おめでどうございますっ!!」「おめでとうございますっ!!」
エルシラやプレセアに続き皆が頭を下げ祝いの言葉を口にした。
「おめでとうございます御領主様!! とうとう管区長となられましたね!!」「これは王国きっての大出世でございますぞ!!」「めでたやめでたや!!」
「うむ、皆の言葉ありがたく思う。だが、これは始まりに過ぎぬ。私は国王陛下の意を汲み、トウミから始まり、次はジョウショウ、そして最終的には、この国へ開明派改革、平等主義、公正主義を広める志である。其方等は、それでも私へとついてきてくれるか?」
「「「はっ!!!!!」」」
「うむ、ならば今後の人事を発表する」
私の言葉に皆が息を飲んだ。
「エルシラ!!」
「はっ!!」
「其方等親衛隊は私と共にジョウショウへ!!」
「はっ!!」
エルシラは前へ歩み出て跪き、心打たれたように返事をした。
「プレセア!!」
「はっ!!」
「其方は我が参謀としてついて参れ!!」
「はっ……はぁっ!!」
プレセアも同じく私の前に出て跪きながら目尻に涙を溜めながら返事を返した。
「レイナルド!! アフギ!!」
「「はっ!!」」
二人が私の前に歩み出て跪く。
「レイナルドをトウミ領主代行に任じ、アフギをその領主代行補佐へと任じる!! 私に代わり、民を慈しみ、この地をよく治めよ!」
「「はっ!!!!」」
「ルーティー!!」
「は……はっ!?」
まさか自分が呼ばれるとは思っていなかったといったようにルーティーが返事をした。
「其方は我が侍女としてついて参れ!!」
「はっ、はいっ!!」
「デュラン・デザスター・ギャレット・ミュラ!!」
「「「「はっ!!!!」」」」
「其方等はレイナルドを補佐し軍をよく修めよ!!」
「「「「はっ!!!!」」」」
「さて……」
そうして私は領主座から立ち上がった。
「では、行くとするか……次なる戦いが私を待っている――」
恐らく区都ジョウショウではこのトウミでは比較にならないほどの、苦難や白エルフ達の妨害が待ち受けていることであろう。だが、それでも私は歩みを止めるわけにはいかぬ。
何故なら、国王陛下より賜った山より高く海より深き御恩があるからだ。
「民達に伝えよ!! 私がトウミを離れたとて案ずるなと!! 私が大管区長となったからには、どの領地も見捨てることは絶対にせぬと!!」
「「「「はっ!!!!!」」」」」
「では仕度だ!!」
「「「はっ!!!!!」」」
そしてライゼンの大躍進は、このトウミより始まり次にジョウショウ、そしてはこのナガノ王国全土を巻き込んでいくのであった――
エルフの国の王立士官学校を首席で卒業するも、人間だからという理由で左遷先として有名な辺境の城主に追いやられた仮面の男の、立身出世維新録。 桜生懐 @KaiSakurai
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