第二十三話「禍根の一掃」後編
「報告致します!! 我等自警団は計六十五の首級を上げました!!」
アフギが私の前に跪いて報告する。
「うむ、広場の四十と足して、百と五か、恐らく盗賊団は一人も残さず滅したであろうな。して自警団の被害は?」
「軽傷者数人にて死者はありません!」
大きく頷いて応える。
「
「ありがたきお言葉にございますっ!」
洞窟から出てきたレイナルドがアフギの横に並び跪く。
「御城主殿っ! 洞窟内から奴らが略奪してきた金品の数々と、ルカとバレ=アスが内通している証拠となる書簡を発見いたしました!」
レイナルドからルカがバレ=アスへ送った密書を受け取り目を通す。
「うむ。間違いなくルカがバレ=アスへ宛てたものであるな。しかし驚いた……此奴等めは字が読めたのだな?」
私の言葉に緊張していた兵や自警団が虚を突かれたような表情を浮かべたあと笑った。
――
――――
――――――
「…………」
エルシラはその様子を、どこか遠い、夢見心地のように眺めていた。
「どうしたエルシラよ?」
ゆっくりとエルシラがライゼンへ振り向く。
「主様……いえ……今まで何年も我等を苦しめてきた賊共が、こうもあっさり全滅するとは……上手く言葉にはできませんが……万感胸に迫る思いなのでございます――」
エルシラの言葉に同意するように、アフギ含めた自警団、そして親衛隊達も感慨深げに黙った。
「なっ!? なんだこれはっ!? どうして私が縛られているっ?!」
そうしていると、間の抜けた甲高い声が広場に響いた。
「……目を覚ましたか……その痴れ者等を私の前まで引き立てよ」
椅子に座るライゼンの前に縛られたまま跪かせられるルカとムンサとパヌー。
「お前……ライゼンっ!! どうして……何故分かった?!」
ルカはライゼンを射殺さんばかりに睨みつけながら声を荒げる。
「私は人の心を読むことができる。
顔を憎悪と羞恥に染め上げるルカ。
「鼠輩?! 私が鼠だとっ?! ライゼンっ!! この私にそんな態度をとって後でど……」
「ここに其方がバレ=アスへ送った密書と、生け捕りにしたバレ=アス、そして其方が裏切った現場を見た証言者が百人以上いる。其方は……いや、サルバルトール家はおしまいだ――」
「っ…………」
絶句するルカにライゼンが続ける。
「
ライゼンは立ち上がり、ルカの正面に立って屈み、ルカの顔と銀星面が触れるほど顔を近づけた。
「私は国王陛下より恩寵を受けし、万里を翔る
「………………」
ルカは言葉なくただうな垂れた。
「おっお待ちくださいっ!! 私はルカめに脅され仕方なく協力していたのでございますっ!!」
「そっそうでございますっ!! 心を入れ替えます故、どうかご容赦のほどをっ!!」
自分は無実だと声を荒げるムンサとパヌー。
「よいか、ムンサ、パヌーよ」
ライゼンは二人をジッと見て続きを口にする。
「一度人の味を覚えた獣は人を襲うようになる故、殺さなければならない。裏切りも同じだ。お主達は
「「…………」」
ムンサとパヌーは絶対に助からないと理解し、絶望にうな垂れてしまった。
「……もうよい。そこなまだ目を覚まさぬバレ=アスの如き畜生とは話す価値すらない。バレ=アス含め四人とも引っ立てよ、王都へと送り、裁きを受けさせる」
「「「はっ!!」」」
「ルカにパヌーにムンサよ、道中噛みしめるがよい。それら全てが、其方等が見る最後の景色となるのだからな」
「――――っ!!」
ルカ達は声にならない声を上げて引っ立てられて行った。
「皆よ、先程も言ったが、バレ=アスとルカはその悪事を白日の元へ晒す為に、生きたまま裁かれる必要がある。今すぐにでも彼奴等めを八つ裂きにしたいであろうが、ここは私のことを信じて堪えてくれ」
「「「御城主様にお従いします!!!!」」」
レイナルド達だけでなく、エルシラやアフギ含めた親衛隊・自警団の黒エルフ達も皆がライゼンの言葉へと頷き頭を下げた。
「うむ……ありがとう。皆の信頼、私は心より嬉しく思う。では戻って皆で祝杯を上げようぞ!」
「「「はっ!!!!」」」
そうしてライゼン達はトウミ城へと戻り、ルカ・ムンサ・パヌー・バレ=アスの四人は
その夜、トウミ一帯でバレ=アス盗賊団壊滅の祝勝会が開かれたのであった。
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