第十九話「決行」前編
城主室――
あの夜以降、ムンサは度々私の部屋を訪れるようになっていた。
「ムンサよ、よく知らせてくれた。少ないが受け取ってくれ」
「そっ、そんな、このような大金……受け取るわけにはっ……!」
私が握らせた金貨を見て返そうとするムンサを片手を小さく挙げて制する。
「よいのだ……ムンサよ。お主が危ない橋を渡ってくれているというに、なにも褒美
を与えなければ私の気が済まぬ。故に、私のためにも受け取ってくれ――」
「はっ……ははっ! ありがとうございますっ!」
「……してムンサよ、まだルカがバレ=アス等と繋がっている証拠は見つからぬか?」
「はっ、なんとか探りを入れてはいるのですが、どうにも、ルカ殿とパヌーの間ではなにやらあるようですが、私は警戒されているのか何もお話にはなりませぬ。そのため、そもそもルカ殿が本当にバレ=アス達と繋がっているかも謎でございます……」
ムンサは心底困ったような顔でそう答えた。
「よく分かった。これからも引き続き頼むぞ。では行くとよい、あまり長居しては怪しまれよう」
「はっ! 失礼致します!」
そうしてムンサは頭を下げ退室して行った。
翌日・ルカの私室――
「といったように、あのライゼンめは私の手を取ってこの金貨を渡してきたのでございますっ。引き続き頼むぞ……などと言って! わっはっはっ!」
当初ライゼンにバレていないか警戒して冷や冷やとしていたムンサであったが、一週間も経った今では、ライゼンの自分に対する
「はっはっはっ! それはよい! 奴め士官学校を主席か次席で卒業したか知らんが、有能さを装ってはいてもこれで化けの皮が剥げたというもの!! 所詮はまだ二十歳になったばかりの青二才!! 世間の厳しさを知らぬわ!! ムンサよ! 時は来たなっ!!」
葡萄酒片手にルカも自身の計略が上手くいったことに、すっかり上機嫌となっていた。
「ル、ルカ様、バレ=アスの奴めが、まだかまだかとセッついてくるのでございます。そろそろ奴らを大人しくさせておくのも限界かと……」
ようやく指の熱がひいたパヌーがそう口を開いた。
バレ=アス盗賊団は先日の夜襲を失敗して依頼、トウミを襲撃できないでいた。
撃退時は慢心していたバレ=アスであったが、その本性は用心深いもので、自身の脅威となるライゼンという存在が現れてからは部下にトウミへの襲撃を控えるように厳命していたのだ。
「うむっ! ならば善は急げだ、三日後、実行に移すとしよう! ムンサよお前は二日後の夜、ライゼンめに盗賊団のアジトを見つけたと言って、ライゼン、エルシラ、レイナルドを誘い出すのだ!! パヌーはその旨をバレ=アスへ伝えるのだ! そして当日はそちらの要求通り私も高い酒と肴を持って参る故、勝利の美酒を味わおうとな!!」
「「はっ!!」」
「はっはっはっ、はーはっはっ!! 見ているがいいあの仮面の病人めがッ!! 私を辱め、棒叩きにした罪……っ!! ただで済むとは思うな!!」
ルカの高らかな笑い声が部屋中に響いた――
二日後、夜ライゼンの部屋――
「其方に言われた通り、今宵は重要が話があり、それにはこの二人も必要不可欠と、レイナルドとエルシラも呼んだが、一体なんの話か?」
今私の部屋には、私、エルシラ、レイナルドの三人が揃っていた。
「はっ! 実は、バレ=アス盗賊団が根城にしている場所を発見したのでございますっ!!」
椅子に座る私と、その両脇を守るように立っているエルシラとレイナルドにムンサはそう告げた。
「ほう……それは吉報であるが、まことであるか?」
「はっ!! 怪しき動きをするパヌーの後を追い、危険に身を晒しながら突き止めた次第でございますっ!!」
「ほう……では、パヌーはバレ=アス共と繋がっていると確定した、ということでよいのだな?」
「はっ!! しかし、ルカ・サルバルトールも同じく内通しているかは不確かといったところでございます!!」
ムンサの返答に私は大きく頷く。
「よし、ならばレイナルドよ、其方は今すぐ衛兵を率いてパヌーを捕縛し、牢へと連行・尋問してルカ及びバレ=アスとの関与を吐かせよ」
「はっ!!」
「おっ、お待ちくださいっ! それはいけませぬ!!」
頭を下げ部屋を後にしようとするレイナルドを止めるようにムンサは慌てたように声を上げた。
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