第3章:魔の森攻略編

第78話 ソース焼きそば

 今僕は何をしているかと言ったら…。


 焼きそばを焼いてます。それも、大量にです。オッサンに大きな鉄板を作ってもらったので、これを利用しての縁日の祭り状態なのです。


 焼きそばのソースのジュージューと焼ける香ばしい匂いがたまりません。お店で食べる塩焼きそばも好きですが、外で食べるイメージと言えば、やっぱりソース焼きそばでしょう(あくまで個人的な見解ですからねb)


 僕のマイブームは、麺は太めで、お肉にはモツ。あのプリプリの食感がいい。因みにホルモンって、ほる(捨てる)もんってずっと思ってたw。だけど外国で焼肉のモツをホルモンっては通じないそうだ。


 ソース焼きそばは、この世界の人にも大好評みたいです。


 それだけじゃなく、クライド達にも手伝ってもらってのバーベキューもあります。スペアリブ、肉と野菜の串焼きに、ソーセージやとうもろこしも用意して、ドンドン焼いてもらってるんだけど、冒険者が五十人以上も居れば、そいつらの胃袋とは恐ろしいもので、いくら焼いてもきりがない。


 そう、ここは、魔の森の中、アリシアの小屋近くにある、少し開けた場所になります。今、ここでの盛大な食事会を開催しています。


 明日から本格的に魔の森攻略が開始されるのですが、その前に皆さんに激励の意味を込めて、ご馳走しようと思ったわけです。


 流石にアリシアも広範囲での結界は無理なので、魔物除けの魔道具に頼る事にしての食事会です。そして皆さん行儀よく?食べてくれてます。


 そこ!肉、沢山あるから取り合いの喧嘩しない!肉だけじゃなく野菜も食えってんだ!


 それと、お酒もほんの少しだけど用意しました。飲みすぎは良くないですからね。オッサン、日本から持ってきたウィスキーに大感激してます。


 そりゃ世界一のジャパニーズシングルモルトウイスキー。フルーティーな香りとなめらかな口当たり、深みのある味わいをどうぞご堪能ください。


 何とか手に入れたと言って喜んでた神田さんがとろけるような顔で、そう言ってました。大量のお酒は神田さんにお願いして用意してもらったのです。が、その後、私も異世界あっちへ連れて行けーっと、散々くだを巻かれました…。


 もちろんそれは大熊さんに丸投げして全速力で逃げましたよ。


 食事作りも一段落し、ホッと一息ついている所に、アリシアが僕の所にやって来ました。


「本当に感謝するぞ。君の世界に帰れたのに、またこちらに戻って来てくれたとは」と、アリシア。


 すると、ミーリアからも声をかけられた。

「お礼を言おうとしたのに、急にいなくなっちゃうんだもん。もう探したのよ」

 と、ぷりぷりしている。(か、かわいい。)


「うんうん」と、相槌を打つアイリ。(おっと、こちらも、かわいい。)


「ところでだ。あちらはどうだった?どうやって帰ってきたんだ?」


 と、アリシアが聞いてくるので、地球であったあれこれを説明した。


 S級シーカーの失踪の件、僕の帰還をシーカー協会の担当者が上手くごまかしてくれた事。

 ニューヨーク中を巡り、ベーグルの具材を探し回った事。それ、今度ご馳走しますね。

 それに自由の女神ダンジョンで大量のゾンビに追い回された事。そして日本のシーカー達と協力しての攻略で、こちらへ戻って来れた事等々。


 アリシアたちもだが、ウィスキーを飲みながらのオッサンやガリオンさんも興味深げに聞いていた。僕が一通り話終わってから、


「そうそう、初めて行った外国の写真を撮りまくったんですが見ます?そこはとある湾にある小さな島の上に建つ巨大な女神像があるんですよ。すごく壮観なんです」


「えええ、女神様?見る見る!」


 アリシアやミーリア達に加え、ネコ先生や先生のお兄さんまでが集まってきて、わいわいと僕をとり囲んだ。


 実は、僕の世界自慢をしようと思って、皆で見れるようにと今回はタブレットを持ってきてたのですよね。


 僕たちがワイワイと騒いでる向こうでは、たき火を囲んで、にぎやかに酒盛りをしていた。その中で一番盛り上がってるのが、『コーラルリング』のビキニアーマーのマヌエラさんだ。


 そして僕たちお子ちゃま達の前には、甘~いケーキを並べての、ケーキバイキングを開催する。女の子達、何故か一部厳ついおっさんたちもが混じってきたが、皆、目を輝かせているのだ。


 それを食べながらの写真鑑賞を開始した。


 日本の東京、大阪、京都などの写真やニューヨークの写真を興味深々で見ている。彼女達にとって初めて見る世界。もの珍しい風景を見て、僕が初めてここに来た時と同じ様に、感嘆の声をあげたりしている。


 そして、僕に色んな質問をしてくる。その質問に答えながら、楽しくも穏やかな時間が流れて行くのだった。


 僕のタブレットをスワイプして行く勝手知ったるアリシアだ。実は僕のスマホで散々遊んでいたからなのだが、そんなアリシアだが――――――。


 画面を見るアリシアの目が大きく見開かれたかと思うと顔が引きつる。そしてその顔から表情が無くなったかと思ったら、急にどこかに走って行ってしまった。


「ア、アリシア?」


 走り去ってゆく後ろ姿をポカーンと見ていると、アイリが僕の肩をツンツンとつついてきて、タブレットを指差す。


「え?」


 僕は指差されたその画面を見た。そこにあった一枚の写真は…。あ?!


 そこに写っているもの、露出度の高いスケスケ衣装を着たナイスバディな妖艶な女性が、ランディさんにしなだれている写真。


「げ?消すの忘れてた!」


『ああ、ランディさん、死亡!』


「あ、いや、そんなこと言ってる場合じゃない。アリシアー!誤解だってばー!」


 僕は森を走り去って行ったアリシアに向かって大声で叫んでいた。

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