第73話 温泉だよ温泉
蓮が走り続け半時もかからないうちに、前方に連なる高い塀が見えた。高い塀の上にはかなりの数の兵士が配置されており、バリスタや
近づくと、その塀沿いは水の張った掘りで周囲が守られているようで、その塀越しに進むと大きな門が見えた。門の前には跳ね橋が架かっている。さすが国境だ!かなり頑強に作られているようだ。
門に近づくと、検問をする門兵がいる。そして、そこには冒険者風の人たちが数人並んで待っているようだったが、そう多く無かったのですぐに僕の番が来た。
あまり忙しくなさそうだった門兵に世間話風に聞いた所、以前は帝国からの入国もかなりあったのだが、上からの命令で帝国国民の入国審査は厳重になった。が、あちらから訪れる人もほとんどいなくなったのだと言う。
その為、このところは帝国側にある近くのダンジョンに潜るこちらの冒険者が出入りする位で、そう忙しくないと言っていた。
僕はオルロープ商会の依頼で帝国に行っていたとして、冒険者カードを見せると、すんなり入国が認められた。さすが銀級冒険者、優遇されてる。
はい?銀級冒険者?
いつの間にか、王都のギルマスが僕の知らない内にしれっと銀級に上げていたらしい。勝手に何してんだか……。
まぁ、ここの門兵に敬意を向けられての入国審査が超簡単だったのは感謝だ。
このフォンテブルクという街に入ると、辺境の街にしては意外にも大きな街だなと思った。その賑わいにかなり驚いた。僕的には、辺境と言えば砦と言うイメージだったからだ。
ところでだ、ここに入った所で気になっていたのだが、なんだかほんのりと臭う。
そう、臭いのだ!
そうだ、どっかで嗅いだ懐かしい臭い。それは、タマゴの腐った臭いと言われる硫化水素臭、一般には硫黄臭と言われている臭いだった。
昔、一度両親と行った温泉街の臭いだ。まさか、ここは温泉街?もしかして『温泉』があるのだろうか!だったら、、、
「温泉饅頭とか、温泉たまごはあるかな?」
これは楽しみだ!ちょっとワクワクする。だって、日本人なら、温泉は欠かせないよね。
門兵の人に聞いた話、この街は
だが、それだけではない。
近くに温泉がある地帯には欠かせないミスリル鉱山がある。ミスリル鉱石を採掘できる鉱山で、観光だけでなく温泉と相まっての相乗効果は半端ない。
観光としての温泉と鉱夫や鍛冶職人達の身体を休める場とに住み分けられた宿屋が立ち並んでの、多いに賑わっているのだ。
すれ違う人を見るに、裕福層な人たちとは別に、がたいのいい人たちも多く居て、今日の収穫を自慢する会話もまじっている。かなりの繁栄ぶりだ。
屋台からは、それはそれは美味しそうな臭いが漂ってくる。うわぁ~、これはまずい。もう、目についたもの片っ端から夢中で買い込んでしまった。
だからと言って、お使いを忘れたわけじゃないからね。寄り道はほどほどにして、オルロープ商会のご隠居様の館に向かう事にした。
ご隠居様って言うんだから『格さんとか助さんとかいるのかな?』なんて思いつつ、某テーマ曲を口ずさみながら歩いていると、前方にどっかで見たような後ろ姿を見かけた。
「あの背の高い人、どっかで見たよね」
彼が横を向いた時に見えた顔と耳、あ、あれはアリシアの婚約者のランディさんだ。声をかけようとしたんだけど、どうも誰かと一緒にいるようだ。
ランディさんの横にいるのは、それはそれはナイスバディな女性だった。ドキっとするような露出度の高いスケスケ衣装で、周りの男性も通りすがりに目がいくようで、チラチラ見ている。
後ろ姿しか見えないが、腰に手をあてての歩く姿が、もう、そこしか目に入りませんくらいで鼻血がでそうだ。彼女居ない歴=年齢のお子ちゃまには少し早いですってくらいのお色気がむんむん。だから、僕は思わず目を隠してしまった。(もちろん少し開けてます、指の間)
その女性はランディさんに
「あああ、浮気だ浮気!」
僕は思わず、証拠写真を撮ってしまったのだった。
ふふん、弱みは握ったぜランディ!リア充爆発しろ!!
僕はランディさんに声をかけず、オルロープ館へと急いだのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます