第64話 世界を照らすもの

 ニューヨーク!それは誰もが知ってる摩天楼!タイムズスクエア、メトロポリタン美術館、そして自由の女神だ!


 リバティ島にある自由の女神は、今は禍々しい魔素に覆われていた。アメリカの自由の象徴、『世界を照らす自由』は、それによって封じられている現状なのだ。


 お台場にあるような小型のレプリカとは違う巨大な造形物であり、イギリスからの独立100周年を記念してフランスから贈呈された自由の象徴だ。


 自由は封じられてはいけないのだ!


「われわれは人間にとって不可欠の四つの自由を基盤とした世界を期待しています。「言論・表現の自由」「信教の自由」「欠乏からの自由」「恐怖からの自由」のうちに樹立された世界を望むものである」


「それは、私たち自身の時代と世代で達成可能な世界の明確な基礎です。独裁者たちが爆弾の衝撃で創造しようとしている、いわゆる独裁の新秩序とは全く相反しているものです」


 第32代大統領フランクリン・ルーズヴェルト(1941年一般教書「4つの自由」演説)

(因みに死去を受けて副大統領から大統領に昇格した第33代が原爆投下を承認した大統領だ)


 お台場と言えばあの実物大ロボだけど、折角、自由の女神もあるんだから、僕はシャイニングXXXムにすればいいと思うのに。


 ◇◇◇


 ニューヨークに到着すると、USDSA(アメリカダンジョンシーカー連盟)の連中に、早々に現地へ連れていかれて、ホテルではなく、設営されたテントに押し込まれてしまった。ぐぬぬ、観光できないのか?遊びじゃないんだからと怒られそうだ。


 スモークサーモンとクリームチーズをたっぷりと挟んだあのベーグルは食べたかったなぁ。イクラとトマト、オニオンは入れるぞって、意気込んでたのに、「待て」状態とはなんて残酷だ。これで僕の最大のミッションは、奴らの目を盗んで、絶対に新鮮なサーモンとクリームチーズや具材を調達する事に変わったのは言うまでもない。


 僕が造ったポーション類をJDSAに相当数を売ったので、懐には余裕がある。キャビアも買っちゃうぞ。


 ◇◇◇


 日本チーム用に設営されたテントに、案内してくれた職員とは違う黒服ネクタイ黒サングラスの男がやってきた。彼は日本チームの担当になった職員らしい。職員と言うよりSPとかハンターって感じの人だ。その人から今回の作戦の説明がなされた。


 日本チームは五パーティーのレイドチームで、荷物持ちポーターは各パーティーに一人づつの五名。総勢三十名である。


「参加して頂きありがとうございます。S級シーカーの捜索がメインですが、攻略できるならお願いしたいと思います。よろしくお願いします」


 USDSAの職員は国単位でのレイド戦という形にしたいと言っているが、各国チームにお任せすると言う。


「潜る場合は女神ダンジョン前に設置している出張本部にリストを提出してからお願いします。また、出られる場合も報告をお願いします。買取もそちらでいたします」


 日本の参加が遅かった事で、すでに先行で潜っているチームがあるようで、それまでに作成されていたマップとギミック等の情報を渡してくれた。


「何かご不明な点があれば、私にお尋ねください」


 普段、出張本部に詰めているとのこと。そう言うと彼はテントを後にした。


 ◇◇◇


 地球の女神も封じられてしまっている。なんか象徴的だよね。ここを解放してあげたいのは山々だけど。今、異世界の何処と繋がっている事が分かっているダンジョンは二か所。だが北海道の草原ダンジョンは休眠中だ。


 草原ダンジョンの事はすでにJDSAに報告してあるのだが、いつ眠りから覚めるかの目途も立たない様子だ。だから、まだ、ここを解放してあげるわけには行かない。


 僕は日本を立つ前に、神田さんを通して大熊さんと言う人に会う事になった。

 名は体を表すと言うのは事実だった。大熊さんは名前の通り、日本チームのリーダーさんだ。あの黙々と豪快に食べるクマさんだった。


 大熊さんはJDSA内では、寡黙で人格者だと知られているようで、そこで、神田さんから大熊さんに相談したらと言う事になったのだ。

 そして今に至るわけだ。


 作戦はこうだ!できるようだったら、日本チームだけでボスを倒す。ただそれだけです。


 USDSAはコアを破壊したいようだけど、それをされるとこちらが困る。僕がヴォーバルニャに転移出来れば、あとは大熊さんに後処理をお願いする事になった。


 大熊さんはただ単に僕のキャンプ飯目当てだっただけなのだが、なんか巻き込んでしまってごめんなさい。

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