第65話 ミッションをクリアしろ
シーカーであれば外国でもそれなりに優遇されている。
各国のダンジョン協会は、シーカーや入手アイテムにそれ相当の厳しい規制をかけているので、外国人であろうが、なるべく長く潜って貰えればその国に落とす利益が多くなるわけだ。なので、色々と配慮してくれていたりする。
異世界に転移しようがしまいが、長期に留まる事になった場合でも、神田さんがなんとかしてくれるとのことだ。そこで、JDSAニューヨーク支部職員には面通しをしてもらった。もしかしたら、ここへの直接帰還は難しいかもしれないからだ。
このダンジョンのボスを倒せば、もちろんそれはUSDSAにも知られる事になり、繋がったダンジョンのボスも同時に倒せば、ここは休眠する可能性もあった。
ダンジョンボスを倒したあと、コア破壊を阻止してもらうために、JDSAニューヨーク支部職員にはUSDSA説得に頑張って貰わないといけない。コア破壊はここのどこかにいるかも知れないS級シーカーを見殺しにするとかなんとか言ってもらおう。
だが、今回の日本チームに僕は登録はされていない。ただの一般シーカーとしての渡航だ。USDSAに僕の存在を知られては困るという事もあって、そこで隠密スキルを駆使しての行動する事になったというわけだ。
まぁ、そこは、S級シーカー達を伴っての帰還が出来たなら、USDSAもとやかくは言わないだろうから。
◇◇◇
着いたその日と翌日は準備に当てた。もちろん僕は買い出しに走り回ったわけだが。言語理解はとても優秀だ!
コードネーム『レン』
世界各国が水面下で熾烈な情報戦を繰り広げていた時代、男は童顔で媚び売りながら、その戦場を生き抜いていた。
本日のミッションは、『ベーグルの具材を入手せよ!』だ。
まずは格安で新鮮なサーモンをゲットしろ。例の工場では人知れず速やかにネットで予約しておく。取りに行く時間を短縮するため、ニューヨークJDSA支部を有効に利用させてもらった。『あるものは、すべて使え!』は、好きな言葉だ。
大熊さんが、そのミッションに関して、脅し…もとい、JDSA支部職員に優しくお願いしていたらしい。
「坊や、お使い?えらいねー」
って、体格のいいご婦人に笑顔で言われてしまうのだ!そうだ、もちろん、百の顔を持つ『レン』なのだから。幼く見せるなんてお手の物だ;;
そして、『ミッションコンプリート!』
仏頂面ではある大熊さんが少し嬉しそうに見えた気がした。それに何故か圧が強い。
「はい、もちろん、ちゃんとご馳走しますから」
◇◇◇
女神ダンジョンに入る前のリストには、僕の登録を省いてくれた。隠密スキルを使って、USDSA職員に気付かれないように侵入に成功する。
そして女神ダンジョンに侵入と同時にシンクロを試みたわけだ。
そこは『
それは魔塔タイプのダンジョンであり、
だが、塔から見える景色、そこはニューヨークではない、別の世界を思わせる美しい景色が広がっていた。
USDSAが何故にここを封鎖しているのか分からない。ここに出る魔物が全てゾンビである事が、何かトラウマであるのかもしれないし、広がる世界を外に拡散する事を警戒したのかもしれない。
シンクロしてみてIIになった事の追加効果が何か分かった。それはスキップが出来るようになっていたのだ。日本語で言う短縮。決して、軽く飛びながら軽やかに進めるようになったわけじゃない。
好きなダンジョンの階層に安易に移動する事が出来ると言うものだ。これで、簡単にボス部屋へと移動する事が可能である。
とりあえず、大熊さんと前もって打合せしていたように、ダンジョンに入ってから他のメンバーに今回の作戦を説明する事になっていた。他のシーカーさんには申し訳ないが、今回の作戦が外部に漏れる事を警戒したことで、それは厳重な処置だった。
ある程度、大熊さんに信頼の置けるパーティーを厳選して貰っていたとして、今回の作戦が外部に漏れる事をかなり警戒したわけだが。そこは十分に踏まえて、説明してはもらった。
最重要のミッションであり、JDSAというより日本の威信をかけた一大プロジェクトであることを認識してもらわないといけないと、大熊さんは声高に訴えている。
それを聞いたJDSA所属のシーカーさんは、顔を赤らめての意気揚々としているではないか。
「おお!俺たちはやり遂げるぞ!!」とかなんとか。僕の身体をバンバンと叩いてきたりする。かなり、痛いんですけど。
いやいや、なんだか、僕が思っていた事とは、かけ離れたすごい事になってしまっているようです。皆の高揚した顔を見ながら、気はぬけないよね、とか、期待に応えないといけないよね、とか、思ってしまいます。頑張りますからね。
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