第27話 強くなりたい

 蓮は新たなスキルを獲得した。


 <シンクロナイゼーション(synchronization) >は、一般に、同調とか同期とかとされている。日本人特有の省略系は『シンクロ』だ。


 ダンジョンコアの魔力放出を浴びたミノタウロスは消滅したが、蓮は直接浴びたわけではなかった事、急激なレベルアップでの身体の構築が同時に起こった事で、偶然、コアの原子を取り込んでしまっていたのだろう。


 そして、その後、最初にダンジョンに入る事で、その原子が目覚め、コア原子の本能により、同調しようとする力が発揮しての、スキルへ変換したのだろうか。

(リユニオン現象とか?)



  ************************************


 <ステータス>

 名前 : 新田 蓮(あらた れん)

 性別 : 男

 年齢 : 18歳

 レベル : 17


 HP : 117

 MP : 52


 STR : 47

  INT : 38

 DEF : 20

 RES : 41

 DEX : 63

 AGI : 41

 LUK : 51


 □魔法:


 なし


 □スキル:

 <異世界サバイバルセット>Lv4

 ・言語理解 ・簡易鑑定→ ・石投げ→

 ・飲み水整水 ・回復(小) ・浄化

 ・アイテム収納(小) ・着火

 ・周辺MAP制作(範囲小)→ ・気配察知


 <シンクロナイゼーション>→

  [同期] ・ [解除]


 ************************************


 ステータスの表示が変わっていた。(ダンジョンコアの原子・XXXX)が、(ダンジョンコアの原子・共有結合)から、スキル<シンクロナイゼーション>へ。そして、そのスキルを同期するか解除するかの、表示も追加されていた。


 <シンクロナイゼーション>の横に矢印が出たのでタップしてみると、その詳細が現れた。


 ダンジョンとの同期をする事が可能で、またそれを解除する事が出来る。同期時、そこの構造及び存在するものの把握が出来るようになる。尚、同期上での認識空間での干渉は不可であるため直接の接触が必要になってくる。また、ダンジョンでの更新があった場合、再度の同期が必要となる。



 蓮は、しばらくダンジョンを探索して、村へ帰る事にした。ダンジョンは、昨夜のダンジョン氾濫の影響だろうか、気配察知にも魔物の姿は確認されず、静まり返っていた。今、このダンジョンは、再構築の最中なのかもしれない。


 あまり時間をかけると、自分が居なくなった事での問題が起こりそうだったので、早々に村へと踵を返した。



                ◇◆◆◇◆◆◇



 村へ帰った所、僕を見つけたアリシアが飛んで来た。


「どこへ行ってた?心配したんだぞ」


 アリシアは、朝早くに起きると、僕の事が心配になり、様子を見に来てくれたようで、僕が部屋に居ない事に気づくと、村中を探し回ってくれたようだ。本当に、申し訳ないです。


「ええ、その事は、後で皆さんにご報告します。とりあえずは、僕が巻いた物の後始末をしますね」


 午前中は、村のかたずけに、頑張った後、昼食の時に、皆に告げた。


「あの、僕、新しいスキルを取得しました。実は、、、」


 蓮は、昨日自分に起こった事、それを、今日の未明に自分一人で実行するため、ダンジョンに向かった事を話した。


 そして、オッサンの方を見て、僕は深々と頭を下げた。


「師匠、僕は強くなりたいです。どうか、僕に戦い方を教えてください。」


 もう、弱い事で侮られる事も、強い者に蹂躙される事にも、有ってはならないと思うし、我慢ならない。そう、それは、何人たりとも遭ってはならない事だと思った。


 蓮が、日本にいる時、金森にいいようにされながら、ヘラヘラ笑ってたのも、弱い自分の防衛反応だった。守りを固めて、手出ししなければ、これ以上やられない。と、そう思っていたんだ。


 だけど、そうじゃない。弱いと思われれば、何度でもやってくるし、何度でも集られる。いいカモだからな。酒を酌み交わしながら話せば、分かり合えるとか、そんなの有るわけがない。金森みたいな話しても分からないクソみたいな奴はいっぱいいるし、ましてや、魔物に話が分かるはずがない。


 どこの世界にも、魔物みたいな奴はいるものだ。


 オッサンも、頭を下げ続けている僕の肩を、ポーンと叩くと、


「頭を上げろ。昨夜の事は、お前のせいじゃない。あまり自分を責めるな。たまたま偶然が重なっただけじゃ」


 強くなりたいと言うその心意気と、自分の弱さを認めて、それに抗う勇気も持ってる、その力があれば、お前はもっと強くなれる。と、そうも言ってくれた。


「皆で力を合わせて戦えば、犠牲は出てしまった事は残念じゃったが、最小限に押さえる事ができた。それも、お前がここにいた事で出来たことじゃないか?もっと胸を張れ。そして前を向け」



 だけど、守っているだけじゃだめだ。オッサンはそう言うと、皆に向かって力強く言い放った。



「よーし、今度は、こっちから行くぞ。あのダンジョンを消滅させるんじゃ!」

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