第26話 新たなるスキル

 巨大な魔物は、ゴブリンキングだったようだ。


 長年放置されたダンジョン内の、溜まりに溜まった強力な魔素により生み出された、強大な力を持つ、最上位に位置するゴブリンキング。


 そして、そのゴブリンキングにより統率された、ゴブリンロード、ゴブリンジェネラル、ゴブリンアーチャー、ゴブリンメイズ、そして下級のゴブリン等が、スタンピードのごとく、わらわらとダンジョンから湧き出て来て、大挙して村を襲ったのだった。


 だが、皆が力を合わせ、それに対抗した事で、なんとか無事、殲滅出来たのだ。


 ゴブリンキングが消滅した後、僕はレベルが2上がって17になった。頭の中にレベルアップした事の声が響く。


  ************************************


 <ステータス>

 名前 : 新田 蓮(あらた れん)

 性別 : 男

 年齢 : 18歳

 レベル : 15 ⇒ 17


 HP : 97 ⇒ 117

 MP : 44 ⇒ 52


 STR : 40 ⇒ 47

  INT : 32 ⇒ 38

 DEF : 18 ⇒ 20

 RES : 33 ⇒ 41

 DEX : 51 ⇒ 63

 AGI : 35 ⇒ 41

 LUK : 51


 □魔法:


 なし


 □スキル:

 <異世界サバイバルセット>Lv4

 ・言語理解 ・簡易鑑定→ ・石投げ→

 ・飲み水整水 ・回復(小) ・浄化

 ・アイテム収納(小) ・着火

 ・周辺MAP制作(範囲小)→ ・気配察知


(ダンジョンコアの原子・XXXX)


 ************************************



 だけど、レベルが上がったからと喜んでは居られなかったのだ。この襲撃で大勢の怪我人が出たからだ。


 それは、『青天の翼』のヒーラーと、エルダさんの所で調達したポーションで、なんとか回復させる事ができたのだが……。


 しかし、村の入口に一番近い家の住人が犠牲になっていた。両親と子供の亡骸が教会に並べられて安置されている。まだ小さい子供だったんだ。その現場を見た僕は、立っている事も出来なかった。そして、その場に崩れ落ちてしまった。


 すべて僕のせいだ。


 僕が、今日、ダンジョンへ入る事に、あの世界に、怖気づかなければ、ダンジョン氾濫は起こらなかったかもしれない。もし、僕が、気を抜いて居なければ、異世界GPSを切っていなければ、魔物の襲撃を前もって察知できたかもしれない。


「全部、僕のせいだ!全部、弱くてダメな僕のせいだ!」


 この世界は、現実なんだ。ただ、ゲームのようなファンタジーな世界に紛れ込んだ

 事を、真剣に捉える事が出来ないでいた。甘く考えていたんだ。


 日本にいる時から、本当は心のどこかで刺激を求めていたんだ。このまま、社会の歯車の一つになって、敷かれたレールの上を、ただ歩くだけなんて我慢できない。なんとなく、そうなんとなくだけど、思っていたんだ。


 だから、両親の反対を押し切って、シーカーになったんだ。だけど、低能シーカーと呼ばれようが、無理して上を目指す必要なんてないとか、コツコツとマイペースで生きられればそれでいいとか……。


 そんなの、そんなのなんて、嘘っぱちだ!


 弱い僕の、強くなれるはずがないと、諦めているダメな僕の、ただの言い訳に過ぎなかった。


 僕は強くなりたい。子供の頃から、本当は、あんなに憧れたシーカーに、最強のシーカーになりたかったんだ。



「まだ、朝までは時間がある、少しは寝た方がいいぞ。後始末は日が昇ってから全員でやろう」


 僕が撒き散らかした撒菱(まきびし)が、其処彼処に散らばっていた。


 亡骸の前で泣き崩れていた僕を、見兼ねたアリシアは、部屋まで連れて行ってくれ、あまり自分を責めるなと、優しく抱きしめてくれた。



                ◇◆◆◇◆◆◇



 未明、村は一部の見回りを残して、寝静まっている。冒険者たちの適切で早い対応で村の損害はそう大きくなかったようだ。


 僕はGPSを駆使し、見張りの眼を避けながら、こっそりと村を出て一人ダンジョンまでやってきた。あの後、考えて、考えて、そして決心が付いたのだ。


 これから、あの時の共有の選択を試そうと思う。どうなるかは分からないけど、もしかしたら、僕の存在が消滅するかもだけど、ここで怖気づいてはいられない。


 勇気を出すんだ。と自分を叱咤しながら、なかなか、その一歩が進まない。それでも、無理やり、自分を奮い立たせた。


 自分に気合を入れて、ダンジョンに一人踏み入った。そして、あの時と同じ世界へやってきたのだ。


 そして、またしても声が響く。


『ダンジョンへの侵入を確認しました。共有を選択しますか?』

(Y・N)


 僕は、紛うことなく”Y”を選択した。


 すると世界は、虚静恬淡な無の世界から一転して、ここのダンジョンの構造形態へと変化した。そして頭の中にすごい勢いで情報が飛び込んでくる。


『ダンジョンとの共有に成功しました。ダンジョンコア原子との共有結合が成立しました。今後、(ダンジョンコアの原子・共有結合)が、スキル<シンクロナイゼーション>に変化し、使用する事が出来るようになります』


 そして、その声が終わるやいなや、現実の世界へと引き戻された。


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