第21話 とりあえず準備です
次の日の朝、皆でギルマスの執務室に行くと、メルベルさんから、僕の冒険者カードを渡された。昨日の内に、作ってくれていたようだ。流石、優秀だ。
冒険者カードの説明もしてくれた。ランクは、下から見習い、銅級、鉄級、銀級、金級、白金級となっている。白金級になると、爵位持ちとなるようで、オッサンは爵位が面倒だと、上げていないとの事。
もちろん僕は、見習いだ。
「よし、今日からダンジョンに入るぞ!と、言いたい所だが、まずは準備が必要じゃな」
オッサンは、やたら熱すぎて、心臓に悪い。
「わしの工房で、お前さんの武器の制作を弟子に依頼してくるが、その前に、防具制作の為に、知り合いの革工房に寄るぞ」
ギルドマスターから、早速依頼が入ったようで、オッサンから、その話は、革工房へ行く道すがら説明すると言われ、オッサン、アリシア、そして僕の三人は冒険者ギルドを後にしたのだった。
オッサンからの説明によると、この街から南に10キロほど行った先に開拓村があるそうだ。最近そこでダンジョンが発見された。
最近になり、裏山でちょくちょく村人が魔物に襲われるようになったので、冒険者ギルドに調査の依頼が入ったようで、調べてみると、隠れたダンジョンが発見され、そこから溢れた魔物による被害だったようだ。
開拓村近くのダンジョンは不必要だとの事で、僕にそのダンジョンを攻略し、消滅させてほしいと言うのが、ギルドマスターからの依頼だそうだ。
それにしても、この依頼、見習いに対しての依頼じゃないよね。
そうこうしている内に、革工房に到着。中には、髭だらけの顔に、少し長い耳、座っているので、身長は解らないが、そう高くなく僕位か?だけど、どっしりとした体格の厳ついオヤジがいた。
「よぉ!ゴンズ元気か!」
オッサンは、その男にそう声をかけると、ドカドカと中に入って行く。
「なんだ、久しぶりだなバッファ。しばらくどこに行ってたんだ?」
「おお、ちょっくら王都までな。それより客を連れてきたんじゃが、ちょっとややこしい依頼だが、頼まれてくれないか?」
オッサンは、そう言うと、僕を前に押し出し、
「こいつの防具を作ってほしい。それと、今、着れる防具があったら、出してくれ」
工房のオヤジさんに、色々とサイズを測られ、裏から冒険者用革製の上着とズボンを持って来てくれた。僕はその服を着替えさせられ、今まで来ていた、バイク用のジャケットとパンツを工房のオヤジさんに渡すように言われた。
「ブーツとグローブは、このままでいいじゃろ。それより、この上下は防御力が足りないからな」
「ゴンズ、防御力の高い革で、これと同じもん作ってくれ」
工房のオヤジさんは、僕の服を色々調べ始め、服のファスナーや、ポケット、ボタン等、興味深そうに、裏返したり、引っ張ったりしている。
「そうだ。こいつを紹介してなかったな。こいつは、ここの工房の主のドワーフで、わしの従妹のゴンズじゃ」
「ええええ!従妹なんですか?師匠ってドワーフなんですか?」
「こいつは正真正銘のドワーフじゃが、わしは親父がドワーフで、おふくろがエルフだ。この街じゃハーフは結構いるぞ。アリシアもじゃからな」
まぁ、見るからに、ムキムキの身体に髭もじゃだけど、かなりの高身長だったから、厳ついエルフだと思ってしまっていた。ドワーフの血が入ってると言われれば納得いく。
僕の服を調べていたオヤジさんが、ファスナーっていうやつが面倒だと、オッサンに相談してきた。その事で、二人は議論しだしたようだ。
しばらく、ぼーっと待っていると。長く掛かりそうだから、アリシアと二人だけでポーションやらアイテムやらの店に行ってくれと言われた。そこで、オッサンの工房で落ち合う約束をして二人で薬屋に向かう事にした。
◇◆◆◇◆◆◇
「エルダばぁちゃんの薬屋は、ここから歩いて半時ほどの所にある。少し時間がかかるが、のんびり行こうか。この街を案内すると言っても、ばぁちゃんの店の行き方くらいしか覚えてないんだ。だから、店までの間、この世界の神話でも聞かせようか」
そう言うと、アリシアは、唐突に、語り継がれているヴォーバルニャの神話を話しだしたのだ。
「この世界は、二柱の神により創造されたの」
この世界の根底をなす天と地と、そしてそこで生き抜く大いなる力を、男神ベルディエル様が造り、その大地の恵みと豊かな自然を女神アルフォーニス様が創造された。
そして、その世界に生きる、エルフ族、ドワーフ族、人族、獣人族は彼らに造られたのだ。
しかし、3000年前の事、男神ベルディエルは、それが失敗だと考えるようになった。何故なら、あまりにもこの世界が平和すぎたからだ。
物足りなくなった男神ベルディエルは、この地に魔素が溢れる場所を造り、その魔素から魔物を造った。その魔物は増殖を重ね、その場所から溢れ出て、人々を襲うようになったのだ。
そこで、女神アルフォーニス様は、男神ベルディエルをなだめるべく力を尽くされたのだが、しかし、それも無駄に終わる。いつしかベルディエルは暗黒の魔そのものである邪神と化していたから。
「そして、神魔大戦は始まった」
壮絶な戦いは昼夜問わず続けられたが、ある時、1人の女性によって幕を閉じる事になった。聖女クロフォーネ様の魔を封じる力によって、邪神と差し違える形で封印されたのだ。
邪神ベルディエルは封印されたが、女神アルフォーニス様も無傷では済まされなかった。邪神ベルディエルと対をなす女神アルフォーニス様ご自身では、邪神ベルディエルを直接封じる事は出来なかったため、聖女クロフォーネ様に己の力のほとんどを注ぎ込み、全てを託したからだ。
そこで、女神アルフォーニス様は、精霊樹に姿を変え、この大地に根を生やし、そこからこの世界を見守り続けてくださっていたのだ。
しかし、神魔大戦の傷跡も大きかった。その傷跡は、今もダンジョンとしてこの地に残ったのだ。
「これが、この世界の神話よ。そして10年前に、まるで精霊女神アルフォーニス様を封じるかのごとく、森にダンジョンができたの」
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