第5話 樹海を逃げ惑う
「わーーーー!」
ゴン!ガシャーーーん!
「なんだよー!」
ヒュー!バンバンバン!
「勘弁してー!」
僕が今、何をしているかと言えば、森の中を必死で走ってるのだ。あちこちから出て来る魔物から逃げながら。
その辺にあった、石やら枝やら土なんかを掴んでは投げ、掴んでは投げしながら、逃げているわけだ。
「わーん!なんだよ、ここ!!!」
ここって、日本の公園ダンジョンでは考えられない位の強力な魔物が闊歩してるじゃないか!
「ハァ、ハァ、ハァー。これは夢だよなぁー!夢だと言ってくれー!」
と、叫んではみても、森に空しく響くだけで、誰も答えを返してはくれない、逆に魔物を寄せ付け、狙われただけだった。
岩場に少し窪んだ所があって、人一人が隠れられる場所があったので、窪みに身をかくして、ようやく一息つくことができた。
魔法陣から出てきた場所は、森の中。今まで見た事のない巨大な木々が立ち並んでいて、鬱蒼とした樹海だった。そして、ここの岩場まで来る間に、角うさぎ5体、シルバーウルフ3体、ゴブリン9体、ホブゴブリン1体、オーク1体と遭遇、その都度、激しい戦闘を行いクタクタだったのだ。
ウソです。怖いので必死で逃げてました。
逃げても、執拗に追っかけてくるので、来るな!来るな!って、手当たり次第に掴んだ物を投げたら、「グギャギャギヤー!」って耳障りな汚い声で叫んだかと思ったら、消滅して魔石になってしまっていた。
「えええ?ここって、ダンジョン内って事なの?」
見た感じ、ダンジョン内とは思われない自然環境だと思うのだけど、今、自分がいる場所がはっきり解らないので、すごく不安な状況ではあります。
開けた場所は無いかと森を彷徨っていると、角の無いウサギに遭遇し、角が無いから怖くないやと、石を投げると、そのウサギの頭に命中した。そのウサギは、痙攣し、血を流して転がったままで消滅しない。
もしかして、角の無いウサギは動物?魔物と動物では、ここでは生態系が違うのかもしれないと思った。ウザギさんはサバイバルナイフで解体して、アイテム収納(小)に収納しました。晩ご飯になってもらう予定です。ありがたやありがたや。
そんなこんなで、魔物との、なんちゃって戦闘も、しこたまこなした所で、頭の中にいつもの声が響いた。レベルが15に上がったようだ。
落ち着いたところで、ステータスの確認をする事にした。
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<ステータス>
名前 : 新田 蓮(あらた れん)
性別 : 男
年齢 : 18歳
レベル : 15
HP : 97
MP : 44
STR : 40
INT : 32
DEF : 18
RES : 33
DEX : 51
AGI : 35
LUK : 51
□魔法:
なし
□スキル:
<異世界サバイバルセット>Lv4
・言語理解 ・簡易鑑定→ ・石投げ→
・飲み水整水 ・回復(小) ・浄化
・アイテム収納(小) ・着火
・周辺MAP制作(範囲小)→ ・気配察知
(ダンジョンコアの原子XXXX)
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「なんか、異世界サバイバルセットがLv4に上がって、・周辺MAP制作(範囲小)→・気配察知というスキルが増えてるんですけど」
周辺MAP制作の所の→をタップしてみると、眼前の左上辺りにゲーム画面のような半透明の小さな画面が表示された。そして、その中央にポツリと青い点が映っていて、その青い点へと移動してきた軌道が薄い色の破線で表示されている。これって、自分の位置と移動ルートを示しているのだろうか?異世界GPSなんだね。
魔物は赤く表示されるようだ。気配察知の効果だろうか?かなり遠くのようなので、これは放置でいいだろう。しばらく、休まないとかなりキツイ。
とにかく喉が乾いたので、スキル<飲み水整水>で水を作ろう。シーカー教習で、水魔法を見せて貰った事があった。何もない所にいくつかの水の玉が出来て、地面にパシャと落ちたのを見せて貰った時は本当に驚いた事があった。僕も魔法が使えるようになりたいなって真剣に思ったものだ。
「水よ!出ろ!!」って手を伸ばして唱えても、汗一つ出なかった。あれ、水魔法とは違うのか?」
整水というからには、電解水素水を作る整水器みたいなものかもと考えた。ふっと前を見ると、黒い靄のかかった場所の下に水たまりがあるようだ。鑑定してみると、『魔素だまり、瘴気が混ざった汚い水』とでた。
「わ!それ、濃いわー」
魔素の濃度がめちゃめちゃ濃そうだ。そこで、そこにスキル<浄化>をかけてみて再び鑑定すると、『純水。飲用不可』とでた。
「ははは、ミネラルとかイオンとか不純物が全くないのね。いい半導体がつくれそうだわ。^^」
そこの水をすくって来て、その水に念じてみたら、なんか水がふわっとした光に包まれ変化したように思う。簡易鑑定で見ると、『きれいで健康的な美味しい水、胃に優しく、ポーション作りにも最適』と表示された。
「おお!胃にも優しく美味しいんだね。こっちは半導体じゃなくポーションが作れるんだ。(作れないけどね^^;)」
<アイテム収納(小)>の検証をした時に、収納したコンビニで購入していたおにぎりを食べ、作った美味しい水を飲みながら、先ほどの戦闘を考察してみた。
ちなみに<アイテム収納(小)>には、荷物が10個ほど入れられるボックスがあり、リュックに入れていれば、1個と判断してくれる。それだと袋に収納して入れれば、ニモパンは防げるみたいだ。
それと時間経過も無いようで、包装を外し、裸で入れてみたおにぎりの海苔が一時間ほど経過してもパリパリのままで美味しかった。もちろん、鑑定してみたから菌とかも大丈夫だった。
◇◆◆◇◆◆◇
先ほどの戦闘だが、実は、走りながら適当に石を投げていたわけではない、<石投げ>のスキルを試していたのだ。実験で適当な石を掴んで、木に投げつけてみたら、木の幹にボコっ!という穴が出来てた。
凹みは、2センチ位だから、小型の雑魚モンスターには致命傷かもだけど、大型のは、あまり利かないかもという感じだった。
そこで、複数の石をまっすぐ投げて見ると、全ての石が別々の木に当たって、同じようにボコっと2センチほどの穴が開き、視覚に入った複数での攻撃判定が一定だという事が解った。
では、複数の石を上に投げれば、どうなるだろう。一斉に地面に落ちた石が等間隔で地面に穴を開けた。石を土に変えてみれば、小さい威力だが、クラスター弾のような広範囲の小規模爆発を起こした。
「これは使えるよな」一人、ごちる。
しかし、小物が複数でた場合は、これで大丈夫だろうだけれど、単体の強敵がでたらどうしたらいいかと考える。鉈を木に投げてみた。
すると、ブーメランのように飛んで、木に減り込んだ。鉈の攻撃力は、結構あった事で、5センチほど減り込んだようだ。攻撃力が大きい武器ほど、投げた時の破壊力が大きそうだ。
オーク単体だと、クラスター弾と、鉈投げでなんとかなったが、それ以上の強大な敵が複数出た場合は、一人での対処は難しい。どうするかな?って所ではある。
そう考えていると、走り回った事で疲れが大きかったのだろう、とても眠くなったので、自分に<浄化>をかけ、魔物に見つからないように臭いを軽減したあと、周りの魔素をこれまた<浄化>で薄め、リュックに入れていたアルミ製のブランケットにくるまった状態で眠りについた。
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