読了後の第一の感想が「この物語の厚みで16000字……? バグ……?」でした。でもあとがきを読んで理解しました。バグではなかったです(当たり前)、作者様の見事な手腕によるものでした。
濃厚な世界観になればなるほど文字数は増えます。歴史を語ったり技術を説明したり。そしてSFロボット作品になると機構の解説などが入るので文字数で目潰しをすることもできるのではないでしょうか。ふざけました、すみません……。
あとがきで作者様が語っている「登場人物を絞り、冗長だと思われる描写を省き、時間軸の移ろいは話数の切り替えに委ねる」という部分ですが、これは一歩間違えると味気のない作品になってしまう危険性があります。ですが、この部分がとても上手い。会話の自然な流れで人物像を伝え、ロボ好きでない人が敬遠してしまう専門的描写を極力抑えてヒューマンドラマの要素も組み込んでいる。スリムな物語ですが密度が濃いので不足感を感じない、むしろ大満足な作品でした。作者様の創意工夫が随所で感じられます。
個人的な感情になってしまいますが、難しいことを易しく伝えようと工夫している文章は大好きです。芸術性や専門性に富んだ「作者が気持ちよくなれる文章」も個性やこだわりが光って良いですが、疲れた頭にもスッと入って来るような作品が必要な時もあります。優しいSFロボット作品入門編として、ぜひ周りに勧めたいと思いました。
古代の遺物を使った巨大兵器『古神兵』、それと戦う人間の技術の結晶であるロボット『国掴神』。ワードセンスが秀逸すぎて脱帽です。そしてロボットは人が操るものなので、そこに魅力的なキャラクターがいないと当然成り立ちません。悲惨な生い立ちを持つ技術者主人公の二面性、そんな主人公の復讐を委ねられたパイロットのヒロイン。ロボと人間の魅力が融合した時、SFロボット作品は真に面白くなります。そしてこの作品は、当然とっても面白いです!
物語は三部作とのこと。続きを楽しみにお待ちしております!