閑話6 学内小会議室C【退魔師の内緒話】
【絶華 輝夜】
巡視艇を降りてから、名古屋市内で1泊して。日曜の午前中は星崎を引き連れての名古屋観光、そして再び中部国際空港経由で帰って来た。
正直、今日は帰って全てを忘れ、泥の様に眠りたい所だが、目を閉じるとあの光景を思い出してしまう。
「昨日はすまなかった。少々精神的なショックが大きくて、まともに話が出来る状態じゃ無かったんだ」
「いえ、巡視艇に張った多重結界が2度目の衝撃では消し飛んでしまいました。私自身も沙姫さんの身代わり符が無ければ、今頃入院しています」
「ねえ絶華君、あの2度目の衝撃の後、島から溢れ出してた瘴気が跡形も無くなったように感じたんだけど、いったい何があったの?」
「いつも通りだ、1回目は開発が中止された付近に落ちていた、秘仏らしきモノを星崎が踏みつぶした」
「は~ 踏んじゃいましたか」
「しょうがないですね、星崎さんですし」
「いや、あの濃密な瘴気溜まりの中で『いい天気です』とか『風がきもちいい』なんて言われたんですよ、こっちはどう答えていいのか・・・本当に困りました」
「そうだな、星崎に違和感を感じたと云われて、さすがは【御崎の大海瘴】だと思ったのに、まさか虫がいない事を気にしていたとは・・・」
「ああ、『のどかな場所』だとか『虫がいないならキャンプが殺到』なんて言われると、まったく見えているモノが違うんだと納得したよ。次回は盤動さんにお願いするね」
「絶対にイヤです・・・というか無理ですよ。あれだけ距離があったのに、私が全力で張った多重結界が消し飛んだんですよ。
あんなの至近距離で受けたら私生きて無いです」
なるべく冷静に、あの時の状況を思い出してみる。
「すまないが、あの2回目についてだが、あれが何なのか正直分からない。巨大な玉座に座っていた何かの・・・・断末魔だ。
そいつが右手で星崎を叩き潰そうとして、その右手が消し飛んだ」
「輝夜、ちょっといいか?」
「なんだ、涼慶」
「いや、星崎が移動中に話していた海の邪神って、きっとあんなのだよな」
「やっぱり、あれは神か?」
あの、存在感はそうか、
「ああ、元々なのか、開発工事で狂ったのかは分からないが、あれが
「星崎の事は別にして、昔の人はよくあんなのを封印しようとしたもんだな」
「まったくだ、人数がいたとしても、ダムの水を手で押さえるようなものだろうな」
祝永さんが、困った顔で首元から勾玉を取り出して
「絶華君、志堂君、私も天梨紗ちゃんもコレが無かったら危なかったと思うんだけど」
「そうですね、1度目で船が転覆していたかもしれません」
「そういう意味では、我々は運が良かったのかな?」
「貨物船の事故が先月だったら危なかったな」
「そういえば輝夜、島の調査結果は出たのか?」
「いや、調査は継続中、でも、いまのところ瘴気の残滓すら見つかって無いようだ」
会議室にいる全員が、まるで打ち合わせたかのようなタイミングで、一斉にため息をついた。
「さすがに今回は疲れた。少し休ませてもらいたい気分だ」
「ああ、次回は星崎に本を持って来てもらって、祝永か風念寺だな。盤動さん、星崎の本が基点に使えるという前提で話をするが、基点の入れ替えはどうするんだ? 何か準備が必要なら手伝うけど?」
「はい、基点の入れ替えには2人必要なので母が来る予定です。正直にいうと前回見せて貰った小道具の本でも大丈夫に見えたので、あれ以上の存在感を持つ本なんて想像もつきません」
「まあ、どんなモノを持って来るか、どっちにしろ実物を見て決めればいいさ。それより高校生の方が夏休みが短いんだから休みの予定を教えてくれ、合宿の日程を決めるから」
「はい、そういえば合宿って何日位ですか?」
「星崎のお宅訪問もある、やっぱり1週間くらいは行きたいね」
「
「
「ぜひ、金属製の
「ちょっと待て、涼慶、俺は風念寺で
「ああ、ウチの宗派では使わない。まあ、ロマンだな」
「・・・おまえ、なにか吹っ切れてないか?」
「御神木の数珠を身に付けたんだ、もう、些細な事を気にするのはやめた」
「そんな事を言っておいて、実際に星崎を焚きつけたら、どんな物ができるかわからないぞ」
「大丈夫だ、頼むのはゲームの小道具だ。これは断じて仏具では無い」
「それに今はアルバイト代以外の現金が渡せないんだ、祝永さん、星崎のフォローをお願いします」
「まかされました。せっかくですからウチの神社に来た時に食事会でもしましょうか?」
「それはいいな、ぜひお願いします」
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