第4章 そして世界は動き始める
第1話 魔導具(仮)
第1章の退魔師堕とし直後です。
【盤動 天梨紗】
おかしい、夏の合宿までに、じっくりと新しい結界の実験をして、
自分自身のレベルアップをする予定だったのに・・・・・
いま、私の目の前で神奈川県の永久封印【退魔師堕とし】が、文字通り堕とされたところ。
荒れ果てた庭の日本家屋が、本当に良く見える。さっきまで瘴気で見えなかったのに。
さっきの振動は、車に張った結界に【退魔師堕とし】の断末魔を受けた影響のようです。よかった、あの巡視艇の時みたいに弾け飛ばなくて・・・
「天梨紗ちゃん、大丈夫?」
「私は大丈夫ですけど、沙姫さん、コレ、ちょっと変じゃないですか?」
「そうよね」
「この【退魔師堕とし】は、そこまで緊急性の無い霊障ですよね? リニアって言ってもまだ調査ですし、1ヶ月や2ヶ月対応が遅れたとしても問題無いはずです。
少なくとも【御崎の大海瘴】の直後に当たるモノでは絶対にないですよ」
「上が星崎君の力を測っているのかな?」
「測るといっても、急ぎ過ぎです。星崎さんみたいなイレギュラー、こんな事で失ったら取り返しがつきませんよ」
「そうね、そうすると何か急ぐ理由があるんだろうね」
「理由? 考えたくないですが、どこかで切羽詰まった状態の永久封印クラスが順番待ちしているわけですか?」
「その可能性は否定できないわね」
私は知っている限り全国の永久封印を思い出してみた。
「いくつか永久封印を思い出してみたんですが、早急な対処が必要なんてどこでしょう?」
「私も思いつかないのよ。情報が隠されているのかな? タチバナ君の行動からすると、近畿圏の可能性が高いわね」
「つまり、夏休みの合宿ですか?」
「ただ、気になるのが、さすがに詰め込み過ぎだから。もしかすると複数を連続で対応可能かどうか確かめようとしているのかも?」
「今回みたいに【御崎の大海瘴】→【退魔師堕とし】みたいな事ですか? 」
「絶対に当たって欲しくない想像だけどね」
ああ、やっと3人が車に帰ってきました。さあ帰りましょうか。
寿富堂
【盤動 天梨紗】
家に帰ると母が帰ってきていました。
「ああ、お母さん、やっと帰ってこれたんですね?」
母の顔色が若干悪い
「天梨紗ちゃん、あれ何?」
ああ、そういうことですか。
「あの本を見たんですね? あれならウチの教会の霊的基点に使用しても大丈夫だと判断しました」
「そうじゃなくて、あんな危ないモノをどこで手に入れたの?」
「せっかくお願いして貰って来たのに、危ないモノは無いでしょう。
黒い方はあげませんからね、イギリスには重たい鉄の本を持って行ってください」
ウチはギリギリセーフを使います。そっちはギリギリアウトな本を持って行ってください。
「そうじゃなくて、あんな危ない雰囲気の本、中にいったい何が書かれているか。
あんなの教会に持っていけるわけないでしょ?」
「何を言ってるんですか? ちゃんと見ましたか? 中は白紙ですよ。 外側だけです」
「あんな怖い本、設置室程度の結界じゃ危なくて開けられないわよ。本の形状からヨーロッパのどこかで造られたものでしょ? 中が羊皮紙じゃない所をみると黒い本は300年前後、金属表紙の方は500年以上前の本よね?」
「古く見えるけど、アレは日本製で造られた年代は・・・いいとこ5~6年前のはず」
「どっちの本が?」
「どっちもよ」
埒が明かない。私はポケットからロザリオを取り出して、母の顔の前に突き付けた。
「これと同じで、作った人が少々アレな人ですが、間違いなく最近作られた物ですよ」
ロザリオをまじまじと見ながらも、目の焦点がロザリオに合ってない。
「天梨紗ちゃん、これ作った人をイギリスに連れて行けないかな?」
「今、夏休みを前に、その人に『曼陀羅呪物』の中身を減らして貰っている最中なの。イギリスに連れて行ったら一週間で返してもらえる?」
「最低3年くらい、向こうに、いてほしいんだけど」
「話にならない。それに・・・おそらく、もう上が動き出したから、上が国外に出してくれないんじゃないかな?」
「そんな~」
「そんな事より、これだけの本をタダで頂く訳にはいかないよね? 後で口座を教えるから、ソコに対価を振り込んでね」
「教会本部にも相談するけど、いくらなの?」
「そっちで決めて。こっちはお父さんと相談する」
「そんな~ 教えてくれてもいいでしょう?」
「いや、こっちも決められなくて困ってるの。基点の本と、このロザリオの対価、それに『曼陀羅呪物』に設置された11点と、設置室に持ち込まれた25点の完全な無害化費用」
「その人に相談とか?」
「無理!! 本人には何一つ教えて無いのよ。荷物運びのアルバイトくらいの感覚で仕事させておいて、実は猛獣の檻に突入させてるの。ホント、タチバナさんには、早く説明してもらわないと」
「お父さんに、相談してもいいかな?」
「いいですけど、後でタチバナや祝永神社や風念寺に、振込額を比べられる可能性があるからね」
母がロザリオを指さして・・・
「他の団体にも、こういう物が渡っているの?」
「ウチは破綻寸前だったから、他の団体に相談して優先してもらったの。当然、今はウチが一番恩恵を受けてる。『巌止教会はこれだけの事をやらせておいてコレか?』って言われたら、今後、この業界でやり難いと思うよ?」
「そうね、そんな事を言われたら、ウチからの協力要請を受けてくれない可能性があるわね」
「なので、その辺は各団体の上と相談してください。タチバナは輝夜さんが代表だけど、祝永神社と風念寺は上同士で話してもらったほうがいいと思う」
「わかった、ありがとう天梨紗ちゃん、そっちと話をしてみるわ」
こっちも釘を刺しておかないといけませんね。
「お母さん、祝永は一族の呪いの解呪が掛かってるから、本気であの人を取り込みにきてるの。その上、祝永神社に招待して食事会をするはずが、急な依頼で2度も先伸ばしにされて焦ってるから。祝永の前でイギリスに連れて行くとか、口が裂けても言わないでね」
「わかった・・・絶対に、言わない」
「それで、基点の入れ替えはこれからでいい?」
「今から? 空港から来たばかりで、お母さん少し疲れてるんだけど」
「それだけ元気なら大丈夫よ。せっかく帰って来たんだから、明日は挨拶がてら、いくつか外周結界の補強をお願いね」
「え~」
「私が学校に行っている間に済ませておいてね。さあ、基点を入れ替えようか?」
※申し訳ありません。
第1章第2話【退魔師堕とし】のある県の設定を間違えておりました。
✕栃木県内を北に向かっている
↓
〇神奈川県内を北に向かっている
m(__)m
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