第3章 暴露と緊急事態
第1話 暴露
南関東大学食堂にて
【星埼 昂志】
すみません。僕、星埼昂志は・・・現在知らない人達に囲まれてピンチです。
この場合はどうしたら良いんでしょうか?
午前中の授業が終わってから教室を出た所で、3人の男性(だぶん学生)に名前を確認されてここに連れてこられました。
僕を取り囲む人間が、いつの間にか3人から8人に増えている。
僕は勇気を出して聞いてみることにした。
「あの? 僕に何か御用ですか?」
僕の眼の前にいる恰幅の良い黒縁メガネの男性がニヤリと笑って
「我々は南関東大学アナログゲーム研究会の者だ、それで話が通じるだろう?」
ん? アナログゲーム? もちろん、それなら聞くことはある。
「アナログゲーム研究会ですか? どんな活動をされているんですか?」
黒縁メガネの男性は、少し戸惑いながらも答えてくれた。
「ボードゲームやカードゲーム、もちろんTRPGもやっているサークルだ」
おお、やっぱりか
「そうなんですか、TRPGはどんなジャンルをプレイされているんですか?」
そう、これを聞かなきゃ話にならないよね。
「今は、ファンタジーTRPGとコズミックホラーだ・・・・いやそうじゃなくて」
やっぱり、僕も王道はそれだと思う・・・ ん? でも違うのか・・・
「そうじゃない? それ以外だと、SFか現代モノ・・・もしかしてスチームパンクな奴ですか?」
「ちがう!!」
それも違う・・・となると・・・・
「じゃあ、荒廃した近未来のサバイバルモノですか? ひょっとして海外の・・・さすがは大学のサークルですね」
「そうじゃなくて、我々は君とそういう話をしに来たのでは無い。我々は君に意見を言いに来たんだ」
え? ゲーム談義じゃないの?
これまで自由に動いていた、僕の口が途端に重くなる。
「僕に・・・意見ですか?」
「そうだ」
「そちらとは・・・多分初対面ですよね? なにかありましたか?」
「何かではない、おかしいだろが?」
「おかしいですか?」
「そうだ、なぜ8人いる我々のサークルに部屋が無くて、君達には確保出来たんだ?」
「なぜでしょうか?」
「こっちが聞いているんだ」
「いえ、そういう話を、なぜ僕に話されるんでしょうか?」
「君がサークルの代表だからに決まっているだろう?」
なんだって~
「すみません、何か勘違いをしていませんか? サークルの代表と
「もちろんウチも代表とGMは別だが・・・それでは、君がサークルの代表では無いと言うのかね」
「そういえば、ウチのサークルって代表は誰なのかな? そもそもまだ名前も決まってないと思いますよ」
「なんだと・・・・・」
てっきりタチバナ君が代表だと思ってたけど、サークルルームを確保してくれたのは志堂君だし、祝永さんは上級生だ、さて誰にやってもらおうか?
「これは流石に決めないと不味いですね。ご指摘ありがとうございます」
それを聞いて、今度は眼鏡の男性の横にいる、フレームレスの眼鏡をかけた痩せた神経質そうな男性が騒ぎ出した。
「そんなサークルが・・・・何故サークルルームを確保できるんだ」
「たぶん顧問の存在と学科枠のサークルらしいので、それじゃないですか?」
思いつく理由は、それぐらいじゃないかな?
「ふざけるな。おまえら、ニセ学生まで入れて何をやっているんだ」
今度は、よく解らない言葉が出て来たぞ・・・ニセ学生?
「あの? ニセ学生って何ですか?」
「こちらで調べはついているんだ。あの金髪はウチの学生じゃあ無いだろう?」
「え?」 どういうこと?
「はーい、ストップ。誰かしらないけど酷い事をするね」
タチバナ君が間に入ってきてくれた。
「なんだ貴様は、ニセ学生なのは確かだろうが」
タチバナ君が不敵な笑いを浮かべている。あれ? もしかして怒っている?
「あのね~君達。こっちは大学側の許可まで取って、彼女の事でウチのGMにサプライズイベント仕掛ける予定だったのに・・・まさか、こんな形で台無しにされるとは思わなかったよ」
「・・・サプライズイベントだと?」
「実は・・ってヤツ。それにニセ学生扱いされた彼女は、ちゃんと大学側には聴講生として登録されているんだ。彼以外は全員知っててイベントを企画してたのに、さすがにコレは無いわ」
ああ、食堂の中でざわめきが大きくなっていく。
『サークルのサプライズ潰されたんだって』『しかもニセ学生呼ばわりって』『ありえね~』『本人にネタバレするって正気か?』
うわあ、アナログゲーム研究会が晒されている・・・でも先に聞かないといけないな
「タチバナ君、ちょっとサークルルームに行こうか」
「ほら、お前らのせいで、俺は折角仕込んだサプライズを潰された上に、これからGMに説教を受けるんだぞ、どうしてくれる?」
「大丈夫だよタチバナ君、ちょっとお話をするだけだから」
『さすがに、あれは可哀そうだな』『サプライズ潰されて、あげくに説教か』
『きっとサプライズが成功してたら笑って終わってたのに』『あいつらアナログゲーム研究会だって、ホントに最低だな』
そして、サークルルームにて
「それで、盤動さんについては、本当の所はどうなの?」
「大学側の許可を受けた聴講生だから、正確にはニセ学生では無いんだけど、まあ商学部なのはウソだな」
「何か理由があるの? そういえば実家は教会を管理しているって言ってたね、何が事情があって入学出来なかったとか?」
「いや、事情も何も、それ以前に年齢が足りてない」
「へ?」
「実家の関係で宗教学の授業を聴講してはいるだけで、本人は現役の女子高生だからな。昼間は普通に高校に通学している。だから夕方にしかサークルに来てないだろ?」
「じゃあ、家の都合とかじゃなくて」
「いや、星崎はあの子のお父さんにも会っているだろう? 単に一緒に遊ぶのに引き込んだ」
「良かった。複雑な事情だったらどうしようとか考えてた」
「まあ、女子高校生が大学の施設内にいると目立つから、服装やメイクにも気を付けさせてたけど。これだけ騒ぎになったんだ、次からはもう制服で来させても大丈夫だな」
「本当にびっくりした、心臓に悪いよ」
「こっちも驚いた。しかし今回は災難だったな、でも確かに、サークルの名前や代表は決めとかなきゃいけなかったな」
「でも、なんで黙ってたの?」
「初対面の時に、女子高生ですって説明しておいた方が良かったかな?
見ず知らずの、それも女子高生が相手だと、星崎が変に緊張して一言も話せなくなりそうだったんで、とりあえず黙っててもらったんだが?」
「・・・ごめん、それ全然否定できない」
「しかし星崎が寿富堂のバイトを受けてくれて助かったよ。祝永さんや
「理由って、何?」
「いや、神社や寺の関係者ばかりだからな。向こうで知り合いに会うと、かなり気まずいらしい」
「そういえば中国の壺とか仏様とか色々あるよね」
「ああ、教会の関連施設の中で仏教関係者同士とか神道関係者同士が鉢合わすと、お互いに微妙な感じになるんだそうだ」
中華料理店でフレンチとイタリアンのシェフが鉢合わせする感じかな?
「いやかもしれないね、きっと」
「まあ、今回の事は盤動さんの女子大生の振りも、もう限界だったから丁度良かったかもな」
「そういえば教会の方は盤動さんが管理しているんだね」
「ああ、教会は元々はあの子の、亡くなったおばあさんが管理してたんだ。お母さんは教会の関連でイギリスに行ったままだし、実質その教会の責任者になってるよ」
「学校に行って、教会の責任者って こっちに来ていて大丈夫なの?」
「実は、あの子が管理している
「・・・責任は重いんだね」
「ああ、今頃泣いてるんじゃないか」
「いや、なんで?」
「さっき俺が『緊急事態。星崎に盤動のニセ学生がバレた』ってメッセージを送ったから」
「いや、僕は怒って無いって言っといてよ」
そこに、慌てた様子で祝永さんが入ってきて
「ねえ、
「他のサークルの学生が星崎に絡んで来て、あの子がニセ学生なのをバラしていった」
祝永さんの綺麗な顔が引きつった
「いや、祝永さん。タチバナ君からちゃんと理由も聞いたから、もういいんだけど。僕から盤動さんに電話した方がいいね」
「そうね、泣きながらひどく落ち込んでたみたいだから。お願い」
深呼吸をしてから盤動さんに電話をする。
「もしもし、盤動さん?」
『星崎さん・・・ごめんなさい。私、嘘をついていて』
いけない、物凄く気まずい・・・
「大丈夫、気にして無いから。泣かないでね」
『でも、私、ずっと嘘をついてきて』
「大丈夫、大丈夫だから、また一緒に遊んでね」
『ごめんなさい、本当にごめんなさい』
そのままずっと、電話で盤動さんを宥め続けた。
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