閑話2 学内小会議室C【退魔師の内緒話】



【絶華 輝夜】


「すごかったな・・涼慶すずよし


「ああ、ぜんぶ消し飛んだな・・・輝夜かがや


「2人共、よくあの状況で星崎君と会話出来たわね。私なんか、あまりのバカバカしさに笑いそうになったわ」


「輝夜が上手い事言って星崎に先頭を歩かせたのは流石だったが、まさか石碑を蹴倒すとはな」


「あの、濃厚な瘴気の中を平然と進むのを見た時は、あいつが途中で倒れないか心配してたけど、まさか最後まで何も異変に気付かずに終わるとは思わなかった」


「事前の打ち合わせでは、星崎が少しでもおかしな行動をしたら、2人で担いで逃げる予定だったのにな」


「ああ、念の為、救急車も近くに呼んであったが、無駄になって本当に良かった」





そうなると、今後は・・・


「星崎名義の特別口座開設を急いでもらわないとな。都の観察対象案件だから別の退魔師の調査確認が済み次第、今回の依頼料が振り込まれるんじゃないか?」


「ああ、しかし、あの【山伏の碑】が瞬殺されるなら関東圏にある、あれ以上って・・・全部、永久封印にならないか?」


「土地や建物に対する霊障なら間違いなくそうだな。後は特定呪物に対応しても大丈夫じゃないか?」


「そうだな、ウチの寺や祝永神社の特定呪物か」


「それと、寿富堂じゅふうどうの曼陀羅呪物かしら?」


それを聞いて、涼慶と顔を見合わせる。


「「さすがにアレは危ないでしょ?」」


風念寺の封滅堂、祝永神社の封印倉庫、どちらも曰く付きの呪物が多数封印されている。封滅堂は300年に一度、建物ごとめっせられ。封印倉庫は中の呪物全てについとなる樹木と形代かたしろでツナグ事で、百年単位の時間を掛けて浄化を行っている。しかし、曼陀羅呪物は・・・


「寿富堂の巨大な地下空間に螺旋状に呪物を配置する事で、互いの呪力を干渉させて弱める。

螺旋の中心に巌止いわと教会を置いて、関東周辺12ヶ所の教会と結界陣を組んで巨大なフタにして封じる。地下の呪物と地上の結界が作る曼陀羅呪物」


「関東をフタ使う、あんな代物に星崎を絡ませるのはさすがに危険過ぎるでしょう?  文字通り地獄の蓋を開けかねませんよ」


涼慶すずよしの言う事も、もっともだ。星崎の力についてもまだ未知数だ。正直、あんなバランスの危ういモノに近づけたくない。


それは祝永の姉さんも分かっているはずだが?


「もちろん、細心の注意を払わないといけないわね。でも外周から順番に対応していかないと、そろそろ寿富堂の方が限界みたいなの」


「寿富堂が・・・限界? 緊急事態じゃないですか、そんな話まったく聞いて無いですよ?」


「祝永に連絡があったのが昨日だったの。地下の呪物は限界、地上の教会も結界として何ヶ所か使えなくなっているの」


「地下と地上、どっちもですか? それって、地獄のふたが開く一歩手前じゃないですか」


「それに、肝心の巌止いわと教会の基点に緩みが出来ているの。結界を完全に修復するには基点自体を入れ替えて、12ヶ所の教会に施された結界を張り直す必要があるんだって」


関東を覆う結界の基点に耐えられるモノ、それを用意するか? そんなモノ

現代の日本にそもそも存在するのか? それに・・・・


「しかし、あそこは盤動ばんどうの管轄です。うかつにコチラから口は出せませんよ」


「だからと言って放置は出来ないでしょう? だからいっそのこと、あそこの次代をこのサークルに誘ってみようかと思ってね」


盤動の次代?


「ちょっと待ってください、あそこの次代はまだ高校生のはずです。さすがに大学のサークルに呼んだら、星崎が変に思いませんか?」


「服装にさえ気をつければ、高校生とはバレないでしょう。星崎君も顔の広い人間じゃないし。それに、あの子から星崎君に寿富堂でのアルバイトを紹介すれば、表立ってアルバイト代が渡せると思うんだけど」


「確かに、寿富堂ならアルバイト中の監視も食事を取らせる事も可能ですね。それにあいつに手渡し出来る報酬はありがたい。ある程度多くても違和感を持たれないでしょうし」


「しかも、寿富堂なら、あまり人と接するのが苦手な星崎君でも大丈夫」


「それなら、祝永さん。盤動の次代と連絡を取って貰えますか?」


「ええ、天梨紗ありさちゃん本人も色々と相談があるみたいだから、聞いてみるわね」




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