1日目 日曜日

 結局七瀬さんと一緒に住むことが決まった昨日はなんとも気まずい空気になったため、僕は銭湯に行き、公園で一人徹夜していた。

 はっきり言って眠い。昨日七瀬さんが風呂に入ってから家を出たから、出掛けていると思ってほしい。

 そう思いながら家のドアを開けると、ホテルマンのように前に手を添えて今にも「いらっしゃいませ」とお辞儀をしそうな七瀬さんが立っていた。

 出た言葉は「おかえり」でお辞儀はしなかったが。

 反射的に「ただいま」と口から出たが、僕が帰ってくるまで待っていてくれたんだろうか。

「どこに泊まったの?」ここで嘘をついてお金を払わせるなんて申し訳ない。ここは本当のことを言おう。

「散歩してたよ。」「ずっと?」「うん」あながち間違っちゃいない。「今日からは家に居ていいから。」相変わらずの無表情。

「朝ごはん作るから待ってて、昨日から何も食べてないんでしょ。」「夜は食べたから問題ないよ。」「座ってて!」「···はい。」無表情だから怖すぎる。

 何か怒っているんだろうか。

「別に気を遣わなくていいのに。」小さい声でそう言った。

「えっ、何か言った?」聞こえてないフリ。

「別に何も。」時間が経てばこの冷たい感じの口調も直るのだろうか。

 しばらくすると七瀬さんがご飯と味噌汁を作ってくれた。たとえ春でも夜は肌寒くなっていたため、食べると身体の芯から暖まってきた。

「今日はゆっくりしてて。明日は学校でしょ。」

「そうだけど···」

「いいから!休んでて!」

「はっはい。」半ば強引に部屋に押し込まれた。

 眠くなかったがベッドで橫になったらすぐに眠ってしまった。


 いつの間にか眠ってしまった。家事をしようと思っていたのに。この家に来てから何も出来ていないし、少しでも役に立たないと。

 あれから10時間くらい寝てたからちょっと風呂に入らないとな。

 ああ眠。

 そう思いながら洗面所へ向かうと、ある光景に釘付けとなった。

 濡れないようにタオルを巻いている髪、ほんのり赤くなっている頬、濡れたタオルが美しいボディラインを見せつけている。

 ここは天国かな?夢でも見ているんだろうか。

「ちょっと、いつまで見てるの?」七瀬さんの冷たく軽蔑した声と、かなり怒っている鬼の顔が僕を現実へと引き戻した。

「ごっごめんなさい。」急いでドアを閉める。

「リビングで待ってて。」その冷たい声が僕の人生の終わりを告げていた。

 そのご、ノックもせずに洗面所へ入ったことを土下座で七瀬さんに謝り、金輪際しないことを誓った。

 僕も家に居るんだから何か手伝いたいと言うと、七瀬さんは「お金を私に払ってくれてるのに、それは申し訳ないし、家事は私で全部やるから。気にせず生活して。」と言ってくれた。

「そんなこと言ってたら、僕は七瀬さんが契約した部屋に居候させてもらってるから、僕が家事全部するって言ったら。」

「うっ、確かに。そうだね。」納得してもらえたみたいだ。

「これからはできる時にお互い協力して家事をしていこう。」

「うん。斉藤くんも家で寝ていていいから。」

「うっ、女子と一緒は気まずいから。」

「気にしてたら斉藤くんここに住めないじゃん。」

「そっそうだね。これからは気にせずに過ごすよ。」多分無理だ。

 ずっと部屋で過ごそう。


 この日は先に風呂に入って、お湯を抜いてからまた沸かし直した。

 そして早く寝た。

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