第27話 魔剣士が地上に戻ったら
光が収まると視界には前にも見たような広場が。
あの赤い石板が出てきた第10層だ。
「ここ……は──あぁ、そうか」
懐かしいと感じてしまうほど、どうやら俺は長く濃密な時間あの地下ダンジョンにいたらしい。まぁ、
最初は訳の分からないところに飛ばされて──まぁ自分の好奇心のせいでもあるのだが──、そして戻ろうと決意した矢先についさっきまで戦っていた
その後出会った、自分が
そして突然ダンジョンが縮小したと思うと出てきた三体の強大な
その頃にはジュシュアはもう限界だった。
正直、ジュシュアと共にあのダンジョンを脱出したかった。だが、あの日記を読んでしまったら……あれでよかったとも思えてしまう。
「……」
これ以上考えても意味ないだろう。
俺はジュシュアから教わったものや、託してくれた思いを胸に抱えて生きていくんだ。
「──ん?」
俺が無事生きてここに戻ってきた実感を噛みしめていると、奥に気配を感じた。そう言えば、この石板に乗る前にも誰かの気配を感じたような……。
一応数年経っているはずだが、実際数年経っているとは限らない。ダンジョンの中には時間の進みが遅かったりするものもあるからな。
まぁそれを確かめたいのだが、それよりもまずはさっきからビンビンに感じる気配の正体を確かめてからだ。
やはりあの自称神をぶっ殺してから感覚が鋭くなっている。前の俺だったらできなかったことだ。
「さて、そこにいるのは誰なんだ?姿を現せよ。場合によってはここから斬るぞ」
そして俺は腰の刀に手を添える。すると奥から本当だったらありえない笑い声が聞こえた。
「──ははっ、それは困るな。せっかくの再会だというのにさ」
「────は?」
その声は、気の弱そうな声のはずなのにどこか芯があって、いつでも俺たちを励まし、人類最大の偉業を成させてくれた、俺にとっても、そしてこの世界に住む全ての人にとっての恩人であり。
そしてある種俺があんな生活を強いられるきっかけになった人であり。
本来だったらあの日、死んでいたはずの人である、ここにいるはずのない
「─────生きてたのかよ……っ、ふざけんな」
「……ごめんね」
死んだはずの、勇者が、そこにいた。
「なんで生きてるんだよ、お前」
「いやぁ、まぁ、簡単に言えば死を偽装したんだよ」
「死を偽装した?」
「そ。あの死体、よく見てなかったでしょ?」
「……あぁ、そうだな。あの時はすぐに俺を糾弾し始めたからな。死体なんて見ている暇なんてなかった」
「あの死体、よく見れば別の人なんだよね。僕の顔に似ている人の皮を被った」
「……えぐいな、それ。あれは元々国の奴らと話はつけて、そんでやったってことなのか?」
「違うよ?国が、というか、一部の貴族が僕を本当に殺そうとしたんだよ」
「……は?」
なんだよそれ。
そしてそれを聞いた瞬間、俺の脳裏にはあの日記が思い浮かんだ。もしかすると、最初は国そのものは恨んでいなくて、次第にその復讐の対象が大きくなったのかもしれない。
全ては想像でしかないが。
という事は、腐っているのは一部の貴族……?
「今回、僕を殺そうとしてきたわけだけれど、運がよかったと僕は思ってる」
「……運がよかった?殺そうとしてきたことを、か?」
「うん。元々僕の顔に似ていた皮は手に入れていたからね。そんで、殺そうとしてきた暗殺者を逆に殺して、頭に皮を被せて、その場に転がして王都から逃げたってわけ」
「……なるほどな。でもなんで逃げたんだ?別に逃げなくても……」
「逃げる必要があったんだよ。あのままだと本当に殺されたかもしれないんだから」
「……なる、ほど?」
「まぁそこら辺は気にしなくてもいいよ。全て、終わったんだから」
「……終わった?」
「そ。終わったんだ。何もかも」
そして勇者は見たことのない笑みを浮かべた。その笑みに、俺は見覚えがあった。
「……お前、まさか」
「僕はね、まだ許してないんだよ」
そして勇者は目を大きく見開き、両手を大きく広げた。その姿は勇者には到底見えないもので、俺は悪寒を感じざる負えなかった。
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皆さん新年あけましておめでとうございます!
もう元旦から四日が経って遅いとは思いますが、今年もよろしくお願いします!
中々更新できずに申し訳ございません……!
モチベがなんか別の作品に傾いていて──これは言い訳ですね。
もう少しでこの作品も終わりが近づいてきました……!最後までお付き合いいただけると幸いです!
改めて、今年もなるべく多くの作品を書けるように頑張ってまいりますので、是非読んでもらいたいなと思います!よろしくお願いします!
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