第15話 田舎 2

 都会人が田舎に憧れて移住する話がよくテレビで取り上げられる。良い人、良い空気、良い水、ゆったりした時間、絵のようなスローライフだ。

 あれを観たら自分もあんな暮らししたいなあと思うのも分かる気がする。だけど、何もしないのに近所の人が野菜を届けてくれるわけではないし、何もしないのに人がその家に集ってくれるわけではない。田舎の人々はどちらかと言えば、純朴で悪意があるわけでは無い。ただ、田舎には田舎の掟が有る。その掟を守り、若ければ労力を提供してくれることがあって村人と認められるのだ。

 ここで言う若さは絶対値ではない。相対値なので、70でも80台から見れば遥かに若いから、色んな力仕事が回ってくる。それを考えないで田舎に行ってもうまくいかない。

 まず、田舎に行くと道普請がある。大規模な道路工事は自治体がするが、小さな穴や草刈りなどは地域で住民が無料で請け負う。放っておくと道に草が覆い通れなくなるので、草刈りを住民で行う。道路の穴は、自治体から提供されたインスタントアスファルトやインスタントセメントで塞ぐ。しかも当然住民総出なので欠席はひんしゅくを買う。罰金を取られることもある。都会人の常識から言うと、おかしいのだろうが、田舎はそれで成り立っている。それを否定してもうまくいかない。都会の論理では成り立たないのだから、どうしようもないのだ。

 Uターン組は縁故があり、元々生活を知っているのだから問題無い。自分の育った田舎とは違う土地に住むJターン組もある程度田舎を理解しているのでなんとかなるだろう。問題は、都会育ちで田舎に幻想を抱くIターン組だろう。

 テレビをうのみにして、田舎暮らしをしようとした人の多くはこうして夢破れて都会に舞い戻っていく。そうならないためにも移住するなら、仕事、地域、生活を理解してからにしてほしいものだ。

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