第14話 田舎 1

 都会はひたすら人が増え、田舎は限界集落へ転げ落ちてゆく。これが日本の現実だ。

 一番の問題は仕事だ。一次産業を軽視し続けた結果、田舎は滅び、都会はただ人が溢れている。田舎にある仕事は、農業と林業ぐらい。それも土地持ちでなければ成り立たない。輸入作物に押され、単価が下がり、色形を重視するあまり手間が増えていく。そんな中で、田舎から1番に若い女性が消えて行く。仕事はきつい肉体労働しかなく、ちょっとした事務仕事などは最低賃金で、しかも少し離れた田舎町まで働きに行くしかない。それなら、はじめからもっと大きな街で働くために移住すればもっと魅力的な遊び場もある。当然、田舎に残る女性は少なくなる。

 そうなると、相手の居ない田舎の若い男は独身のまま過ごすことになる。それに耐えられなくなり、若い男も消える。必然的に子どもが消える。学校が地域から無くなる。

 学校が無くなると、地域にいた数少ない若い夫婦も別の所に引っ越してしまう。さらに田舎は人口が減り、もう移住さえ出来なくなった老人のみになって朽ちていく。限界集落の完成である。さらに平成の町村合併が田舎町を疲弊させた。役場があることでなんとか成り立っていた田舎町はさらに人が減っていったのだ。

 テレビで田舎で農業で成功した例を取り上げている。フレームアップされた人々は成功者だが、ほとんどが案外都会に近い便利な田舎なのだ。日本が腐って行っている現実は、田舎の中の田舎にある。そこでは、田畑はジャングルへと代わり、かつて人が住んでいた廃墟も草に覆われてしまう。廃村となった小さな集落がたくさんあるのだ。

 私は個人的にこれは大きな問題だと思っている。日本の大部分を占める森林、特に里山を健全にしていかないと、日本の治水も空気も生態系もおかしくなってしまう。ただ、日本に住む多くの人は田舎を理解していないのだ。



 

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