第6話 日本酒3

 また日本酒の話に戻って来た。今日は、甘口、辛口の話だ。

 ここ、数十年辛口ブームだ。辛口の酒を売り物にする酒は多い。淡麗辛口というラベルを皆さんもよく見るだろう。

 だが、酒蔵で勤める知り合いによると、「良い酒は造るならなあ、辛口は造りやすいんだよ。甘口で旨い酒が一番難しいんだ。」らしい。

 一般的にすべての酒は甘い液を酵母が分解してアルコールを作る。この分解の際に糖分がなくなって行く。日本酒は麹によって米が糖化される。その糖化された液が酒母(酵母)によって分解されて酒になっていく。分解力の強い酒母を使えば辛口の酒になりやすいのだ。分解力の強い酒母の欠点は酸味が強くなる。つまり淡麗辛口になるのだが、そうなると旨味が弱くなる。逆に分解力の弱い酒母を使えば、エキス分が多く残り酸味も弱くなるので甘くて濃い酒になる。つまり、重い酒になるのだ。

 ただ、分解力が強いと言うことは酢のような風味になりやすく、酒母の働きも頭打ちになってしまう。また、分解力が弱いとアルコール度数が上がらない。このあたりの問題を多面的に解決して酒が造られているのだ。旨味を残し、雑味を減らすために米を削ったりする。また、酒母の働きをコントロールするために温度管理をする。日本酒の醸造はまさに科学そのものなのだ。酒造に携わる人々の努力があって旨い酒が呑めるのだと思って感謝したい。

 日本酒は醸造酒としては、アルコール度数が高い。原酒は旨いが酔いやすい。また、日本酒は基本的には甘い酒だ。ブリン体も多く、糖尿病や通風の引き金にもなりやすいので気をつけたい。

 日本酒は、日本の料理に合う酒だ。魚、醤油、味噌と非常に相性が良い。特に魚類のなまぐささを流してくれる力は強い。魚料理と白ワインの組み合わせより、海の風味の強い料理なら日本酒が良いと思う。

 また、食事の邪魔をしない酒なら、淡麗辛口が無難だ。口をさっぱりさせてくれる。

 食後に呑むなら濃醇甘口が良い。冷えた酒をゆったり呑みたいと思う。旨味の強い酒だけにツマミもしっかりした味わいがある方が合う。

 辛口はの酒は特にお勧めはないが、しいてあげるなら「北秋田大吟醸」あたりが価格も安くて良いと思う。すっきりとして味わいも深い。

 甘口なら「梅錦純米吟醸原酒酒一筋」か「ふなぐち菊水一番しぼり生原酒」が好きだ。どちらもロックでゆっくり呑みたい。

菊水は、缶入で長期保存も効く。はやめに呑むのと、保存したものを呑むのとで味わいが違う。お試しで呑むにも財布が痛まないのも嬉しい。

 自分に合う酒が見つかると、酒の世界が一気に広がる。是非、試して欲しい。

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